あの頃のぼくは

あの頃のぼくは若すぎて
君の気まぐれを許せなかった
そんな君のやさしさは
おとなびていました
机の上に編みかけの
セーター残していったまま
朝から続く雨の日に
泣きながら飛び出していった

君はもう
この古いアルバムの中の
想い出の女として
小さな灰皿の中で燃えてゆくのです
君の長い髪はとても
素敵だったと言いたかった

別れの言葉が夢の中で
こんなにきれいに響いてます
心のほんの片隅で
つぶやいた言葉
たとえば誰かの小説の
ひとつの甘いフレーズとして
ぼくの心の本棚に
しまっておけるものなら

君はもう
二人でいつも買ってた
合挽(あいびき)のコーヒーの
あのほろ苦い味も忘れたことでしょう
今は一人部屋の中で
コーヒー沸かしているんです

君はもう
この古いアルバムの中の
想い出の女として
小さな灰皿の中で燃えてゆくのです
君の長い髪はとても
素敵だったと言いたかった
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