沈丁花

雨降り意を決しとかく
こんな日に限って不覚
術なく待ちぼうけ
師走に咲く沈丁花

月冴ゆる季節
厚雲飲み込んで一節
差し詰め北時雨
日暮れ歩く町外れ

悴む指先から
奪われてゆく夜に溶けてゆく
やがては世界の温度も
冬の配下に成り下がってしまう
氷点下

硝子になった五臓六腑の
シュプレヒコールを
品性を欠いた感情じゃ
融点は超えないよ

透明な手口で以って
奪われたこの手の温度で
孤独な寒月に今
触れた気がしたんだ

硝子になった五臓六腑の
シュプレヒコールを
哀れで寂しがりな季節に灯を

雨降り意を決しとかく
こんな日に限って不覚
術なく待ちぼうけ
師走に咲く沈丁花
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