壺坂情話

見えぬあなたの杖になり
越える苦労の人世坂
あなた 離しちゃだめですよ
運命の糸を この指を
つなぐ心の
お里・沢市 夫婦づれ

妻は夫をいたわりつ 夫は妻を慕いつつ
頃は六月 中の頃 夏とはいえど片田舎
木立の森もいと涼し

すまぬ女房と掌をあわせ
頼る夫のいじらしさ
好いたあなたとふたりなら
地獄へだって ついてゆく
なんでつらかろ
お里・沢市 夫婦づれ

おれにかまわず
しあわせを見つけろだなんて
沢市つぁんそれはあんまりです
この世で この人だけと
惚れて尽くすは女のまこと
つらくても
好きなお方のそばにいられたら
女はうれしいものです
あなたの涙は わたしの悲しみ
あなたの笑顔は わたしの青空
お里は一生
いいえ 末の世までもずーっと
あなたの妻ですよ

神よ仏よきこえたら
お慈悲くださいこの人に
明日を信じて ねぇ あなた
濡らすこの世の しぐれ道
涙ふきあう
お里・沢市 夫婦づれ
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