望郷cinema staff | cinema staff | 三島想平 | cinema staff | | 灯りを消したのは時計の針が二時を越えたあたり。 ため息の数だけディスプレイに映し出される虚構。 忘れ物が何かということすら忘れてしまったな。 星降る夜なのに、窓の外を見ることも無く眠る。 その孤独と手を取り合うあなたはとても美しい。 でも、未来と手を取り合うあなたは更に美しいでしょう。 灯りを点けたのは時計の針が四時を越えたあたり。 21号にはまだ静けさが残り車も無い。 さあこれから僕は行くよ。あの坂道を越えていくよ。 そのままあとに続け。理由なんて最後に探せるよ。探せるよ。 もうすぐ朝は来るよ。間違いなく朝は来るよ。 そうしたらあなたは、手を離しても歩いていけるだろう。 行けるだろう?故郷へ、行けるだろう。 |
世紀の発見cinema staff | cinema staff | 三島想平 | cinema staff | | 悲劇の始まりを告げるアラーム。 ほら吹き男はひや汗をかいて。 「このまま世界を、未来の変化を知られないまま変えてしまえばいい!」 天才的な発明を思いついた。 どのぐらい待てばいい? バラバラと音を立て、崩れていく方程式とレポート。 痺れてきたその脚。セメントで固めちまえ。 いい香りがしてきた、上手くいきそう。 今だ、蜃気楼になれ。僕は全てを汚したい。 …世紀の発見なんかは必要あるのかい?それって食えるの? 今から迎えに行くから待ってて。 何処に飛べば君に会える? そうだ、航海士になろう。僕は何にも乱さない。 科学の発展なんかは必要ないのさ。歳を取っても。 このまま世界を、「昨日の変化も分からないまま変えてしまえばいい!」 なんてばかげた発想だ。 |
西南西の虹(album version)cinema staff | cinema staff | 三島想平 | cinema staff | cinema staff | どれだけ揺すっても、溶けない水と油。永遠の未完成。 生まれるこの気持ちを、言葉だけでは説明できない。 雨に打たれていた。 俺たちは襟を立て、間に合わなくても進むだけ。 その地図を捨てちまえ。 濡れた袖を絞り、速度は落とさぬまま、 泥だらけの靴と、かき消されていく足音。 それでも、手を取らぬ俺たち。 ただ、同じ方角を目指している。 雨に打たれていた。 俺たちは襟を立て、間に合わなくても進むだけ。走るだけ。 雨が上がったら、俺たちは悲しみと、風を追い越して、 あの虹を追いかけていく。西南西へ。 |
時計台cinema staff | cinema staff | 三島想平 | cinema staff | | 時計台には今日も陽が昇り、デジャヴのように飛び込んでくる風景。 時計の針は今日も動かない。 同じ場所を指したままだった。 机上で幸福論を唱えても世界は変わらない。 そうして皆、歳を重ねた。尊びと蔑みを繰り返してさ。 「残酷にも不平等に与えられた今」を生きる、僕たちは。 「あなたの前に道は無くてあなたの後ろに道が出来る」 君はそう言って瞼を閉じる。人々の刻んだ足跡を辿って。 時計台には今日も陽が昇り、誇り高い姿のままで小さい影を作る。 |
日記cinema staff | cinema staff | 三島想平 | cinema staff | | その日常は当たり前すぎて、日記帳なんて必要無かった。 「旅の支度をしよう」みたいな話を繰り返す。 カレンダーをめくる小さな音。ヘッドホンから漏れる微かな音。 始まりの合図なら聞こえた、そんな気がしていた。 僕らの間違いは誰かのせいにしてしまえばいい。 そのままで二人は、他のものを全て消した。 買ってでも知った苦労があって、多分いつかそれも忘れる。 「旅の支度が出来たみたいだ」そんな嘘をついて。 僕らはまた今日もその先を選んでしまったんだ。 雨のなか二人は、深く眠るふりをしている。 明日のドアの鍵はまだ開かないようだね。 水の泡みたいだった。 二人は美しい。 僕らの間違いは誰かのせいにしてしまえばいい。 これからの二人は、雨の中をただひたすら歩く。 |
待合室cinema staff | cinema staff | 三島想平 | cinema staff | | 待合室は誰のものでもない。ましてや君は誰のものでもない。 いつの日か返してくれるならば。 僅かな恋心は僕が引き受けてあげよう。 チェックチェックチェック、雨が降って地面が固まるらしい…。 チェックチェックチェック、風が吹いて桶屋が儲かるらしい…。 やあやあやあ、いつの間に噂話は広まった? やあやあやあ、美しい朝焼けの無い街に興味はない! 待合室は湿度を上げていく。その中君はブラウスを着ている。 汽車はもう行ってしまったのにな…。 小さな後悔なら僕が噛み締めてあげるよ。 YES、YES、YES、答えはNO?気にも留めずに「はい、どうぞ」 YES、YES、イエスに祈りたい? こころの中に煩悩を、シェイクシェイクシェイク! 目が回る…。 待合室は誰も居なくなった。それでも僕はじっと座っていた。 いつの日か再会できたのなら、僅かな恋心は僕が引き受けたいな。 今ではその先のことを思い出すのがやっとでした。 |
いたちごっこcinema staff | cinema staff | 三島想平 | cinema staff | | 背の高い男が積み木を積んでは倒して、未来の行方を占う。 酒を飲んで飯を食いながら吐き出した。 よそ見してそのままで僕らはいたんだ。 どうしてこの眼は輝きを失った? ギリギリで僕は生かされていた。 啓蒙思想の果ての果ての果て。 このまま明かりを消してしまいたい。 その眼で色のない風景をどうしたい? ぎりぎりで僕は生かされていた。 いたちごっこはもううんざりです。 消えろ、俺の目の前から。早く、消えろ! |
あのスポットライトを私達だけのものにしてcinema staff | cinema staff | 三島想平 | cinema staff | | 君は甘い匂いにつられてやって来た。 覚えたての言葉で挨拶を交わす。 東の空では、宵に月が満ちる。 純白のドレスには沢山の返り血。 響き渡る拍手とカーテンコール。今も。 傀儡の指揮者は宵の月に問うた。 その美しさの謎を解明する為に。 台本を燃やし尽くした灰を被って、嘲笑は歓声に変わっていく。 寄り添った二人は宵の月に誓う。 「あのスポットライトは、私達だけのもの!」 |
夏の終わりとカクテル光線cinema staff | cinema staff | 三島想平 | cinema staff | | 少年は夢を見る。 歌う様に踊る様に。 下校の鐘が鳴っても、泥だらけになっても、 カクテルの光線を夢見て笑っている。 一際小さな身体で一際大きな声を出す。 この青い空の下であなたは輝いて、 まるで向日葵の様に両手を広げた。 涙さえも飲み込んで、それでもまだ追いかける。 少年は夢を見る。 数字の無いユニフォームを綺麗に畳んで。 グラウンドの外側から一番大きな声を出す。 この朱い空の下で伸びた君の影。 まるで向日葵の様に誇り高い姿。 …今日で夏が終わるなんて誰が決めたというのだろう? |
蜘蛛の巣cinema staff | cinema staff | 三島想平 | cinema staff | | 奴はもうとうに何処かに行ってしまった。 その上、寄りかかったこの絶望だ。 蜘蛛の巣に踏みこんで、くだらない想像を消せ。 |
革命の翌日cinema staff | cinema staff | 三島想平 | cinema staff | | 思えば遠く歩いてきたもんだ。 冬の寒さも忘れてしまったな。 白昼堂々、戦車が道を行く。 それを横目に彼女は決意する。 「私は濃霧のように誰かに寄り添いながら、涙を拭ってやりたい」 あの街の灯、鳴り響く鐘の音、全てを抱きしめて。 泣き笑って、汚れた顔のまま確かに息をしている。 鳥かごの中、争いは続いている。 その光景は報道されぬまま。 彼女は、手を大きく広げたらそれが合図と言った。 火傷の跡を隠すそぶりも無く、シュプレヒコールの中を飛んだ。 あの街の灯、鳴り響く鐘の音、 全てを手にいれた。 泣き疲れて、汚れた顔のまま静かに目を閉じる。 事実がフィクションに勝る、革命の翌日。 |
小さな食卓(album version)cinema staff | cinema staff | 三島想平 | cinema staff | cinema staff | 冬の寝室では、窓に文字を書いて 遊ぶ子供達。ゆっくり大人になった。 風呂に炎を灯し、理由も無く笑える。 空もろくに飛べないが、ゆっくり大人になった。 階段を上がる音が聞こえて。「ぎしぎし」と。 毎日のいのちの営みを。 僕らの悲しみや苦しみは、分かち合って食卓の料理に並べた。 君の慈しみや優しさは、スープの中。 誰かを救うことに気付かないまま。 階段を上がる音が聞こえて。「ばたばた」と。 君はいま洗濯物を手に。 僕らの悲しみや苦しみは、分かち合って食卓の料理に並べた。 君の慈しみや優しさは、スープの中。 誰かを救うことに気付かないまま。 それは僕らの場所。 いつもそこに。 |
溶けない氷cinema staff | cinema staff | 三島想平 | cinema staff | | さあ始めよう、パレードを。行進していく動物の群れ達。 その散文を読み上げて、喉を枯らした司会者の彼。 汚れたあなたは西を向いて祈った。 「私は溶けない氷になりたいの」 ..そうして夜(よ)は更ける。 僕だけがまだ立ち尽くし、歳を取っても変わらないまま、 あなたの背中を見続けているだけで。 朝焼け。かざしたその手の先の灯を探そう。 探そう、許しのその意味を、大きな落し物を。 あの坂越えれば、答えに辿り着く。 あの坂下れば、あなたに追いつける。 |