くちなしの花渡哲也 | 渡哲也 | 水木かおる | 遠藤実 | | いまでは指輪も まわるほど やせてやつれた おまえのうわさ くちなしの花の 花のかおりが 旅路のはてまで ついてくる くちなしの白い花 おまえのような 花だった わがままいっては 困らせた 子供みたいな あの日のおまえ くちなしの雨の 雨のわかれが 今でもこころを しめつける くちなしの白い花 おまえのような 花だった 小さなしあわせ それさえも 捨ててしまった 自分の手から くちなしの花を 花を見るたび 淋しい笑顔が また浮かぶ くちなしの白い花 おまえのような 花だった |
あじさいの雨渡哲也 | 渡哲也 | 水木かおる | 遠藤実 | | 弱いからだに かさねた無理を かくしていたのか 濃いめの化粧 いくども色を 変えながら 枯れて淋しく 散ってゆく 雨 雨 あじさいの雨に 煙るおまえの 白い顔 いつも変わらぬ 笑顔のかげで いつか指から 消えてたゆびわ 苦労の重さ たえながら じっと咲いてた 花にふる 雨 雨 あじさいの雨は 男ごころを ぬらす雨 かげで流した おまえの涙 ふいてやれずに 今日までひとり 身勝手すぎた このおれを 詫びてみたって 遅いけど 雨 雨 あじさいの雨に 声をころして 男泣き |
あいつ渡哲也 | 渡哲也 | 水木かおる | 遠藤実 | | この指泣いて かんだやつ 今でもおれを 憎むやつ それでもじっと 陰ながら どこかでおれを 見てるやつ 遠くになるほど 近くなる あいつ あいつ 忘れられないあいつ 名もない花が 好きなやつ 子供のように 怒るやつ いっしょに側に いるだけで 不思議にこころ なごむやつ 日なたの匂いが するような あいつ あいつ 心ひかれるあいつ ひとりでいまも 暮らすやつ かなしい意地を 通すやつ 二度ない春を 無駄にして ひそかに愛を 燃やすやつ 忘れてくれたら いいものを あいつ あいつ 俺を泣かせるあいつ |
みちづれ渡哲也 | 渡哲也 | 水木かおる | 遠藤実 | | 水にただよう 浮草に おなじさだめと 指をさす 言葉少なに 目をうるませて 俺をみつめて うなづくおまえ きめた きめた おまえとみちづれに 花の咲かない 浮草に いつか 実のなる ときをまつ 寒い夜ふけは お酒を買って たまのおごりと はしゃぐ姿に きめた きめた おまえとみちづれに 根なし明日なし 浮草に 月のしずくの やどるころ 夢の中でも この手をもとめ さぐりあてれば 小さな寝息 きめた きめた おまえとみちづれに |
水割り渡哲也 | 渡哲也 | 水木かおる | 遠藤実 | | いつもおまえは 微笑ったあとで ふっと淋しい 顔をするね 顔するね うすい肩さえ 痛々しいが 水割りの 水割りの 酒といっしょに 飲みほす恋の わかれ酒 きれいばかりに 見ないでくれと みせたうなじの 傷のあと 傷のあと 影と影とが 呼びあうからか 水割りの 水割りの 氷みたいに こころがふれて 鳴った夜 うらむその目を ふり切るおれに そっとさし出す 女傘 女傘 抱いてやりたい 抱いたら負ける 水割りの 水割りの 酒のちからで とび出す路地に 冬の雨 |
通り雨渡哲也 | 渡哲也 | 水木かおる | 遠藤実 | | 洗いざらしの 矢がすりの どこにかくれた 酒場の匂い それがほんとの おまえだね 送るつもりが ころがりこんで さめてまぶしい 朝の部屋 風呂屋がえりの たわむれに おれの背中に おぶさるおんな そんな甘えも かわいいが 明日の約束 できないおれが なぜかつらくて 気が重い 更けて路地うら 小走りに かえる姿が 瞼にうかぶ つけておいたよ 窓の灯は 今のうちなら おまえもきっと 通り雨だと 忘れるさ |
ひとり渡哲也 | 渡哲也 | 水木かおる | 遠藤実 | | 都会 裏窓 袋小路 夢を消された 他人街 いっそ泣こうか 笑おうか 胸のすきまに 霧が降る ひとり ひとり おれもひとり 出逢い ゆきずり 別れ花 しんは酔えない 忘れ酒 薄い幸せ 細い肩 胸のすきまに 雨が降る ひとり ひとり あいつもひとり 夜更け 靴音 石だたみ ひとりたたずむ ガード下 背中ぬくめる 灯もうすく 胸のすきまに 風が吹く ひとり ひとり みんなひとり |
朝やけ渡哲也 | 渡哲也 | 水木かおる | 遠藤実 | | 何かあったら こわれそうな あぶないあぶない あの女 小さくうなずき 大丈夫よと 答えてゆがんだ 笑い顔 朝やけの朝やけの 空は晴れても ひとりで行かせた 苦みがのこる いつか暗さに なれた目に まぶしいまぶしい あの女 汚れたこの手で 傷ついた 小鳥を抱いたら 罪つくり 朝やけの朝やけの 光さしても こころは夜霧に さまようようだ 胸のどこかに ひっかかる 別れた別れた あの女 この先逢う日も ないだろが 行く道迷うな ケガするな 朝やけの朝やけの 雲はながれて しめったタバコの けむりがにがい しめったタバコの けむりがにがい |
日暮れ坂渡哲也 | 渡哲也 | 水木かおる | 遠藤実 | | 何のために やすらぎに 背をむけて 何のために ひとり行く 日暮れ坂 ほこりによごれた 上着を肩に 出逢いと別れ 今日もかさねる ふりむいたら なにもかも くずれ去る ふりむかずに ひとり行く 日暮れ坂 夢は遠く 傷ついて たおれても 夢の重さ なげくまい 日暮れ坂 ネオンの灯りは はなやかだけど 吹きすぎてゆく 風は冷たい 風の中で ひらく花 枯れる花 風に吹かれ ひとり行く 日暮れ坂 かがやき忘れた 都会の星よ ささくれだった 人の心よ 遠い道の はてで呼ぶ ものはなに 遠い道を ひとり行く 日暮れ坂 |
さざんかの女渡哲也 | 渡哲也 | 水木かおる | 遠藤実 | | 小さな花が 寒かろと 雪をはらって いたおまえ さざんかに はつ雪の 降った朝…… 花にもやさしい おまえを見たら とても別れが 云えなかったよ 焚火をしてた うしろから そっと目かくし したおまえ さざんかの 花白く 匂う朝…… 子供の時代に かえれるならば 生まれかわって 出直したいよ 憎んでいても そのうらで 涙ながして いるおまえ さざんかの 実がひとつ 落ちた朝…… おまえに変わりが なければいいが 遠い空見て 胸がいたむよ |
雨降り花渡哲也 | 渡哲也 | 水木かおる | 杉山真人 | | 夢ものぞみも つまずくたびに やせて小さく なって来た だめな俺だが 雨降り花よ 純なこころで 咲けるなら せめて野に咲く 花でいい 好きとひと言 云えないままに あいつ泣かせた 二年前 なんで別れた 雨降り花よ 今もこの血が 熱いなら せめて野に咲く 花でいい 口に出せない 男のつらさ じっと背中で 耐えるやつ しみる しみるさ 雨降り花よ 友のこころに 咲けるなら せめて野に咲く 花でいい 風に吹かれて 這いずるように 俺は俺なり 生きてゆく 雨が重たい 雨降り花よ うすい紅いろ ひと色に せめて野に咲く 花でいい |
風蕭蕭と渡哲也 | 渡哲也 | 水木かおる | 杉本真人 | | 風蕭蕭と 吹きわたり 砂塵をまいて 夢が舞う 男ごころを かりたてる 熱い思いを 誰に語ろう 晨(あした)に開く 花あれば 夕べに枯れる 花もある 風に嬲(なぶ)られ 散り急ぐ 花の涙は 誰も知らない 風蕭蕭と 吹く時も 落葉に 罪はないものを 若い命を 道づれに 夢の償い いかにせんかな 弧愁(こしゅう)の岸に 陽は落ちて 男は風か 逝く水か 肩でさらばを 告げながら 行くは何処(いずこ)ぞ 二度と還らず 行くは何処(いずこ)ぞ 二度と還らず |
霧笛が俺を呼んでいる渡哲也 | 渡哲也 | 水木かおる | 藤原秀行 | | 霧の波止場に 帰って来たが 待っていたのは 悲しいうわさ 波がさらった 港の夢を むせび泣くよに 岬のはずれ 霧笛が俺を 呼んでいる さびた錨に からんで咲いた 浜の夕顔 いとしい笑顔 きっと生きてる どこかの町で 探しあぐねて 渚に立てば 霧笛が俺を 呼んでいる 船の灯りに 背中を向けて 沖を見つめる 淋しいかもめ 海で育った 船乗りならば 海へ帰れと せかせるように 霧笛が俺を 呼んでいる |
男の別れ歌〜わかれ花〜渡哲也 | 渡哲也 | 水木かおる | 遠藤実 | | 誰かがささえて やらなけりゃ 倒れてしまう あの女 俺は行くぜと 別れたけれど うしろ髪ひく 残り雨 今日からひとりと つぶやいて 怨みをこめた あの泪 女ごころは 切ないけれど 俺にゃできない 幸せに よごれたこの世に ただひとり 真珠のような あの女 きっと浮かぶさ 淋しい顔が 俺がいのちを 閉じるとき |