白い砂漠のマーチcinema staff | cinema staff | 三島想平 | cinema staff | | 記憶に無い小屋に少し残るにおい、嗅いでいた。 声を潜め隠れよう、闇の中へ。 傘が無い。外にはまだ出られぬまま。 母さんはもう僕の事を覚えていない、なんて考えていた。 道化師の様に笑っていたい。贖罪の床に、ランタンの火が落ちた。 夢なら醒めないで、干渉をやめないで。 もう元には戻れないって、鐘がきこえる。 赤い衣装、濡れたままで火の輪をくぐる。 少年は、もう家には帰らないと、嫌いだと考えていた。毎日の様に。 冷え込んでいた3月みたいに、簡単に手がふれた。 夢なら醒めないで、足あとは消さないで。 もうここには戻れないって、鐘は教える。 白い砂漠をサーカスはひたすら進み、 きみは象にまたがって細胞の数を数えていた。 ああ、夢なら醒めないで、干渉をやめないで。 もう元には戻らないって、鐘が聞こえるはずさ。 ああ、長い夢は醒める。僕たちは透けていく。 「またいつか遊ぼうね」って。 鐘が聞こえる。 |
火傷cinema staff | cinema staff | 三島想平 | cinema staff | | 彼の世界では言葉が意味を持たない。 十字路を通りすぎていく。答えは見つからないままだ。 小説は彼を待つ。 図書館は燃やされて、もう喉は必要ない、それだけ。 彼ら顔を見合わせては、笑うだけ。 この峠を超えていって、何に変わろう? いま、図書館は業火の中。首筋は凍った、それだけ。 彼らは汚れた服を着て笑うだけ。この峠を超えていった今はどこに? 旅の医者目を見開いた。 その火傷は燃え続ける。街は東。 海はもう、すぐそこだ。 |
skeletoncinema staff | cinema staff | 三島想平 | cinema staff | | 僕たちはうまくやれる。僅かな正体を隠したまま、 ついに身体は無くなった。新しい言葉を探しだすために。 きみが居なくなった。変わる街の様相。 代わりはいくらでも、明日になればきっと。 今日はもう、人工呼吸器を外したままで針が落ちるのを観よう。 そしてイギリス映画の結末みたいな眼をするのもよそう。 声が届いたふりをしないで。愛がわかったなんて言わないで。 |
明晰夢cinema staff | cinema staff | 三島想平 | cinema staff | | ああ、今、魔法をかけられて誰も助けられないのさ。 なぜか空を飛んでいるようで、ついに意識もはがれ落ち、 次から次へと変わる色んな夢を見る。 靴の紐がほどけて、いらないものは無くなる。 裸足のまま踊れば、銀盤はいま君のもの。 彼女はうれしそう。上着を脱いだまま。 彼女はかなしそう。指先にあるそこは理想の国。足音も形も無い。 彼女はくやしそう。髪の毛は乱れて。 彼女はくるしそう。指先にあるそこは理想の国。足音も形も無い。 そこは理想の国。足音も形も無くして! 今日だけは! |
You Equal Mecinema staff | cinema staff | 三島想平 | cinema staff | | 隣の客が泣いていた。何かで間違いを知って。 僕は君とおんなじさ、今は黙って待っている。 隣の客は帰った。法の下に平等なんだ。 僕は君とおんなじさ。今は黙って聴いていよう。 最短距離はどうだい?カスタムされていく金属の塊にまたがる。 隣の客は笑っていた。何かで正解を聴いて。 明日は今日とおんなじさ、街は僕を知っている。 最長距離はどうだい?培養されている少年少女たちは旅立つ! 明後日彼女か去っていく。待って、今からすぐに替わる! 君は僕を待っている、僕は君を待っている。 理由とか希望とかはいらない、 うるせえ! |
super throwcinema staff | cinema staff | 三島想平 | cinema staff | | 哲学者がドアを叩く。細い声帯を震わせ、「死んだら始まるよ。」 訳の分からない服を着て訳の分からない言葉で僕らの有限性を問う。 正方形のこの部屋。褐色の救命道具。無重力のまま真っ暗闇さ。 さかさま重なる様。いかさま、数かぞえる。 哲学者はドアを閉める。長い首を捻りながら、「死んだら始まるの?」 質疑応答の中、目は虚ろ。終わりを見てしまった開かずの間。 さかさま重なる様。いかさま、数かぞえる。もう誰の五体も満足じゃない。 科学が想像を超えていく。 |
cockpitcinema staff | cinema staff | 三島想平 | cinema staff | | トーチライトが送り火みたいに輝く。 大量の狂った端末たちのお出ましさ。 シートベルトに染みついた僕らのイエス、オア、ノー。 それはすぐエンジンの音にかき消されるのだった。 今宵は生きてるふりで、あいつを起こしてみたい。 何かの間違いだったと信じ込ませて欲しい。 ヴァーラインはいつでも僕らに優しい。 それはすぐエンジンの音を塗り替えていくのだ。 今宵はかぼちゃの馬車を探しに行くのもいいね。 密かな欲望を背に操縦棹を握る。 誰も聞こえない声で、誰も分からないようにして、1、2、3、4。 「我ら、賽は投げられた!」眠り姫、よだれを垂らしていた。 いま行くからね! |
実験室cinema staff | cinema staff | 三島想平 | cinema staff | | 痛みを感じない身体が欲しいな。 この器の中をいつか空っぽにしてみたい。 抜かれた血液を混ぜ合わせたら、リトマス試験紙が虹色に変わっていった。 ここは実験室で、仮の名前で僕らは呼ばれるのさ。 誰かの角膜の白いもやの中。この器の中にいらないものばかり見せる。 重ねた調査書に火をつけたい。全てをフラットに戻せるような気にさせる。 ここは実験室で、仮の言葉で僕らは繋がるのさ。 明日雨が降ったら、少しだけ前に進めるかもしれない。 さあ、いまから確かめに行こうか。忘れてしまった結末を。 この目でこの手でこの耳で、無くしてしまった名前を。 |
錆のテーマcinema staff | cinema staff | 三島想平 | cinema staff | | 窓が開いてその隙間風、君の身体は吹き飛ばされて。 嫌な予感は当たるもの。目の前にあるすべてが渦の中。 雨の匂いがセメントのようだ。 例の呪文も効果など無く、中央棟には灰だらけ。 既に両手は錆びていた。井戸の底みたいで、さむいさむい! もう今じゃ君は、鉄の身体を震わせながらギターを弾いている。 僕が替わりにオイルを差すよ。汚れたかったら、君をやめなければいい。 この廃工場には住所が無い…つまり場所は無く、存在も無い。 迷い込んだら始まりだ。既に背中は溶けていた。 窯の中みたいで、あついあつい! もう今じゃ君は、鉄の身体を震わせたまま歌を歌っている。 僕が替わりにギターを弾くよ。 汚れたかったら、君をやめなければいい。 |
どうやらcinema staff | cinema staff | 三島想平 | cinema staff | | 格子越しに眺めたカラスの死骸。それはいつも、寂しい記憶を犯す。 罪を重ねた略奪者みたいさ。声は届かない。叫んでも叫んでも届かない。 孔子は声を荒げ、「汗をかけ」と説く。 それはいつも、切ない憂いに満ちて。酒に呑まれた密告者みたいさ。 決してしたくない、等価値の取引はしたくない。 高い坂を登った。呼吸は乱れ。隣の住人が怒鳴って愛を唱えてる。 「どうやら僕らだけがひどい目に遭うらしい…」 そうして大きな間違いを運命は辿る。 「どうやら僕らだけに視界は備わった!」 「どうやら僕らだけは世界に還るらしい!」 「どうやら僕らだけが間違いに気付いた!」 声は届かない。 |
海についてcinema staff | cinema staff | 三島想平 | cinema staff | | 日傘を差して、ぼくはもう一歩進み、歩く目的を探す。 方向性をデザインしていたんだ。いつか未来は今になるから。 今日が終わる頃、もうぼくは行かなきゃいけない。秘密の場所へ。 夏がくるときや夏が終わるときみたいな気持ちになっている。 日傘を閉じた。僕は座って涼み、歩幅を縮め。 今日が終わる頃、もう僕は行かなきゃいけない。秘密の場所へ。 思っていたより日差しが強くなってきて、日焼け止めを買った。 最初で最後に分かった。この川沿いは、あの海に繋がって路を別つんだ。 きみが選ぶのは、夢か孤独か理想か徒労か。実はどうだっていい。 今夜帰ったらぼくらは終わりで、迎えは来ないでしょう。 そうして行き詰まる。 話がしたいな。どこでいいから。欲をいうなら、海がみえる所で。 |