花筆文字山口百恵 | 山口百恵 | 阿木燿子 | 宇崎竜童 | 萩田光雄 | 墨をすって一筆に 花と一文字書いたら 強く線をはねながら 揺れる女の黒髪になる 髪は命 手ざわりごと 女の命 恋は命 うたかためく 私の命 静めても 静めても 心に溢れる命 手がすべって一雫(しずく) 筆の先からこぼれる 白い和紙にくっきりと 滲んだあとが花びらになる 花は命 そのひとひら 女の命 恋は命 宴のあと 私の命 なぐさめて なぐさめて いつかは散りゆく命 髪は命 手ざわりごと 女の命 恋は命 うたかためく 私の命 静めても 静めても 心に溢れる命 |
陽のあたる坂道山口百恵 | 山口百恵 | 松本隆 | 佐藤健 | 萩田光雄 | 陽のあたる坂道で あなたとすれ違いました 女のひとと御一緒なので 声もかけられませんでした 幸せと悲しみが 目をそらし すれ違います いつもあなたと登った坂を 影をふみふみ下ります 霊南坂の夕陽は 暖かい春の色 でも心は冬のように寒い 霊南坂の夕陽は レンガ塀に燃えます でも心は夜のように青い 教会は坂の上 鐘が背中に響きます 結ばれる日を夢みた私 追われる様に坂をおります |
悲願花山口百恵 | 山口百恵 | 谷村新司 | 谷村新司 | 川村栄二 | 気のない言葉の やりとりに そぞろ歩きの 夏の夜 乙女はしばし 立ち止まり 溜息まじりに 草をかむ 何故か悲しき ヴィオロンの 心をふるわす セレナーデ 身のほど知らぬ 恋なれど 神も見捨てし 恋なれど 手首に流るる 血の色は 恨み忘れし 赤き色 かすむ景色に いささかの 未練は残れど 悔いはなし 人の心の移(うつ)ろいは まず避(さ)け難(がた)き 真実(まこと)なり 人の命の はかなさは 悲しきゆえに 美しき |
言はぬが花山口百恵 | 山口百恵 | 阿木燿子 | 宇崎竜童 | 若草恵 | あなたのお宅へ伺(うかが)う道すがら 小さな抜け道を新たに見つけた事を あなたに何と御報告いたしましょうか 晴天の霹靂(へきれき) あなたはもち論 とっくに御存知で 今頃気付いたのと笑われそうですけど おんなじ道しか送って下さらないから 知らぬが仏です 私の鋭い勘を頼りにして お手製のクッキー しっかり胸に抱きしめ まるですっかり探険家になったつもり 七転び八起きね ブルドッグに途中 吠えつかれたりして おまけに本当はかなり廻り道なのに なんでわざわざ そうお思いになるでしょう 物は考えよう 幸福すぎて ときめきすぎて こわいのです ここまで来ると あなたに会う その時が もひとつ加えてご報告いたせば その道で可憐な山茶花を見つけた事 おまけに9コ さざんか9なんてホント できすぎていますね 言はぬが花ですね できすぎていますね 言はぬが花ですね |
青い羊歯―アジアンタム―山口百恵 | 山口百恵 | 北野弦 | 北野弦 | 船山基紀 | 木漏れ日浴びた 小さな森に似た はち植の羊歯 窓辺においたら 私の部屋も変りました いつか映画でみかけた アンヌュイな女(ひと)をまねて 暗いルージュひいて 髪をといてみたり 夜がゆき朝がきて 淋しさはつづく あのひとはもういない 帰らない愛の日 つたのからんだ 古いレンガ塀 肩よせ歩く 恋人同志は 去年の私達のようね 忘れきれぬ想いと 厚いコートぬいで 冬の街をひとり 風に向かい走る 春がゆき秋がすぎ 悲しみはつづく あのひとはもういない 帰らない愛の日 夜がゆき朝がきて 淋しさはつづく あのひとはもういない 帰らない愛の日 |
飛騨の吊り橋山口百恵 | 山口百恵 | 松本隆 | 岸田智史 | 川村栄二 | 吊り橋を誰か渡る 淋しい音が夜をふるわせる あの人も橋を渡り 街に行って戻らないの 飛騨の山は静か 今年も大雪よ 便りも途切れたの 忘れてしまったの 街の女性(ひと)はきれいでしょう この私より 吊り橋の上であなた 迎えに来ていると真似目な顔した でもいいの今は私 飛騨の里で生きてゆける 囲炉裏(いろり)の火にあたり 炎を見つめてた お婆さんが笑う もうすぐ正月と 顔の皺を深くして倖せに笑う 飛騨の山は静か 今年も大雪よ 便りも途切れたの 忘れてしまったの 街の女性(ひと)はきれいでしょう この私より |
秋桜山口百恵 | 山口百恵 | さだまさし | さだまさし | | 淡紅の秋桜が秋の日の 何気ない陽溜りに揺れている 此頃涙脆くなった母が 庭先でひとつ咳をする 縁側でアルバムを開いては 私の幼い日の思い出を 何度も同じ話くり返す 独言みたいに小さな声で こんな小春日和の穏やかな日は あなたの優しさが浸みて来る 明日嫁ぐ私に苦労はしても 笑い話に時が変えるよ 心配いらないと 笑った あれこれと思い出をたどったら いつの日もひとりではなかったと 今更乍ら我儘な私に 唇かんでいます 明日への荷造りに手を借りて しばらくは楽し気にいたけれど 突然涙こぼし元気でと 何度も何度もくり返す母 ありがとうの言葉をかみしめながら 生きてみます私なりに こんな小春日和の穏やかな日は もう少しあなたの子供で いさせてください |
あまりりす山口百恵 | 山口百恵 | 松本隆 | 岸田智史 | 船山基紀 | 散りゆく花がきれいに咲くのは せいいっぱいの抵抗なんだね あなたはそっと私の髪の毛 指ですいてはさみしくつぶやく うらやましいのはアマリリス 自由に咲いて自由に散れる 私ときたら愛をなくして 血の気も失せた悲しみの中 それでも生きてゆくのです 風は花粉を運んでゆくのに 人の心は動きもしないの おしべは苦い紅茶のみほし めしべはスプーンみつめて泣いてる あざやかすぎるアマリリス 私の影がこんなにうすい あなたときたら紺のセーター 夜より青いつめたさの中 ためいきばかり舞うのです ねたんでしまうアマリリス あなたの指がクキを手折った 私ときたら背が折れるほど つつまれた日も思い出の中 静かに椅子をたつのです |
ドライフラワー山口百恵 | 山口百恵 | 岸田智史 | 岸田智史 | | さよならから二年目の冬は コートのえりを立てるほどに寒い 私のアンティックルームを ドライフラワーで飾りましょう これっぽっちも思い出話はありません 人はあなたとの事を 「まるで映画を見てる様」って言うけど 笑顔もつくれなくなってしまった 今はドライフラワーの色が大好き パリの裏街の花売り娘 売れ残りのバラを飾ってあげた 優しさに バラは涙流し ドライフラワーになったと言う 優しさだけであなたの愛が つかみきれるものなら 何もかも捨てて胸にとびこんでた 涙の色も変っていたでしょう 今はドライフラワーの色が大好き これっぽっちも思い出話はありません 人はあなたとの事を 「まるで映画を見てる様」って言うけど 笑顔もつくれなくなってしまった 今はドライフラワーの色が大好き |
1 2/3山口百恵 | 山口百恵 | 阿木燿子 | 宇崎竜童 | | Telephone bell's calling 1. 2. 3. 4. 5 5度目のベルの音を聞いた時 激しく胸騒ぎが高まるわ あなたは今日もいないのでしょう 約束した事など忘れたようね この頃のあなた 二人でいても 1 2/3 空白が残ってる Telephone bell's calling 耳もとで Telephone bell's calling 呼んでるわ 電話の前の なんて長い 長い時間 Telephone bell's calling 6. 7. 8. 9. 10 受話機を戻す間際に思うの さよなら言う事さえ出来ないと あなたと私結ぶ かけ橋が プツンと音をたてて切れた今なら この頃の私 二人でいても 1 2/3 空白に脅えるわ Telephone bell's calling 届かない Telephone bell's calling この想い 一人めぐりの なんて長い 長い不安 気がついた時は 二人の恋は 1 2/3 空白のままだから Telephone bell's calling 本当に Telephone bell's calling 悲しいわ そこまで来てる なんて長い 長い季節 |
最後の頁山口百恵 | 山口百恵 | さだまさし | さだまさし | 佐藤準 | 慣れない煙草にむせたと 涙を胡麻化し乍ら ちゃんとお別れが言えるなんて 君は大人になったね 不思議なもんだね二人 登り坂はゆっくりで 下りる速さときたらまるで ジェット・コースターみたいだ 君が「サヨナラ」とマッチの軸で テーブルに書いたらくがき 僕がはじから火をともせば ホラ「サヨナラ」が燃えてきれいだ 前から判ってた事だと 君はそんな振りをして 冷静に過ごそうとしてる 最後の思いやり 不思議なもんだね二人 もう何年か過ぎたら 全く違うレールをきっと 走っているのだろうね もしも僕達のこのあらすじが 鉛筆書きだったなら もう一度位ならおそらく ホラ書き直せたかも知れない 君が「サヨナラ」とマッチの軸で テーブルに書いたらくがき 僕がはじから火をともせば ホラ「サヨナラ」が燃えてきれいだ |
寒椿山口百恵 | 山口百恵 | 阿木燿子 | 宇崎竜童 | 若草恵 | 冬木立に囲まれた池のはたで 寒椿の花が咲いてます 他の花が絶えた今 その目に滲みる 真紅な色は血のようだと思います 手折(たお)る前に落ちて浮んだ 花一輪 冷い池の水に浮んだ 花一輪 あなたの胸の中に崩れて落ちた あの日の私のようだと 瞳を閉ざします 渡る風も冬の色 白い息で 寒椿の枝を揺さぶります そのたびごと震(ふる)えては 重い花びら もて余すのか 身を投げる人のよう 枯れる前に落ちて沈んだ 花一輪 冷い池の水に沈んだ 花一輪 ひき返せない恋の深みに落ちた あの日の二人想い出し 心を閉ざします |