海峡出船市川由紀乃 | 市川由紀乃 | 木下龍太郎 | 市川昭介 | 前田俊明 | あなたの駅に 戻れぬように 列車を捨てた 港駅 未練の糸を 断ち切るために 選んだ船は 北航路 捜さないでね 私のことは… 霧笛も泣き声 海峡出船 初めて知った 愛するだけじゃ 叶わぬ恋の あることを 世間はそれを 宿命(さだめ)と呼ぶが 死ぬよりつらい 女には 夢と一緒に 生きてくつもり… ひとりの旅発ち 海峡出船 幻だった しあわせみたい 霞んで消える 巷(まち)あかり 重ね着しても あなたの居ない 心は寒い 北航路 早く忘れて 私のことは… 風花みちづれ 海峡出船 |
恋人よ市川由紀乃 | 市川由紀乃 | 五輪真弓 | 五輪真弓 | | 枯葉散る夕暮れは 来る日の 寒さをものがたり 雨に壊(こわ)れたベンチには 愛をささやく歌もない 恋人よ そばにいて こごえる私(わたし)の そばにいてよ そしてひとこと この別れ話が 冗談(じょうだん)だよと 笑ってほしい 砂利路(じゃりみち)を駆(か)け足で マラソン人(びと)が行き過ぎる まるで忘却(ぼうきゃく)のぞむように 止まる私を 誘(さそ)っている 恋人よ さようなら 季節はめぐってくるけど あの日の二人 宵(よい)の流れ星 光っては消える 無情の夢よ 恋人よ そばにいて こごえる私の そばにいてよ そしてひとこと この別れ話が 冗談だよと 笑ってほしい |
娘道成寺市川由紀乃 | 市川由紀乃 | 木下龍太郎 | 弦哲也 | | 恋の「いろは」は 誰からも 習わなくても 覚えます 募る思いを 知りながら 逃げる男の 憎らしさ 待って 待ってください あなた 娘ひとりの 道行(みちゆ)きは 桜吹雪も 石つぶて 越すに越せない 日高川(ひだかがわ)……道成寺(どうじょうじ) 初心な未通女(おぼこ)も 恋衣(こいごろも) 着れば情けに 溺れます 水じゃ消せない 未練火が 肌の隅まで 焼き尽くす 抱いて 抱いてください あなた 女ごころの 滝壺にゃ 白い大蛇(おろち)が とぐろ巻く 乱れ乱れる 京鹿(きょうか)の子(こ)……道成寺(どうじょうじ) 死んで 死んでください あなた 鐘に恨みの 数々を 捨ててあの世で 添い遂げる 女 煩悩 恋地獄……道成寺(どうじょうじ) |
東京アンナ市川由紀乃 | 市川由紀乃 | 藤間哲郎 | 渡久地政信 | | ライトの虹を 踏みながら 銀座の夜を ひらく薔薇 ああ 誰か呼ぶ 舞姫の その名はアンナ 東京アンナ 噂のアンナ 柔(やわ)らな肌を 黒髪に 隠せど甘き 流し瞳(め)よ ああ 誰ゆえに 情熱の その名はアンナ 東京アンナ 妖(あや)しきアンナ 重ねる酒の 激しさは 耐(こら)えた恋の しわざやら ああ 誰が知ろ くずれ咲く その名はアンナ 東京アンナ 吐息のアンナ |
幸福日和市川由紀乃 | 市川由紀乃 | 木下龍太郎 | 弦哲也 | | 好きな貴方と 暮せるならば すきま風さえ 南風 部屋の小鉢の 花びら数え 笑顔並べて 生きる二人に 春うらら 愛を重ねて 一緒に作る 寄せ木細工の 夢模様 どこの誰より 幸福(しあわせ)ですと 故里(くに)へ手紙を 綴る二人に 春おぼろ 心持ちよう 気の持ちようで 持てば苦労の 荷は軽い 雨の降る日は 相合い傘で 肩を寄せ合い しのぐ二人に 春のどか |
なみだの桟橋市川由紀乃 | 市川由紀乃 | 杉紀彦 | 市川昭介 | | どこへ行くとも 言わないで 夜明けあの人 船の上 雨のデッキに 眼をこらしても 溢れる泪(なみだ)で 何にも見えない わけをきかせて 下さいと 叫(さけ)ぶこの声 銅鑼(どら)が消す 行かないで 行かないで 行かないで 寒さ真近の 波しぶき 夜明け桟橋 雨しぶき こんな時間に 出て行く船に あの人希望(のぞみ)を かけたのだろうか だけど私は どうするの 何もおしえず 行(ゆ)くなんて 行かないで 行かないで 行かないで ぼくの故郷は 君の胸 いつもあの人 言っていた いつか夜明けに 帰って来ると 一言きければ こんなに泣かない 私いつまで 待ちますと 船につたえる 束(つか)の間を 行かないで 行かないで 行かないで |
寿 祝い唄市川由紀乃 | 市川由紀乃 | 松井由利夫 | 岸本健介 | 池多孝春 | お前達者でナー あんたも無事でヨー そろたそろたよ 笑顔の花が 今日はめでたい 門出じゃないか 金の屏風に 鶴と亀 ふたつ並んだ この晴れ姿 どうか皆の衆でエー 祝っておくれ 昇る朝陽はナー 東の空へヨー 夢がひろがる まぶしく光る 雲を掴んで でっかく生きろ 山になるなら 富士になれ ここらあたりで 鏡酒を割って どうか皆の衆でエー 祝っておくれ 松の緑にナー いろどり添えてヨー 雪は繭玉 幸福飾り 心意気だよ 人生勝負 うれし涙は 盃に 親の愛情を なみなみ注いで どうか皆の衆でエー 祝っておくれ |
東京だよおっ母さん市川由紀乃 | 市川由紀乃 | 野村俊夫 | 船村徹 | | 久しぶりに 手をひいて 親子で歩ける うれしさに 小さい頃が 浮かんで来ますよ おっ母さん ここが ここが二重橋 記念の写真を とりましょうね やさしかった 兄さんが 田舎の話を 聞きたいと 桜の下で さぞかし待つだろ おっ母さん あれが あれが九段坂 逢ったら泣くでしょ 兄さんも さあさ着いた 着きました 達者で長生き するように お参りしましょよ 観音様です おっ母さん ここが ここが浅草よ お祭りみたいに にぎやかね |
さいはて海峡市川由紀乃 | 市川由紀乃 | 木下龍太郎 | 市川昭介 | 前田俊明 | 旅を一緒に する気でしょうか… 船の後追う 北かもめ 似た者同士の 道連れならば いまは気強い 私には なみだも凍る さいはて海峡 罪は私に あるのでしょうか… 愛を終わりに させたのは やすらぎ欲しがる 女の夢は きっと荷物ね 男には 心で詫びる さいはて海峡 遅れようとも 来るのでしょうか… 女ごころの 海明けは 凍えた両手を 暖炉にかざし ひとり待ちたい 北の春 流氷寄せる さいはて海峡 |
浮草ぐらし市川由紀乃 | 市川由紀乃 | 吉岡治 | 市川昭介 | | 明日(あす)のことさえ わかりはしない 他にいいやつ 見つけなと言う しあわせに ああ なれなくたって ついてゆきます ねえあなた 明日(あす)の苦労が 見えたって ついてゆく 無駄にするなよ 二度ない青春(はる)を 浮草ぐらしと ふと目が笑う しあわせに ああ なれなくたって そっと咲きます ねえあなた そばにあなたが いればいい いればいい 肩にすがれば よせよと照れる そんなあなたの 横顔が好き しあわせに ああ なれなくたって ついてゆきます ねえあなた あなたのために 生きたいの 生きてゆく |
湖畔の宿市川由紀乃 | 市川由紀乃 | 佐藤惣之助 | 服部良一 | | 山の淋しい 湖に ひとり来たのも 悲しい心 胸のいたみに たえかねて 昨日(きのう)の夢と 焚(た)きすてる 古い手紙の うすけむり 水にたそがれ せまる頃 岸の林を しずかに行けば 雲は流れて むらさきの 薄(うす)きすみれに ほろほろと いつか涙の 陽(ひ)がおちる ランプ引きよせ ふるさとへ 書いてまた消す 湖畔の便り 旅のこころの つれづれに ひとり占う トランプの 青い女王(クイーン)の さびしさよ |
おんなの祭り市川由紀乃 | 市川由紀乃 | 下地亜紀子 | 桧原さとし | | あばれ太鼓に 煽(あお)られて 玄海そだちの 血の気がさわぐ うねる荒波 背中にしょって ねり合え もみ合え 担ぎ出せ 喧嘩みこしだ 喧嘩みこしだ おんなの祭りだ 祭りだよ 花も恥じらう 艶(あで)姿 口紅 柔肌 提灯(あかし)に浮かぶ 胸の晒(さらし)に かくした恋が 焦れる 震える 恋しがる 喧嘩みこしだ 喧嘩みこしだ おんなの祭りだ 祭りだよ 燃える火を吹く 汗が飛ぶ 祭りは女を 花火にさせる ねじり鉢巻き 揃いの法被(はっぴ) ぶつかれ はじけろ 負けるなよ 喧嘩みこしだ 喧嘩みこしだ おんなの祭りだ 祭りだよ |
夫婦坂市川由紀乃 | 市川由紀乃 | 星野哲郎 | 市川昭介 | | この坂を 越えたなら しあわせが 待っている そんなことばを 信じて 越えた七坂(ななさか) 四十路坂(よそじざか) いいの いいのよ あなたとふたり 冬の木枯し 笑顔で耐えりゃ 春の陽も射す 夫婦(めおと)坂 女なら 花ならば 咲くときも 散るときも 見てて欲しいの あなたに 宿命(さだめ)あずけて 暮らしたい いいの いいのよ 一間(ひとま)の部屋で あなた待ってる 雪割草も いつか芽をふく 夫婦坂 流れゆく 人の世の 哀しみに 泣いたなら 杖(つえ)になってね 抱いてね 肩を貸してね 背負ってね いいの いいのよ ふり向かないわ 曲がりくねった 坂道だけど ついてゆきます 夫婦坂 |