ボーカリストSouが2015年12月2日にリリースしたアルバム『水奏レグルス』を引っ提げての10年越しのワンマンライブ『水想レグルス』を10月19日(日)豊洲Pitにて行った。アルバムリリース10周年を前に、ファンと10年前にタイムスリップした特別なライブの模様をレポートする。
前日から降り続いた雨が上がり、ライブタイトルを思わせる潤いを湛えた豊洲Pitに全国・海外から多数のファンが集結。モノトーンのボトムスに水色のライブTシャツ、Souのイメージカラーに合わせてアクセサリーや髪を水色にしたファッショナブルな女性も目立つ。関係各所とファン有志からの水色を基調にしたフラワースタンドに出迎えられて入場すると、場内はステージ上方に大型スクリーンが据えられ、スポットライトが周囲を囲み、バンド機材がスタンバイ。
後方までギッシリ満員の場内が暗転し水音と静かなピアノの音色が流れ、10年前と現在のSou、新旧2人のユニゾンによるライブタイトルが響く。青いスポットライトが灯るステージへバンドメンバーに続いてSouが登場。水色の髪でライトグレーのオーバーザイズパーカー、ボーダーのスパッツ、ライトブルーの手袋でマイクを手にしたSouは
「あの頃やり残したことを、今日やりに来ました! よろしくお願いします!」
と宣言、軽快な前奏から「水奏レグルス」冒頭収録の『右に曲ガール』で開演。バーチャルシンガー・重音テトが歌唱した原曲の配信で使われていたイラストがスクリーンに映し出され、
「みんな一緒に」
と水色のペンライトが光る客席へ声をかけ「酩酊 ダラステイラ・ダラステイ」の名フレーズを合唱、「誰もが後ろ指を差しても」「いつもその少女は右に曲ガール」と熱唱。
「最後まで今日は愉しんでいってください」
と告げ、赤と紫に染まったステージ上で『疑心暗鬼』へ。原曲を手がけた梅とらによるダークなムービーをバックに「世界がmake アレもコレもfake」「No more?wow..」と、ハイテンポなメロディに韻を踏んだ英語が入り交じる、ボーカロイドクインテット用の難曲を軽妙に歌唱。40mPによるボカロ曲が原曲の『恋愛裁判』では、揺れる天秤から始まるMVをバックに、情熱的な恋愛模様を爽快に披露。歓声を浴び
「やばいですね、本当に泣いちゃいそうなんですけど。沢山の人が来てくださって本当にありがとうございます」
と謝意を示すと、本公演が10年前にできなかった1stアルバム『水奏レグルス』を引っ提げた10年越しでのワンマンライブであることを説明。
「その時に聴いてくれてた方も、最近知ってくれた人も愉しめるライブになってますので、最後まで愉しんでってください。今日沢山唄うんで、覚悟しといてください」
と告げ、賛同の歓声を浴び『ケッペキショウ』へ。ステージを左右へ移動し、客席へ向けて拳を振り上げコールを扇動、すこっぷによるボカロ曲に感情を籠める。スクリーンで少女の泣き顔が大映しになり、じっぷすのボカロ曲『ダーリンドール』を「ダーリンダーリン」と印象的にリフレイン。ビビッドにライティングが明滅し、木々と電線越しに雲を見上げるグラフィックが映し出されて歓声が上がりkoyori (電ポルP)のボカロ曲『独りんぼエンヴィー』。ボーカロイド独特のアンニュイな響きを自身の声に含ませ青春の憂いを唄い上げる。スクリーンが暗くなり、koyoriが『水奏レグルス』用に書き下ろした『虚空腹家の憂鬱』。スポットライトに照らされながらステージを左右に移動し「知らぬ振りをして 明日になったら また君を嫌いになるよ 空の頭で」と声を響かせ、間髪を入れず、みきとPのスローバラード『サリシノハラ』で、切ないアニメMVをバックに温もりを届ける。
「みんな付いてこれてますか?(賛同の声)今回のライブ、『水奏レグルス』の曲を沢山やってるんですけど、当時聴いてたよって人どれぐらいいますか?(場内から大きな反応)おおおお…逆に最近知ったよって人いますか?意外と居ない(笑)そんなにみんな(『水奏レグルス』を)通って来てるの?マジかよ。ありがとうございます(笑)。
このライブのテーマはですね、あの頃に返ろう…っていう。はい(歓声)。
なんでこのライブを今やることになったかっていうと、そろそろ10周年なんですよ。なんかやっぱりずっと心残りで、あの時ライブをやってないな…というのは。
今日こうやってみんなの前で改めてね、一緒に愉しんでいけたらなと思います。
ちょっと(マイク)スタンドも使おう(場内どよめき)。いいでしょ別に(場内笑)。確かに使ってないけどね。アルバム以外の曲もやるんで、その曲が次に来ます」
と告げるとスクリーンに宇宙をバックに佇む少女が映し出されて歓声があがり、19's Sound Factoryのボカロ曲『ハイドアンド・シーク』へ。印象的なギターの暖かな音色に乗って「もういっかい」のフレーズで客席と手を振り合わせて一体となる。ステージが緑色にライトアップされ『水奏レグルス』から、ANDRIVEBOiz書き下ろし楽曲『夏が終わる風の音』へ。ピアノ前奏から始まるジャジーなメロディに「期待しては 期待外れ」「夢の中も現実も不安定 苦しいよ」「シナリオ通りを逃げ出して 即興的な未来へ行く 辿り着けるかオアシス」「僕の声と 妙な感覚を 君を歌った メロディの迷路」と時代を覆う閉塞感を唄う。続いてスクリーンにサイバーな少年少女のイラストが映し出されて悲鳴にも似た歓声があがる。マイクスタンドを握りpapiyon/蝶々Pの温もりあるボカロスローバラード『心做し』を、眩い白のスポットライトが暖色へ変わるグラデーションの中で唄いあげる。スクリーンにフィルムノイズが入った白い背景に青い糸が垂れて、『水奏レグルス』からまふまふ書き下ろしの『あやとり』。マイクを手に持ち替え「それでも僕はわかっていたんだ この世はやがて終わっていくんだ」「僕をわすれてくれますか」「君に嫌われるように つぶやいた」と唄声を震わせた。n-bunaのボカロ曲『メリュー』では涙を流すワンピースの少女のMVとシンクロする様に唄を響かせる。
「愉しんでますか?(賛同の拍手)いやー懐かしいですね。懐かしくない?(賛同の声多数)
『水奏レグルス』発売から 10年経って、今回セットリストを組んだりしてる中で、昔の自分の『歌ってみた』を聴いたり、アルバムもね。自分のアルバム普段聴かないですから、久々にフルでセトリ順に聴いてみたりして。
10年間で変わった部分もあれば、変わってない部分もあったりして。忘れていた初心を取り戻していく様な気分になって…このライブは本当にメモリアルな…みんなにとっても特別なライブになると思うし、僕にとっても特別なライブがになればいいなと思って唄ってます」
と歓声を浴びOrangestarによる『水奏レグルス』書き下ろし楽曲『新世界LIVE』へ。スクリーンはオフになり、ステージでスポットライトが乱舞、疾走感溢れるメロディで「僕らを嗤う世界にじゃあねバイバイ LIVE継続中飛ばせ 1,2,3,さあ一直線」とシャウトする。ハイテンションのままステージを左右へ移動しHACHIのボカロ曲『ドーナツホール』でコールを扇動、CHiCO with HoneyWorksのアッパーチューン『イノコリ先生』へ。ここまで、客席のペンライトは周囲への配慮で胸元までで振られていて、非常にマナーの良さを感じられた。ここでは「先生の事好きですかー?」「Say」の問いかけに、一斉にペンライトを掲げて元気よく「ハーイハイハイハーイハイ」とコール&レスポンスで盛り上がり、二重に感動させられた。続いて砂粒のボカロ曲『思春期少年少女』では、Souが「なの。 すきっ なの」という印象的なフレーズを壮快にリフレイン、「すき」で締めくくり大歓声。
「愉しんでますか?(大歓声)今回のライブのセットリストは、アルバムのリリースからの期間を想定して、当時自分がやるなら…こんな曲数やんないけどね(笑)10年やって初めての曲数みたいなんですけど…やるとしたら…みたいなテーマで組ませていただいております。ボーカロイドの伝説的な曲ばっかりではあるので、当時を知らない人でもこの曲知ってる! みたいなね。
まあ10年越しにライブをしてるっていうのは、ずっと忘れずに聴いてくれて、色褪せずに、アルバムも聴いてくれたみんなのおかげなんで、ありがとうございます。
いや、この景色をあの頃の自分に見せたいよね。こんななってます! っていう。何て言うかな。スゲッ…とか言いそう(場内笑)。
そろそろね、終わりに向かってきております(嘆きの声)。もう喉やばいから…喋れなくなるから(「水飲んで」の声に応えて水を飲み、「お水美味しい?」の声に)水味~本当にこれやりたいんですか?皆さん(場内笑)。
毎回ライブやる時に言ってますけど、終わるということはね、始まりますから。精一杯みんなの心に残るように一生懸命唄います」
と19's Sound Factory『さかさシンドローム』、まふまふ『ショパンと氷の白鍵』、koyori『未来景イノセンス』とボカロ曲カバーを立て続けに披露。ピアノの前奏が響き白いスポットライトに照らされたSouは
「あと2曲で終わりです。最後までこの『水想レグルス』を愉しんでいってください。本当にありがとうございました」
と告げ、赤髪のボカロ曲『StarCrew』の壮大なメロディでハイトーンを響かせる。青い光に包まれたステージ上が眩いばかりに白くライトオンし、スズムのボカロ曲『世界寿命と最後の一日』へ。ステージを左右へ移動し隅々まで視線を送り場内へ歌声を響かせたSouは
「ありがとうございました」
と謝意を示し、大きな拍手に送られステージを下りた。
ほのかに青いライトが灯る場内に「アンコール」の声が響き、ライブTシャツに着替えたバンドメンバーがスタンバイ。前奏に乗ってライブTシャツを身に纏ったSouが再登場し、
「皆さんまだまだ行けますか!」
と叫ぶと椎名もたのボカロ曲『Q』へ。スクリーンにはガトリングガンを携えガスマスクを着けた少女のセンシティブなイラストが映り、Souはコールを扇動、疾走感溢れるメロディに歌声を響かせる。
「アンコールありがとうございます!」
と叫んで歓声を浴びると
「着替えてきました。(可愛い! の声多数)(腰のバッグに「何入ってるの?」に)みんなの夢と希望(場内笑と可愛いの声)。ここからはですね、最新の僕をお届けしちゃおうかなと思いますが、その前に」
と、ベース・熊吉郎こと兼子拓真、バンマス&ドラム・BlueNoこと青野雅人、キーボード・ジョー、ギター・リプTONE、マニピュレーター・米田直之を紹介。
「沢山のスタッフに支えられてライブをできております。ありがとうございます。本編は終わっちゃったわけですけど。アンコールで僕が10年間かけて辿り着いた今を、みんなに届けて帰れたら良いなと思っております」
と、8月配信の新曲『ブルースクリーン』へ。Mekakusheによるポップなメロディに「再起動した あの日のように ブルースクリーン 色褪せないでね」「トリミングした世界」「もう二度と戻れない エラーコードを忘れた」と現代的なワードを散りばめた歌詞を乗せ、軽やかに唄う。
そして本邦初公開、10月20日配信の新曲『千里眼』へ。高BPMのアッパーチューンに「1メーター計測して 9性中毒の市場 8面玲瓏 4に損ないの衆」「描写速度追い越して」「次元旅行非現実機構」とサイバーなワードを織り込んだ難曲を軽妙に披露し大歓声を浴びる。ここで定番の
「Souだけに」
「壮快」
のコール&レスポンスで盛り上がり、
「すっごい変な集団(場内笑)。皆さんありがとうね。最後の曲は僕が久しぶりに作った新曲になっていて。
僕はあんまりね、歌詞とかちゃんと聴かないで音楽を聴いてたり。なんか歌詞って結構適当でもいいんじゃね?みたいなね。耳なじみ良かったら…みたいな派閥なんですけど。
そんな中でも、今回みんなに、伝えたい想い。とか、思ってること。みたいなのを歌にしたいと初めて思って。みんなに向けてというか、自分の気持ちとか、みんなに対して思ってることとかを昇華した、そんな曲になっております。
なんかあんまりMC でかっこいいことをね、うまく言えないんで…もう曲聴いて感じてください。そして10年前に作った『水奏レグルス』の曲たちは今やっても色褪せない名曲ばっかりで、絶対またどこかでやりたいなと思うし、その時はみんな来てください。
じゃあ唄って終わります」
と告げたSouは拍手を受け、ヘッドフォンをして電車に乗った青年をモチーフにしたMVをバックに、『Terminal』へ。声に機械的なエフェクトを乗せてボーカロイドに寄せながら、「近くて遠い君と僕は 今すれ違う右左 みつけられないね」「いつまでも子供のままで 居たいんだ」「君に会いに行く」「僕らは出会う」と人間味溢れる想いを客席へ届ける。唄い終えたSouは
「また絶対逢いましょう! Souでした!」
と絶叫、マイクオフでメンバーと共に
「本当にありがとうございました」
と謝意を示し、会場の隅々まで手を振って視線を送ると、名残惜しそうにステージを後にした。
ボーカロイドなどのソフトを駆使した楽曲製作や配信という新しい文化がミュージックシーンに完全に定着し、スタンダードになりつつある2025年。そのうねりの中から颯爽とデビューしたSouは、メディアで素顔を明かさず、ボカロ曲との親和性が高いといった、新しい時代性が伝わってくる。と同時に、その唄に温もりや力強さといった普遍的な音楽の魅力も合わせ持ったハイブリッドなボーカリストだと強く感じられる。今後のSouが、どんな新しい時代を切り拓いて、そこに時代を超えた感動を与えてくれるのか。これからの10年が愉しみに感じられた、豊洲の夜となった。
ライター:こもとめいこ♂
◎Sou「水想レグルス」セットリスト
M01.右に曲ガール
M02.疑心暗鬼
M03.恋愛裁判
M04.ケッペキショウ
M05.ダーリンドール
M06.独りんぼエンヴィー
M07.虚空腹家の憂鬱
M08.サリシノハラ
M09.ハイドアンド・シーク
M10.夏が終わる風の音
M11.心做し
M12.あやとり
M13.メリュー
M14.新世界LIVE
M15.ドーナツホール
M16.イノコリ先生
M17.思春期少年少女
M18.さかさシンドローム
M19.ショパンと氷の白鍵
M20.未来景イノセンス
M21.StarCrew
M22.世界寿命と最後の一日
EN1.Q
EN2.ブルースクリーン
EN3.千里眼
EN4.Terminal
■Sou公式サイト
https://sou-official.jp/■Sou Official YouTube Channel
https://www.youtube.com/@niconicoSou■OFFICIAL FUNCLUB
https://sou.fanpla.jp/■『千里眼』楽曲配信
https://lnk.to/sou-senrigan<<アニメ歌ネットトップへ戻る>>