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Q1. 歌詞を書くことになった、最初のきっかけを教えてください。
好きになるアーティストが、「ギターボーカルのフロントマンが曲を書くバンド」なことが多く、その影響で自然と自分もギターボーカル志向、シンガーソングライター志向が強くなり、作詞作曲を始めるようになりました。
高校生のころには、ごっこ遊び程度ですがバンドを組み、オリジナル曲を作ってコンテストに出場したこともあります。
大学進学を機に上京し、本格的にバンド活動やボカロPとしての楽曲制作を始め、オリジナル曲を書き続けてきました。
そうした音楽活動を続ける中でお声がけをいただき、現在のように歌詞を書く仕事をするようになった、という流れです。 -
Q2. 歌詞を書く時には、どんなところからインスピレーションを得ることが多いですか?
映画やマンガのような創作物から日常のちょっとした風景まで、あらゆるところにひらめきは眠っていると思います。ただ、僕はそんな物事を斜に構えて見ることが多いです。
例えば、「綺麗でロマンチックな夜景って夜遅くまで働いている人の生活の光だよなあ」とか、「高校野球の華々しいグラウンドの裏には、3年間必死に頑張ってもベンチにすら入れなかった生徒もいるんだよなあ」とか、そんな感じです。
良きもの・美しきもの・素晴らしいとされているものの裏にこそ、僕が歌にしたいと思える風景が多い気がしています。 -
Q3. 普段、どのように歌詞を構成していきますか?
最初に「タイトル(仮でもOK)」と「何を歌いたい歌なのか」をできるだけ明文化するようにしています。書いては消して消しては書いて……と悩んでいるうちに「あれ、これ何の歌だっけ?」と迷子になりがちなので。
また、最初から音ハメを意識して書くことはしないようにしています。まずは音数・文字数を考えずに思いついたことをとにかく沢山書き出してから、その後、音にハマるように圧縮する、というイメージで書いています。 音が言葉を連れてくることもありますが、音に縛られて自由な発想ができないという場合もあります。難しいですね。
メロディーも自分で書く場合、歌詞とメロディーを同時に考えることが多いです。そのほうが、言葉と音のお互いが支え合うような良い曲が書ける気がしています。 -
Q4. お気に入りの仕事道具や、作詞の際に必要な環境、場所などがあれば教えてください。
作業が捗るのは結局、自宅のPCの前ですね。ひらめきを待つよりは手を動かして考えるタイプです。
一番欠かせない仕事道具はEvernote(アプリ)です。文字と音声を一緒のノートに保存できたり、PCとスマホで同期できたりするのが便利で、僕にとっては生活必需品です。
あとは、さっと手にとって弾き語りできるようにYAMAHAのミニアコースティックギターを傍らに置いています。
最近はChatGPTも相談相手感覚で使っていますね。語彙の補助やブレインストーミング相手にはとても便利だと思います。
実用的なものばかりであんまりお洒落な回答じゃないですが、これがリアルな環境ということで……。 -
Q5. ご自身が手掛けた歌詞に関して、今だから言える裏話、エピソードはありますか?
「Hello, Worker」を書いたのは、大学を卒業してふらふらとフリーターをしていたころです。当時働いていたバイト先が潰れてしまい、失業保険をもらうため、実際にハローワークに通っていました。その経験が、この曲のもとになっています。
ハローワークには老若男女さまざまな人がいて、子ども連れの若い家族とか、窓口でなんだか怒鳴っているおじさんとか、「この人はどんな人生を経てここに来ているんだろうな」と想像を掻き立てられたのをよく覚えています。 -
Q6. 自分が思う「良い歌詞」とは?
創作物である以上、テクニック的な巧拙は避けられない部分もあるかもしれません。
しかし、それ以上に「魂のこもった歌詞」こそが良い歌詞だと考えています。
その人自身のリアルな経験や感情、本気で伝えたいメッセージ、そしてそれを届けたいという心からの情熱が込められた言葉には、技術を超えた力が宿ると信じています。 -
Q7. 「やられた!」と思わされた1曲を教えてください。
「やられた!」なんて言うのもおこがましいですが、BUMP OF CHICKEN「スノースマイル」の
<冬が寒くって 本当に良かった>という歌い出しは本当にすごいと思います。
歌い出しは、サビ頭と並んで作詞において非常に重要な箇所です。
このフレーズはたった一行で、「寒い冬」という舞台設定を伝えると同時に、「普通は嫌なはずの『寒さ』が『良かった』とはどういうことだろう?」という疑問を自然に抱かせます。これにより、聞き手を一気に曲の世界に引き込む力があります。 キャッチーさと美しさが両立した、まさに名フレーズだと思います。 -
Q8. 歌詞を書く際、よく使う言葉、
または、使わないように意識している言葉はありますか?自分ではあまり意識していないのですが「傘」というモチーフはよく使うよね、と指摘されたことはあります。自分でも理由はわかりません笑。
使わない言葉でいうと、「切ない」という言葉は使っていない気がします。「切ない」という言葉は、悲しみや辛さで言葉に詰まるような状況を指すと思うのですが、それを言葉にするのが歌であり歌詞の役割では……? と思うので、そこは避けてしまいます。 -
Q9. 言葉を届けるために、アーティスト、クリエイターに求められる資質とは?
一般社会では忌避されがちな「傷つきやすさ」や「心の弱さ」といったネガティブな性質が、「繊細さ」「感受性の豊かさ」「人の弱さに寄り添える優しさ」という強力な武器になるのが表現の世界だと思います。
そのような自分自身のネガティブを受け入れて武器にできる力は、良い作品を作るための資質になるかもしれません。
ただ、そうした自分と向き合うことは、ときに自分で自分を痛めつけることにも繋がると思います。そんなとき、自らを傷つけすぎないよう、心身を健やかに保つ自分なりの健康法を見つけることが、長く創作を続けていくための大事なスキルなのかなあ、なんて思います。 -
Q10. 歌詞を書きたいと思っている人へのアドバイスをお願いします。
伝えたい気持ちがあれば、とにかく言葉にして書く!そして発表する!が大事だと思います。
技術なんてあとからついてきますし、作って、人に見せて、反応をもらうことできっと言葉は育っていくはずです。
逆に、伝えたい気持ちが無いなら無理して何か書こうとしなくていいと思います。
気持ちのこもってない言葉で動かせるほど人の心って軽くない気がします。たぶん。
代表作は「Hello, Worker」「ピエロ」など。
「言葉を大切にした音楽」をモットーに、現在は様々なアーティストへの楽曲提供を行う。
2024年12月25日発売
完全生産限定盤 (CD+Tシャツ)
VVCL-2623/4 ¥5,800 (税込)
M1. Oh UnHappy Day (作詞)
M2. Girls Don't Cry (作詞・作曲)
M3. TOXIC
M4. 革命
M5. ハレルヤ (作詞)
M6. Game of Love (作詞・編曲)
M7. YOU (作詞)
[Bonus Track] ALONE -Naked- (作詞・編曲)
ReoNa『GG』
2024年11月20日発売
期間生産限定盤 (CD+DVD)
VVCL-2618~2619 ¥1,980 (税込)
M1. GG (共作詞)
M2. 私たちの讃歌 (共作詞作曲)
M3. Mosquito [期間生産限定盤収録] (作詞作曲編曲)
M4. GG-TV size-