声優・アーティスト水瀬いのりが辿り着いた、自分らしくあれる場所 『Inori Minase LIVE TOUR 2023 SCRAP ART』レポート 2023/11/20
声優・アーティスト水瀬いのりが辿り着いた、自分らしくあれる場所 『Inori Minase LIVE TOUR 2023 SCRAP ART』レポート
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声優・アーティスト水瀬いのりが4年振りの声出しツアー『Inori Minase LIVE TOUR 2023 SCRAP ART』で九州~東北を縦断し、10月28日(土)、29日(日)神奈川・ぴあアリーナMM公演で完走した。
今回は4年振り2Days公演2日目、千秋楽29日(日)公演の模様をレポートする。


朝方は雨模様だったが、午後には秋晴れとなった横浜。開場時間が近づくと、ライブロゴの入った黒いコーチジャケットやライブTシャツに身を包んだファンが集結、文字通り黒山の人だかりとなった。
ぴあアリーナでは国内外のファン有志から贈られた、ハロウィーン仕様など趣向を凝らしたフラワースタンドがファンを出迎える。場内では中央に箱形のセットが組まれ、左右にバンドの機材が配されたシンプルなステージと大型スクリーンが視界に入る。

開演となり、暗転した場内一面に、ペンライトの水色の光が瞬く。OP映像に続き、12thシングル表題曲で、ツアータイトルになった『スクラップアート』の「どうしてここにいるの」という問いかけからの不穏な前奏と共に、フードと鮮やかなエクステに身を包んだ水瀬いのりが箱形セット上に登場。「どうして」とリフレインする機械的なコーラスに対峙する様に「君がどんなに錆び付いて 未来を歪めようとも」「抱きしめるよ」と熱い想いをファンに迸らせる。







4年振りの歓声を浴びながらステージへ下りた水瀬いのりは一転アップテンポな『identity』で「正解じゃなくても私なんだ」と力強い歌声を響かせる。間髪を入れずに『brave climber』へ繋ぐと、スクリーンのビビッドな効果を背に「移り変わってく景色を見るために 僕は明日も生きていくんだよ」と歌詞に乗せてメッセージを伝える。
ファンからの大歓声に満面の笑みを浮かべた水瀬いのりは、無事ツアーファイナルを迎えられたことと、来場に感謝を述べる。そして
「それぞれのペース、想いの大きさ、形で、自分らしく、この場所を楽しんでいただけたらと思っています」
と、かつては客席側にいた水瀬いのりらしい気遣いをみせる。
さらに本公演のタイトルが、不要な物がアートに生まれ変わるムーブメントと、自身の葛藤や経験をオーバーラップさせたものであることを伝え、自身が
「オタク特有の早口」
であると自嘲しつつ
「みんなの声が聞きたい」
と、ライブの参加回数を質問。初参加の声に喜びを表し、
「先輩たち、優しくしてあげてよ。難しいこと何もないよ、って言ってあげてよ」
とユーモアを交えながら気遣い、
「回数は関係ありませんので。それぞれのタイミングがあると思うので、等しくみんなに届く様に、頑張っていきます」
と述べて拍手を浴びる。

ここで「いのりバンド」によるパフォーマンスの間に早替えでデニムをアレンジしたスカートにチェンジした水瀬いのりは、黄色と水色のライトが入り交じる客席へ投げキッスを見せながら『僕らだけの鼓動』を軽やかに響かせる。そして大きな身振りでクラップを扇動、「悲しいことは はんぶんこしよう 嬉しいことは おそろいにしよう」と『クリスタライズ』で一体になる。
続いて、ドラム・藤原佑介(黄)、ベース&バンマス・島本道太郎(赤)、キーボード・小畑貴裕(緑)、ツインギター・伊平友樹(白)&植田浩二(ピンク)からなる、いのりバンドのメンバーを紹介。ファンもライトをメンバーのカラーに合わせて声援を贈る。




すると公式マスコット「くらり」をイメージした爽やかな衣装に着替えた水瀬いのりが、暖色のライトに照らされながら、ポップな『アイマイモコ』で切ない乙女心を歌い上げる。続いて『運命の赤い糸』では、赤いライトが灯った客席へ「運命の赤い糸 辿った先には君がいいな」と小指を差し出す。
そして白い光を淡く灯す、オフィシャルグッズの「くらりライトチャーム」が揺らめく中で、自身が作詞を手がけた『くらりのうた』をゆったりと響かせる。続いてスクリーンに雪が舞う風景が映し出され『あの日の空へ』で「変わってく 空見上げて ぼくらは 今 未来を探す」と想いを紡ぐ。




ここで幕間映像となり、今回のツアーではアートに挑戦してきたという「BRIDGE MOVIE」が放映。この日の水瀬いのりは「くらりの仲間たち」を描く。
ゆったりした空気が一転して、『アイオライト』の重厚なイントロが流れると客席では水色と紫のライトが点灯。紫に輝くエレガントでアダルトな衣装に身を包んだ水瀬いのりが箱の上に姿を現し、MVの世界観を踏襲した演出に合わせ「答えはどこにも無くたって それでも生きるよ」と声を響かせる。白いレーザーが空中を切り裂く中、11thシングルのカップリング『クータスタ』の「この感情も この温かさも」「わたしのものなんだ」という激しいメッセージを迸らせる。さらにテンポアップした『TRUST IN ETERNITY』で「傷みも 涙も 私が生きる証だから」という鮮烈な歌詞に呼応し、水色と赤のライトが揺れ、コールが巻き起こる。そして
「ブチ上がるぞー!スイッチを入れて」
と笑みを浮かべ、アリーナから4階まで、声出しを扇動。壮大なスケール感溢れる『約束のアステリズム』でステージを左右へ移動し「見えなくなって 何も聞こえなくなっても 君まで届くように」と歌声を響かせ、「Oh Oh」の合唱を呼び起こす。さらに『Million Futures』では「Million Futures」のコール&レスポンスで一体になる。いのりバンドが激しいセッションで魅せ、「WWWシリーズ」と呼ばれる楽曲ゾーンへ。




紅いジャケットに着替えた水瀬いのりは、「バイバイ!」のリフレインが印象的なポップチューン『Well Wishing Word』、「束ねた銀河を掬い上げ」「街の陰に灯そう」という大きなスケール感の『While We Walk』、「拙いままの心 呼ばれて ここまできたよ」と切なく歌う『Winter Wonder Wander』と続けざま、イメージに合わせた映像と共に披露する。
そして「WWWシリーズ」への思い入れを語った水瀬いのりは、
「次の曲が最後になります」
と告げて観客からの嘆きの声を受けながら、
「私はこのツアーで本当に楽しく唄わせて頂いたので、悔いなく最後の1曲に向かえます。
最後の曲は皆さんと一緒に完成させたい曲になっているので、最後の力、声を振り絞って、私達に想いをぶつけて、1つになれる。そんな1曲です」
と告げ、場内の溢れる光を見渡して
「夢に見ていた景色が広がっています」
と、『僕らは今』へ。
ゆったりとした前奏から「今、ここでしか できない何かを叶えるために」のフレーズで一気にテンポアップ。「夢を叫べ 約束された栄光なんてないから」と扇動し、「Oh Oh」のコールを引き出すと、「Believe in me」「believe in you」の大合唱を浴びる。「今 数えきれない光が ひとつになる」と絶唱し、
「本当にありがとう」
と述べてステージを下りた。







しかし場内に感極まったファンの「いのりん」コールが溢れ、想いに応えた水瀬いのりはライブTシャツに着替え、「くらりちゃんフロート」に乗って再登場。『Morning Prism』、『ココロはMerry-Go-Round』を軽やかに響かせながらアリーナを巡り、場内の隅々にまでハグや指ハートを贈る。ステージに戻り場内にWaveを起こし、文化放送『水瀬いのり MELODY FLAG』公開録音と『いのりまち町民集会2024』での再会を約束しつつ、本公演の後日配信を告知して歓声を浴びる。そして
「タオル、ペンライト、こぶし、回せる物ならなんでも、隣の方にぶつからないように、全力で回してください!」
と扇動し、タオル曲『Ready Steady Go!』へ。水瀬いのりもライブタオルを全力で振りながら「涙の跡が いつだって 次のスタートライン」と絶叫、ファンからのコールと一体になり、
「ありがとう」
の言葉を客席と交わし、ステージを後にした。しかし暗転した場内に去りがたいファンの声が反響すると、導かれる様に再々登場。客席からの、ツアーを最初からリピートして欲しいとの声に、一瞬間を置いて考え、申し訳なさそうに
「もう1回最初からは、無理…」
と素直に心情を吐露し、笑いを誘う。さらに
「でも、もう1回が無いから、良いのかもしれないよね」
と語り、賛同の大きな拍手を受けた水瀬いのりからは、その場の勢いで言葉を発しない、嘘をつけない誠実さが伝わってきた。
そして瞳を潤ませながら、
「チームいのりが、弱音を吐ける場所になってる事が嬉しくて…」
と熱いものを堪える。さらに
「皆さんも、辛い時は無理って言ってくださいね。頑張り過ぎないことが1番。弱音を吐くことも勇気だからね。私も弱音ばっかり吐いてるんですけど…ステージを楽しい場所にしてくれた皆さんへ、最後にこの曲を歌います」
と告げ、
「個性、好きな色、自分らしさを大切にしながら、聴いて、歌っていただけたら嬉しいです。本当にありがとうございました」
と伝え、『Catch the Rainbow !』へ。
満員の場内に、思い思いのカラーのライトが輝く中、自身が手がけた「みんながいるから!しあわせ」「ずっと探してた 自分を信じられる場所」「ずっと しあわせを 歌おう」という想いを熱唱、場内一体で、一際大きなジャンプで締めくくる。
ここでマニピュレーター・荒島弘樹を呼び込んだ水瀬いのりは、マイクオフで
「ありがとうございました」
の声を会場の隅々まで響かせて、ライブツアーを走りきった。













かつては客席側から、キングレコードの偉大な先輩に人一倍熱い視線を贈り、今は自らがステージに立つ存在となった水瀬いのり。無尽蔵なパワーを誇る先輩達とは違ったアプローチでステージに挑む水瀬いのりが発する言葉、表現、パフォーマンスは、今や唯一無二の「いのり節」となった。ソロアーティストデビューからおよそ8年を迎えた水瀬いのりが、1人の声優・アーティストとして大きく成長したことを感じさせてくれた、横浜の夜となった。


ライター:こもとめいこ♂
photo:加藤アラタ / 三浦一喜


『Inori Minase LIVE TOUR 2023 SCRAP ART/ツアーファイナル』セットリスト

セットプレイリスト
https://lnk.to/scrapart_live

01.スクラップアート
02.identity
03.brave climber
04.僕らだけの鼓動
05.クリスタライズ
06.アイマイモコ
07.運命の赤い糸
08.くらりのうた
09.あの日の空へ
10.アイオライト
11.クータスタ
12.TRUST IN ETERNITY
13.約束のアステリズム
14.Million Futures
15.Well Wishing Word
16.While We Walk
17.Winter Wonder Wander
18.僕らは今
EN1.Morning Prism
EN2.ココロはMerry-Go-Round
EN3.Ready Steady Go!
WEN.Catch the Rainbow !

■公式サイト「inori minase OFFICIAL WEB SITE」
https://www.inoriminase.com/
■公式YouTube Channel「Inori Minase YouTube Official Channel」
https://www.youtube.com/@inori_minase/featured
■「Inori Minase LIVE TOUR 2023 SCRAP ART」特設ページ
https://www.inoriminase.com/special/2023/SA/


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