―― 1曲目「なんかさ」は、アルバム全体を包み込むオープニング曲のような1曲ですね。
これまでいろんなアーティストさんのアルバムを聴いてきたなかで、1曲目はサウンドのみで、2曲目から歌詞が入ってくるという形にされている方が結構多くて。私もそういう入り口の曲を作ってみたいなと。短い曲と歌詞だけど、どこかアルバムの冒頭として説得力があって、作品に入り込みやすいものを考えてみました。これはずっとやりたかったことなので今回実現できて嬉しかったですね。
「なんかさ」っていうのは、私の口癖なんですけど、まず口癖から始まるところが今回のアルバムにとって良いなと思って、タイトルから先に決めました。そして、このアルバムの1曲目だけは「私の22歳までの人生ってこんな感じでしたよ」って伝えたくて、対象を<あなた>ではなく自分自身にしたんです。あと、声を重ねることで、いろんなときの<泣いて笑って>を表現しましたね。気だるそうなときもあれば、強い意志を持ったときもあれば、悲しそうな寂しそうなときもある。柔らかくもあり、切なくもある空気感を表現できた気がします。
―― ちなみに佳奈さんは、いつもどんなときに「なんかさ」と口にするのですか?
何かと使っちゃうんですよね。友だちと喋るときとか「なんかさ、今日めちゃめちゃ天気よくない?」とか「なんかさ、お腹すいたんやけど」とか(笑)。そういう日常の私らしい口癖から始まるのがこのアルバムですね。
―― 先ほどお話されていた、2曲目「This is a Love Story」は歌詞に<あなたがいて>というアルバムタイトルが登場しますね。
今回『あなたがいて』というタイトルのアルバムを作るにあたって、いろんなひとと出会って、いろんな想いをしたけど、結局<あなたがいて今日も幸せよ>ってことを、どうしても伝えたくて。その言葉をラブソングで伝えるべく、制作の最後のほうにこの曲と向き合いました。いちばんアルバムのテーマになる曲だと思っています。
―― 主人公の<私>は<あなた>となら<待ち合わせに遅れる>こともできるし、<こんなに深く眠れる>し、<もう一人じゃない>と思えるし、恋することによって解放されているところが素敵です。
ありがとうございます。この曲ではとにかくみんなの日常の幸せに溶け込みたくて。本当に「幸せだなぁ!」って、心から叫びたくなるような瞬間をすごく考えて歌詞を書きましたね。たとえば「あのひと、絶対にいつもコンビニでヨーグルトを買ってきちゃうな。要らないんだけどな。でもヨーグルトありがと、幸せだな」みたいな(笑)。そういう小さな幸せあるあるを見つけたり、友だちに聞いたりして、この歌詞を書いていきましたね。
―― いろんな幸せあるあるが描かれているなかで、2番の<湖の真ん中に浮かぶ 甘い香りのボートで またお話しましょ>というフレーズなどは、少しファンタジックな要素もありますね。先ほどおっしゃっていた「ディズニープリンセス」感というか。
まさに2番はそうですね。私が好きなアリエルだったり、ラプンツェルだったり、そういうディズニープリンセスの作品を観ながら、「はぁ~こういうの、ちょっと憧れるなぁ…いいなぁ…。絶対この瞬間、幸せだろうなぁ…」ってワンシーンを切り取って書きました。結構ディズニー作品って、ボートに乗りがちで(笑)。でも実際にも恋人とボートに乗ったりするから、現実離れしているようで、どこか現実味もあるフレーズにできたかなと思います。自分が22歳まで出会ってきた、大好きなディズニー作品をこの曲で<あなた>にできたことも嬉しいですね。
―― また、この曲は恋が愛に変わってゆく途中の歌でもあるのかなと感じたのですが、佳奈さんにとって「恋と愛の違い」って、なんだと思いますか?
難しいなぁ…。恋は楽しむもの、愛は寄り添うもの、かなぁ。「This is a Love Story」の<私>も今、すごく楽しんでいますよね。ただ、私はこの歌詞を書くときにある友だちのことを思い浮かべたんですよね。もう長く恋人といる子なんですけど、常に楽しそうで。私が「どう?幸せ?」って聞くと、いつも「超幸せ!」って言うんです(笑)。なんかその子の幸せそうな姿を見ていると、ずっと恋が続いているようでもあり、これが愛だなって感じるところもあって。だからこの曲も、恋にも愛にもどちらにも取れるのかなって思います。この曲を聴くたびに彼らの姿が頭に浮かびますね。
―― 3曲目「Film」は、MVを拝見したのですが、実際に佳奈さんのお友達と撮影されたのでしょうか。
そうなんです。曲自体も、私が今一緒に住んでいるその友達に向けて作った曲で。彼女がいつも私の写真を撮ってくれるので、「Film」というタイトルにしました。もうすぐ別れがやってくることをふたりとも自覚していて。「もし別れがやってきたら、こういう気持ちになるだろうな。じゃあ私が伝えたいことってなんだろうな」と、考えた曲なんです。MVでも、私たちがいたことを確かなものとして完成させることができたので、嬉しかったですね。彼女といつ離れても後悔がないような曲にできたなと思います。
―― そのお友達へのメッセージソングでもあり、自分のお守りにもなるような1曲ですね。
本当にそうですね。彼女は高校からの友達で。この歌詞のなかに<あれから5年まぁ無理もないか>ってフレーズがあるんですけど、まさに高校生の頃、一緒にディズニーランドに行って<お揃いのカチューシャつけて 張り切って朝から並んで 疲れ知らずだった>よなぁって、ふたりでよく喋るんです。私たちならではの関係性だからこその会話があって、そこから歌詞が生まれたんですよね。
MV制作も楽しくて。実際に私たちが使っているものでリアルに表現したいということで、お揃いのマグカップが登場したり。衣装ではなく私服でやろうって、三日間ぐらいふたりで、夜な夜な「この服どう思う?どう!?」「やめて!埃が舞ってる!マスクしよ!」みたいな(笑)。この撮影自体も、全部が彼女との本当の思い出になるから、そういう制作をさせていただけたことがすごく幸せでしたね。