「ノンフィクション」を書いていて、自分でゾッとしたんですよ。

―― アルバムタイトル『サニーボトル』は、あたたかくて優しい言葉ですね。持ち歩ける太陽のようなイメージが伝わってきました。

まさしくそういうイメージです。サニーボトルってスタバとかで売っているじゃないですか。そのぐらい簡単に持ち運びできて、ちょっとキャップをひねったら、優しい気持ちになれる太陽みたいなものが出てくる。そういうイメージでしたね。そのぐらい身近に置いておいてほしいし、ちょっとでもみんなの心を晴れやかにしたいなって思って。だから、収録曲も前向きな曲が多くて、自分自身が前向きなマインドだったのかもしれません。

―― とくに慎也さんが、思い入れの深い1曲を挙げるとするとどの曲でしょうか。

すごく書きたかったのは「ノンフィクション」ですね。これは『WOWOWオリジナルドラマ 神木隆之介の撮休』の主題歌なんですけど。冒頭の<夢から覚めてゾッとする 今日も新しい日々の幕開けだ>ってフレーズから最後まで、本当に俺が思っていることを書き尽くした感じなんですよ。

―― まさにノンフィクションな歌詞なんですね。役者さんもそうですが、アーティストの方も<仮面をつけて準備は完璧 鏡に写った僕は誰?>ってことがきっとありますよね。

そうなんです。<舞台裏で泣いている>とかもそうだし。最初にもちょっと話したように、「こう見られたほうがいいのかな」とか、「こうしないとダメなのかな」とか思うことがかなり多いんですよ。とくに表舞台に立っているひとたちは、マストで聴いてほしい曲ですね。

―― 慎也さんはどういうところに<本当の僕>とまわりからのイメージとのギャップを感じますか?

最近はあまり感じることがなくなったんです。でもちょっと前まで、かなり猫をかぶっていたところがあって。たとえば、テレビに出るときは、「気に入られないと」とか。先輩のバンドマンとご飯に行くときもそう思っていたし。「いいひとでいたい」って気持ちもあったし。

でも、もういいかなって。もうどう思われてもいいやって。だから、インスタライブの俺とかも今はわりと素ですね。嫌われたら嫌われたでいいやと思って話すこともあるし。素の自分で話すし。それで「イヤだ」ってひとがいたとしても、やっぱり自分の人生なのでね。

―― そう思えたタイミングは、はっきりとあったのでしょうか。

それこそ「ノンフィクション」を書いているときかもしれないです。書いていて、自分でゾッとしたんですよ。「俺、なんでこんなことを思っていて、それでも猫かぶっているんだろう」って。そこからは、「別にどう思われてもよくね?」ってマインドになりましたね。

この曲を書けたのが、去年の秋冬ぐらいかな。なんか…月に2~3曲書いている時期で。今思うとそういう時期だから書けたのかもなぁ。あと、俺が「アイドル視されている」とかそういう話も出てきて、なんかイヤだなって感じていたタイミングでもあって。

―― なるほど。いろんなタイミングが重なったんですね。

そう。アイドル視されること自体がイヤなわけじゃないんです。ただ、そういうファンの方が増えたから、昔のSaucy Dogを知ってくださっているお客さんが離れていっちゃったり、新しいリスナーの方がそもそも入ろうとしなくなっちゃったり、それはちゃうやろーと思って。それなら音楽で評価してくれよと、動いていたところもあったのかな。「ノンフィクション」後は、「どう思ってくれてもかまわないから、音楽は聴いてねー!」って開放された感じはありますね。だから自分自身が変われた1曲でもあるんです。

―― 結構、今回のアルバムは<本当の僕>というのもテーマになっている気がします。

そうですね。本当の自分を見つめ直すとか、自分らしくとか。それこそ最後の「Be yourself」はそういう面がいちばん強いかも。

photo_01です。

―― 「Be yourself」は、新しいSaucy Dogという印象を受けました。

ありがとうございます! サビ頭から英語の歌詞って今まであまりなかったし。歌詞もわりと余白を大事にした曲で。こういうちょっと泥臭い、イモっぽいカッコよさを届けたかったんです。だから音作りもチープにして、ほぼ一発録り。みんな3~4回ぐらいしか弾いてなくて、めちゃめちゃ早くレコーディング終わって、「じゃあご飯行くかぁ~」みたいな感じでした(笑)。

―― また、3曲目「君ト餃子」と4曲目「優しさに溢れた世界で」も、Saucy Dog的エールソングですね。エールソングを書くとき、何か気をつけることや意識することはありますか?

あんまり直接的な言葉を書かないかもしれないです。THE BLUE HEARTSの「人にやさしく」とかはすごく好きなんですけど、自分はああいう<頑張れ>の熱量を、違う言葉で歌える強さが欲しいなと思いますね。

あと、重荷にならないようにもしているかな。たとえば「君ト餃子」の<下を向いたって良いんだよ 迷子だって良いんだよ>とかも、誰だって上を向くことがしんどくなることはあるなと思って。どちらもエールソングを書くとき、無意識にやっていることですね。

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