戦って追い出すのではなく、自分の内側を大切に生きる時代だと思う。

―― アルバムタイトルであり、曲タイトルでもある「A revolution」ですが、先ほどもおっしゃっていたように「revolution=革命」には様々な意味合いがありますよね。おふたりはどのように捉えられたのでしょうか。

NAOKI 昔はrevolutionと言ったら、デモとかね。勿論そういう抗議行動も今でも大切だとは思うよ。より遡れば、ヨーロッパのほうではもっと大変な革命もいっぱいあったじゃない。そういうみんなで集まって、何か体制を打ち負かして、新世界を作るみたいなことが革命だった。でも今の若い人のコミュニケーションはまた僕らとは違う人もいると思うんですよ。政治に対しても僕たち大人たちは、「今の若い奴は政治に興味がない」とか言うけど、実はそうじゃない気がして。「こんな政府ダメだ!」って立ち向かっていく昔のやり方と違うだけなのかもなと。希望的観測ですけど。

今はスマホもあるし、何かひとつの問題や疑問に対して、それぞれが自分の部屋で、ひとりで向き合える。若い人たちは実はちゃんと一対一でその事象とは繋がっている。そして、一番のプライオリティは政権を打倒することとかじゃなく、くだらない大人のおっさんたちの非常識に自分たちの日常が侵されないように、自分の生活を守ろうとしているのが今の若い人たちだと思うんだよね。戦って追い出すのではなく、自分の内側を大切に生きる時代だと思う感覚なのかもしれない。

―― 曲を聴いていても、大げさなことではなく、とても日常に近いメッセージ性を感じました。

KUMI はい。

NAOKI ささやかなrevolution。「それでも私はこの日常を一生懸命、守って生きていくよ」という個人的なrevolutionなんじゃないかなって。いちばん大切なものを逃がさない。侵されない。僕なんかはどちらかというと堪え性がないからすぐツイッターとかで声を上げてしまうけど、今の時代そうじゃない人の心のrevolution もあると信じたいよね。

photo_01です。

KUMI それが本質だよね。変わっていくこととか、世の中を変えていくことの本質。やっとそういう時代になってきたのかなって思う。昔は、戦ってひっくり返せば何とかなるって信じてやっていたんだろうけど、そこに変化の本質はないんだってみんな気づいて。じゃあ何が大切かと言ったら、そのとき自分ができる目の前のことに、真心をもって向き合うこと。それが世の中を変えていくんだよね。だから大きいrevolutionというよりも、個のrevolution。私のrevolution。

NAOKI それで「revolution」に「A」をつけたんだよね。「とあるrevolution」みたいな。

―― アルバム収録曲を聴いているなかで、<real>や<days>というワードがとくに印象的で。今、お話を伺っていて、全曲に「日常を大切にする」という思いが通じている気がしました。

KUMI とくに<real>って言葉はよく使っているね。あとから気づいたんだけど。何が<real>なのか感じながら作っていた気がするし、何が<real>なのかみんなに見つめて欲しかったのかな。多分、そういう思いが強くあったんだと思う。

―― アルバムにはいろんなタイミングで生まれた楽曲が詰まっているかと思いますが、今のおふたりがとくに思い入れの強い曲というといかがでしょうか。

KUMI 私はわりと最後のほうに仕上がった「Radio song」かな。サビに歌詞が乗らない時点から、もうサビの勢いというか、破壊力がある曲だなと思っていて。とにかくサビが響くように、全体を持って行った。歌詞にしても、サウンドにしても、ミックスにしても。

―― 「Radio song」は、アルバム締め切り間近の時期にNAOKIさんがツイートされていた、「この期に及んで今日新しい曲を生んでしまった」という曲ですか?

NAOKI あれか(笑)。それはね、「Milk and honey」という曲なの。ちょっとエネルギーが強い曲が多かったので、少し気楽な曲も欲しいよねって急遽、生まれたのがこの曲。

KUMI 「Milk and honey」はアルバム作りをしていたからこそ、できた曲だね。

NAOKI 僕は最近「You're the reason 」が好きだな。KUMIのライムでずっと、バンドもセッションみたいな感じで進んでいくのが、サビでガラッと変わる。KUMIの声色とか、<I am alive>ってちょっとしゃがれた感じとか、KUMIの声色がそのままサウンドになってサビになっているようですごく好きですね。

―― 「Youʼre the reason」は、<Alright 想像じゃ足りない 君のその journey>からの一連のワクワクするフレーズ、きっと歌詞を楽しんで書かれたんじゃないかなぁと想像していました。

KUMI ふふ。ちょっとファンタジー。想像の世界というかね。

―― <ペパロニカーペット>なんてワード出てこないですよ。

KUMI あは! これはNAOKIだよね? この曲を書いているときに私が、「そうだ、これは子ども目線の歌詞にしよう」って言ってたら、「あ!それ楽しいよ!」っていきなり乗ってきて。で、童心に帰ったら<ペパロニカーペット>とか出てきたらしい。

NAOKI そうそう、子どもの世界なのよ。

KUMI ペパロニは響きだけでしょ?

NAOKI うん(笑)。この曲って恋愛のようにも取れるけど、KUMIが母親になったというのもあって、子どもとの間のやり取りというか、そういう意味合いもあるんじゃないかなってね。

―― なるほど! その解釈からこの鮮やかなフレーズたちが出てきたんですね。

KUMI 5歳までの子どもの世界ってこんな感じじゃないですか。夢か本当かわからなかったり。空が紫に見えたりさ。ビスケットが本当に宝物に見えたり。子ども心を思い出すね、この曲は。

―― おふたりは歌詞を書くとき、どういったところにおもしろさや楽しさを感じます?

KUMI やっぱり童心に帰ったのは楽しかったよね(笑)。

NAOKI 「ペパロニって何だよ!」とか言ってね。

KUMI こういう遊びも楽しい。あと、私はメロディーを頭に浮かべながら歌詞を書いているんですけど、実際に歌ってみて、気持ちよくハマったら嬉しい。「Youʼre the reason」のサビもそうだったよね。「わりとスカスカになっちゃうかな?」と思いながら歌ってみたら、「あ、これが逆にいいかも」ってね。

NAOKI 自分たちのスタジオがあるので、ちょっと出来上がってきたら、「OK。じゃあこの1番だけブース入って歌ってくるわ」みたいな感じもよくあるんだよね。

KUMI そうだね。紙上で書いて完成させるというよりも、実際に歌ってみてどう響くか、わりと細かくやる。「乗ってるならいいじゃん!」みたいなところもあって、そのほうが答え出るのが早いときもあるんだよね。

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