もうやんなっちゃうよな 聴き流してウォーアイニー
もうやんなっちゃうよな パッと石投げてさ サッと隠れるモンスター
もうやんなっちゃうよな やんなっちゃうよな やんなっちゃうよなもっと歌詞を見る
―― 前作アルバム『アドナイン』のリリースタイミングで、歌ネットの『言葉の達人』にもご登場いただきました。ご自身の初作詞は、中2の秋に書いた「人間みんな生きている」という楽曲なんですよね。
そうそう! うわ、俺そんな赤裸々なことまで書いていたんだ(笑)。急に恥ずかしい。
―― それは「歌詞と曲が同時に浮かんできた」そうですが、それ以前にポエムのようなものも書いていたのでしょうか。
書いていました。たしかね…「いかに大きく見せようかより、いかに大きくなろうかを考えてみせる」とか。
―― すでにナオトさんらしい。
ですよね。今、パッと思い出しました。見栄や虚勢を張る暇があったら、自分が大きくなるための時間を割きたい。それは今でも大きな指針になっていて、当時の自分に対して、「お前、気づくの早いな!」って言ってやりたいです(笑)。
―― そういうナオトさんなりの思想や言葉は、どのように培われてきたのでしょうか。
なんだろうね…。そんなにたくさん本を読むひとでも、映画を観るひとでもないし。だから他者とのコミュニケーションのなかでかな。子どもの頃から。相手の言葉にすごく敏感なのかもしれない。
日常的に言葉をメモするようにはしているんだけど、それもやっぱり誰かと話しているときが多いんですよ。「それおもしろいね」とか「俺って実はこう思っていたんだ」とか、発見するたびに「あ、ちょっと待って!」ってバーッとメモする。ひととのなかで生まれることが多いねぇ。
―― たしかに、初作品の「人間みんな生きている」然り、ナオトさんの楽曲にはいつも“ひと”を濃く感じます。
よく考えるとそうだね。中2なんてとくに人間関係モヤモヤしていそうだし。だから僕は基本的に、どこかに自分自身がない曲は難しいんだろうなと思います。たまには空想の物語を書くこともあるけど…。結局、自分が他者との関係で得てきた感情や体験を落とし込んでいる。とくに男性ソロアーティストってそういう背景が大事な気もするし、それしかできないのもありますね。
―― 歌詞面で“ナオト・インティライミ”らしさが確立されてきたタイミングなどはありますか?
確立はされてないかなぁ。今でもずっと勉強だと思っているから。ただ…、苦しいけれどちょっと作詞を楽しめるようになったのは最近ですね。
―― 最近ですか!
うん、前回の『アドナイン』とか今回の『ファンタジスタ』ぐらいから。今まで「苦しい」が先行していたけれど、「楽しい」のパーセンテージがちょっとだけ上がった。言葉を残せるって素敵、という思いがここ1、2年でより強くなっている気がしますね。
―― どうして「楽しい」が増してきたのでしょう。
…わからない。年齢なのかなぁ。やっぱり自分の場合、歌詞に苦戦しているんですよ。いつも魂を削りながら書くような感じで。表現が乏しいんでしょうね。なんとなく「こんなことを言いたい」という思いはあるのに、うまい表現が見つからない。それが苦しいね。何か見つかったとしても、「もっといい言葉があるんじゃないか」と思うし。だから本当のキラーフレーズが出てきたときには、ガッツポーズが出ます。
―― 言語化するなら“ナオト・インティライミらしい歌詞”とはどんなものだと思いますか?
いわゆる遊び多めソングはすごく好き。そういう曲での言葉のユニークさはひとつの個性だと思います。あと、ラブソングにおける実直な主人公像、とかも俺らしいかもしれませんね。
―― また、ナオトさんは世界中を旅されていますが、そこで生まれる歌詞はきっとまた違ってきますよね。
そう、海外の場合はまったく違って。たとえばこの前、コロンビアのソングライティング・キャンプに作家として行きまして。40、50人ぐらい集まって、4日間でものすごい数の曲を創り、ラテンアーティストに提供するということをやってきたんです。そのなかで俺は、「ほとんどスペイン語の曲なんだけど、そこにスペイン語っぽい日本語を乗せたいな」と思いついたんです。そういうおもしろいアプローチを今、研究中なんです。
―― スペイン語っぽい日本語を乗せる。
スペイン語圏のラテンマーケット向けの曲なので、ベースはスペイン語。そこにどうユニークな日本語を乗せるかという挑戦ですね。向こうの方も、スペイン語で歌っている楽曲のサビ頭に「こんにちは」を入れるだけで、すごく盛り上がってくれるんですよ。すべて日本語で歌ってもいいのかもしれないけど、意味が伝わらないからあまり届かないでしょう。だから絶妙なポイントを探して、必ず1~3フレーズは日本語を挟んでいるんです。
―― それはおもしろい挑戦ですね。
うん。僕がラテンで挑戦しているというアイデンティティーを表現することって大事だなと。そうじゃないとやる意味がない。もうすでにラテンマーケットでは多くのラテンスターたちがいるわけで。それでもラテンでヒット出して、グローバルなアーティストになりたい。だからどう戦うか、どう挑んでいくかを考えるんです。
―― ほとんどスペイン語の歌詞のなかに、ポッと日本語があると自然に意味も伝わりそうな気がします。
そうなんだよ。あとね、実はスペイン語ってとっても日本語と相性がよくて。英語よりもずっと日本人に向いていると思っているんです。だから作詞は意外とスムーズだったりする。でも、他にそれをやっているアーティストはいないし、自分がやりたいのはそういう新しい音楽を作ることだなって。大変だけど楽しいです。
もちろんJ-POPも世界のなかでは大きな存在。だけど、J-POPをそのまま持っていっても、なかなか難しいということはいろんなマーケティングからもうわかっていて。それだと踊れないというか。海外仕様ではない。だから6割はラテンのマナーに則って、残りの4割で自分のアイデンティティー、J-POPのメロディーや世界観、和楽器や和の音階を入れようと。それが成功に繋がるかなと思っています。
さらに、俺は世界82カ国を旅してきた経験があり、世界の音楽と文化を体感してきた旅人でもある。それらが自分の最大の強みだなと思っています。海外で戦う上でのバランスを、研究・挑戦しながら曲を創り続けていますよ。これは「ナオト・インティライミ」ではなく海外での名義「Naoto」として。簡単ではないかもしれないけれど、世界相手に頑張りたい。最初で最後の人生かけた大きな戦いというか。かましたいよね(笑)。
―― そういう海外での挑戦があるからこそ、作詞の「楽しい」パーセンテージが増えてきたのかもしれませんね。
あ、そうだわ! その可能性が非常に高い。まさに今回『ファンタジスタ』を作っていて楽しかったのは、世界に挑戦すればするほどJ-POPが恋しくなったからだと思います。だってマネージャーも誰もいない状態で、ずっとスペイン語か英語で喋り、スペイン語で歌い、ってひとりで戦っていたわけで。でもやっぱり自分の半分はJ-POPでできているじゃないですか。ずっと洋食ばかり食べていたら、肉じゃがとか食べたくなるみたいな(笑)。
だから『ファンタジスタ』はそんなJ-POP愛が溢れ、血が爆発したものという感じがあるね。1曲目の「Funky Music」なんてもう、異国の奥の田舎で、英語も喋れないようなローカルミュージシャンたちと3~4日ずっと一緒にいるとき、日本語の歌詞を書いていましたから。どこかで曲が自分の喋り相手でもあったんだろうね。