きっとどんな状況でも、命あることはとても美しい。

―― 新曲についてお伺いします。タイトルの「ヴィヴァーチェ」とは、イタリア語で「速く」「活き活きとした」といった意味を持つ言葉だそうですね。これはどのようにたどり着いた言葉なのでしょうか。

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この曲は、カナデビア株式会社さんの企業ブランドCMイメージソングです。そのテーマとして、新しい船出、希望、奏でる、というワードが提示されていました。そして「奏でる」から何か音楽用語で良いものはないか? という取っ掛かりから「ヴィヴァーチェ」が出てきました。

―― 晴一さんの楽曲が届いた際の第一印象はいかがでしたか。

色彩の豊かな華やかさと気持ちが駆け上がっていくイメージが湧きました。

―― 昭仁さんご自身は、「ヴィヴァーチェ」の歌詞をどんなマインドで描かれましたか?

華やかに、心臓の鼓動が脈打つイメージがありました。曲を聴いてくれた方が、新たなマインドに移り行くような力強い楽曲になればいいなと思い、サビの1行目<キミ自身で心躍る音を鳴らせ>というフレーズが生まれてきました。

―― まず、冒頭の<パントマイムの壁の中に 囚われたのはキミ>というフレーズが印象的です。何かに囚われ、抜け出せなくなっている窮屈そうな<キミ>の像はどのように誕生したのでしょうか。

自分自身も含め、今の世の中は、誰しも他者から見張られているような感覚に陥ることがあるのではないでしょうか。その感覚に囚われて、動く範囲が狭まったり、気持ちが萎縮したり、という状況が多いと思います。“抜け出したい”という思いを持った方もたくさんいらっしゃるのではないかと思い、この<キミ>が生まれました。

―― <抜け出す術>のヒントとして描かれている、<キミの立ち位置を少しズラしてみたら 目の前は広くなるでしょう>というフレーズにはとくにパワーをいただきました。誰しも、立ち位置を少しズラすことにさえ抵抗感がある気がするけれど、その一歩で変わる景色は意外と大きいのかもしれないなと。

僕が“一歩で変わる景色”というのを経験したのは、2011年のつま恋で行われた自身のライブです。震災後の復興を願う意味でも開催されたライブだったので、必要以上に重く捉えていた自分がいて、ステージに出る前までとてもとても緊張していました。でもステージ裏から1歩、お客さんの見える場所に移動した瞬間、お客さんがいつもと変わらず楽しみに待っている姿を見て、一気にその緊張が解けました。

―― 「ヴィヴァーチェ」で、とくに書けてよかったと思うフレーズを教えてください。

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最後の<キミの奏でる旋律があゝ美しい>というフレーズが出てきたとき、結局僕が言いたかったのはこれなんだと納得することができました。もがいていようが、停滞していようが、きっとどんな状況でも、命あることはとても美しいと思えるからです。

―― とくに好きな言葉、作詞の際によく使う言葉はありますか?


気がつけば、「奏でる」という言葉を多用しているような気がします。その理由は分かりません笑。

―― 歌詞を書くときにいちばん大切にしていることは何ですか?

自分が歌うときに、自分自身の体温が上がるような歌詞になることを意識しています。

―― 昭仁さんにとって歌詞とはどんな存在のものですか?

歌詞は僕にとっていつもいつもチャレンジです。考えてみると、自分の音楽の原体験のなかで、歌詞に魅了されて好きになったアーティストはほとんどいません。生業としてミュージシャンをやるようになり、歌詞を手がけるようになったので、そういった意味でチャレンジが続いています。


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