LIVE REPORT

泉 彩世子 ライブレポート

泉 彩世子

『脳内ジュークボックス』

2016年02月06日@渋谷7thFLOOR

取材:土内 昇

2016.02.07

本誌&WEBで執筆中の連載のタイトルを掲げたワンマンライヴ。となれば、連載にちなんで、セットリストもカバー曲中心となることは想像に容易い。会場の壁面にはプロジェクターで、連載で使用されていたイラストがスライド形式で映し出されていた。しかし、ワンマンライヴとはいえ、すこし趣が違う...というか、本人も“今日のライヴはゆる~く、家におるような気分で聴いていただければ”と言ってたように、アットホームでリラックスした雰囲気が会場にあった。

ライヴの幕開けを告げたのは、アコースティックギターをバックに歌った井上陽水の「氷の世界」。もちろん、壁面には「氷の世界」の回の時のイラストが映し出される。オープニングからスリリングなナンバーで緊張感を誘うと、フェイクも交えながら、力強い歌声で観客を飲み込んでいく。そして、パーカッション、ピアノ&鍵盤ハーモニカが加わり山崎まさよしの「セロリ」が披露されると、今度は紡がれるサウンドの中を泳ぐように心地良さそうに歌い、それに呼応するように客席からはクラップが自然発生した。続く、桑田佳祐の「貧乏ブルース」は、そのタイトル通りブルージーでありつつ、どこか昭和歌謡の香りを持つナンバー。ここでも艶やかで芳醇で、パンチも愛嬌もある彼女の歌声が、その威力を発揮し、観客を魅了する。

その後も連載で紹介した野狐禅の「カモメ」をはじめ、SNSで募ったリクエストに応えて「恋するフォーチュンクッキー」(AKB48)や「悲しい色やね」(上田正樹)も披露。さまざまな色であり、深みを持つ楽曲に自分の色を加えて、原曲の持つ世界を彩る。それは単純に原曲を自分の色に染めて、自分のものにするというよりも、その曲を歌うことを純粋に楽しんでいるようだった。それはまるで歌うことで自分を解放しているようで、そんな彼女を見て、歌声を聴いて、悪い意味ではなく“やはりこの人は歌がないと、歌っていないとダメな人だ”と思ったのは僕だけではないはずだ。

それが如実に感じられたのが、“この曲に私の想いを乗せて歌いたいと思います”と言葉を添えて歌い上げたフラワーカンパニーズの「深夜高速」。《生きててよかった そんな夜を探している》と切々と歌うサビに心が鷲掴みにされたし、熱唱...いや、力唱したエンディングには彼女がこれまで歩んできた音楽人生のドラマも投影されているように感じられ、凄まじく感動した。まさに鳥肌モノだった。

しかし、アンコールのステージで、すでにTwitterやブログでも告知していたが、2月いっぱいをもってしばらくライヴを休み、SNSも停止することを報告。それは次にステップで向かうためであり、決してネガティブなものではないとも説明。寂しくなる告知ではあったが、“歌がないとダメな人”だということが伝わるアクトを繰り広げた後だったこともあってか、彼女の決意を客席が温かく受け止めていたのも印象的だった。

“これからもずっとずっと歌っていける人間を目指して頑張りたいと思います”。そう宣言し、オーラスはオリジナル曲「愛の詩」。会場中が大合唱するというハートフルなムードの中、その声を聞きに回るかように客席に降り、ぐるりとフロアーを一周回った泉。この日最高の笑顔がそこにあったことは言うまでもないだろう。

3月から新たなことに挑戦するという彼女。やりたいと思うことに出会ったというのは素晴らしいことなので、その門出を祝いたいし、応援したいし、待ち続けたいと思う。“十年後は今の自分と違う自分になりたい”と歌い続けているだけに、次のフェーズに進んだ彼女の姿が、歌声が今から楽しみだ。
この歌手の歌詞一覧 この歌手の動画一覧

SET LIST 曲名をクリックすると歌詞が表示されます。試聴はライブ音源ではありません。

  1. 1

    氷の世界/井上陽水

  2. 2

    セロリ/山崎まさよし

  3. 3

    貧乏ブルース/桑田佳祐

  4. 4

    カモメ/野狐禅

  5. 5

    恋するフォーチュンクッキー/AKB48

  6. 6

    他人の関係/金井克子

  7. 7

    悲しい色やね/上田正樹

  8. 8

    カス

  9. 9

    オレンジとペッパーを纏う男

  10. 10

    丸の内サディスティック/椎名林檎

  11. 11

    深夜高速/フラワーカンパニーズ

  12. <ENCORE>

  13. 12

    笑えれば/ウルフルズ

  14. 13

    いつものMusic

  15. 14

    愛の詩

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