デビュー30周年記念アルバム『LITTLE PIANO PLUS』のレコ発は、ファンの企画が叶って野外ライヴとなった。1曲目は「ハロー、ハロー」。新居昭乃がピアノを奏で、歌い出すと、その場の空気がゆっくりと変わり始める。それは意識が日常から切り離される感覚だ。そこにカルテットとアコースティックギターの音色が加わると、厚みや広がりはもちろん、温もりも音像に帯びていく。その後もピアノ&エレキギター、ピアノ&バイオリン、ピアノの弾き語り...と編成を変え、物語を読み聞かせるような淡くやさしい歌声を彩りながら、一枚の絵をそれぞれが持つ音色で塗っていくように楽曲の世界を描いていった。プロジェクションマッピングが視覚的にも幻想的な空間を作り出していたのも特筆すべきところだろう。時間の流れが、ここ、水上音楽堂だけ違っていた。