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never young beach ライヴレポート

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【never young beach ライヴレポート】 『never young beach HALL TOUR 2019“STORY”』 2019年5月29日 at NHKホール

2019年05月29日@NHKホール

撮影:鳥居洋介/取材:池田スカオ和宏

2019.06.03

改めて新生never young beachが感じ取れ、今後のライヴの意義と、ホールでのライヴの在り方にますます期待が持てる一夜であった。5月29日のNHKホール公演をもって完遂となる初の全国ホールツアー『never young beach HALL TOUR 2019 “STORY”』。同ツアーはニューアルバム『STORY』とともに全国6都市を回ったもので、その新作からの曲たちも数多く交え行なわれた。

場内に入るなり70年代辺りの近未来観へと誘われた。ステージバックには吸い込まれるような円と、その前方には“STORY”の電飾を提げたUFOが浮かび我々を受け入れた。新作アルバム『STORY』のラスト曲「Opening」がSE的に流れ、同曲同様ひとりずつがアナウンスされ、スポットライトの中、各人が現れる。さぁ、ショータイムの幕開けだ。

“『never young beach HALL TOUR 2019 “STORY”』、ファイナルだってよ~! 1曲目からクライマックスだ~!!”と安部勇磨(Vo&Gu)がシャウトし、1曲目の「STORY」が場内に広がっていく。ゆっくりと緩やかに誘われるようなスタートだ。2曲目の「どうでもいいけど」に入ると、いきなり銀テープのキャノンが満場に放射され、レインボーな照明演出の中、ライヴが流転。同曲では阿南智史(Gu)とこの日のサポートギターの山本幹宗によるツインリードも場内を魅了した。また、この日の山本はサポートとは思えないほど終始出ずっぱり。阿南の深いリバーブの効いたトロピカル性のあるギターに、アーシーさやブルージーさといったカウンターさを融合させ、上述のツインリードや中盤の「雨が降れば」などでの2本のギターによるユニゾンも楽しませてくれた。

MCでは“段差がなくなり並列になっちゃうぐらいを目指してやるから”と安部。そんな安部の鳴らす銅鑼から「Let's do fun」に入ると、ゲストの小林うてなのマリンバやスティールパン、ハタヤテツヤのホンキートンクあるいはラグタイムなピアノの融合も場内を供応し、新作同様にMegが随所コーラスを加味。それらによる、この季節に似合う「春を待って」、安堵感が寄与された「うつらない」が印象深い。ステージ上の満天の星空の中で歌われた「いつも雨」ではマリンバとコーラスがラストに向け情景をグワッと広げた。

対して、メンバーたちも負けてはいない。盛り上がり曲が連射された後半戦、巽 啓伍のベースがしなやかな躍動感を寄与した「どんな感じ?」、鈴木健人(Dr)による16ビートの躍動さが場内を引っ張っていった「なんかさ」では軽快さが場内に呼び込まれ、アウトロでは阿南、山本も向き合ってギタープレイを魅せる。そして、「明るい未来」では阿南が前面に出てギターをプレイ。「fam fam」では巽も負けじと前に出て、山本のギターソロも炸裂! バンド然とした面を魅せつける。派手なライティングの中、「お別れの歌」で本編を終え、彼らは一旦ステージを去った。

アンコールは目と耳を疑った。「SURELY」で阿南が歌い始めたからだ。途中までは彼がリードシング、最後は安部とのツインヴォーカルを楽しませてくれた。解放感と爽快感で場内を満たした同曲を経て、ラストは盛り上がり曲の2連発。銀テープ舞う中、安部がハンドマイクで「夏のドキドキ」を歌えば、トロピカル・ミーツ・アフロな躍動感が最高だった「Pink Jungle House」の常夏ナンバーの二連射が、これからの夏の到来へと思いを馳せさせると同時に、このツアーをしっくりと締め括った。

ライヴ全体としては素晴らしかった。とはいえ、個人的にはホールでのパフォーマンス、そして新作からうかがえる今後の方向性に際しての課題も垣間見れた。それこそ、もっと立ったり座ったりの展開できたのではないかと思っている。この日は後半、立て続けに定番曲たちが連射され、それはどれも大変盛り上がった。だけども、新作からうかがえるに、向かって行く方向はそこではない気がした。加えて言うと、その後半の盛り上がりの中に『STORY』からの曲を入れ込み、盛り上がりをキープ、もしくはさらに加速させていく光景も想像できなかった。新作はかなり作品性が高く、どちらかと言ったら鑑賞に威力を発揮する印象がある。いわゆるこのようなホール向きな作品となれば、なおのこと...と個人的に感じるところではありつつも、それ以上に本ツアーを経た彼らのホールでのライヴの向き合い方が楽しみにもなった。

撮影:鳥居洋介/取材:池田スカオ和宏

never young beach

ネバーヤングビーチ:2014年春に、安部と松島の宅録ユニットとして活動開始。14年8月に阿南、巽、鈴木が加入。15年5月にアルバム『YASHINOKI HOUSE』を発表し、同年7月に『FUJI ROCK FESTIVAL 2015』に出演。17年1月にアルバム『A GOOD TIME』でメジャーデビューを果たした。18年7月に松島が脱退し、19年5月に新体制でのアルバム『STORY』をリリース。