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ポップしなないで ライヴレポート

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【ポップしなないで ライヴレポート】 『「禁じられてはいない遊び」 レコ発ツアー"ヨルネコアルク"』 2019年9月22日 at 渋谷WWW

2019年09月22日@渋谷WWW

撮影:Kazuma Kobayashi/取材:池田スカオ和宏

2019.09.27

暗闇の中を手探りで進んできた結果、こんなにも素晴らしい景色へ辿り着いた――。満場の客席が確認できた際のかめがい(Key&Vo)とかわむら(Dr)は、そのような実感を得たのではないだろうか。

ポップしなないでが今夏発売のミニアルバム『禁じられてはいない遊び』を携えたツアーを渋谷WWWでのワンマンをもって見事大成功の上、完遂させた。そこではメンバー自身、これまで観ることのできなかった光景を目にしたとともに、集まった我々にもこれまで以上の景色を体感させてくれ、併せて今後の彼らへの可能性や楽しみへの期待値を大きく高めてくれた。

ドラムと鍵盤が “ハの字”を描くように機材が並ぶステージ。スポットライトがかめがいに当たり、叙情的な鍵盤とともにオープニングナンバー「言うとおり、神さま」のポエトリーリーディングが始まる。同曲の中盤からは、かわむらのドラムが生命力を寄与し、伸びやかなかめがいの歌声が場内いっぱいに広がっていく。

“渋谷WWW、ポップしなないで、お前らを救いにきたぜ!”とかめがい。これを機にライヴに弾みが加わる。タイトさとエモさの同居とメリハリのコントラストも特徴的な「フルーツサンドとポテサラ」が会場を引き上げていけば、「砂漠の惑星」の前のめりなドラミングがライヴを走り出させ、「不登校少年少女のエチュード」では抜き差しでドラマチック性が作られていくさまを目の当たりにした。

「ラムネ日記」以降は新作からの曲が続く。今夏を振り返らせ、まるでラムネを飲み干したかのような爽快感を同曲が与え、「バンジー!」では日本の祭り的な土着性と、かめがいの遊びのあるヴォーカルが会場を弾ませた。ラストに向けエモ度を上昇させ、最後はとてつもない高揚感へと場内を辿り着かせた。

かめがいが満場を見渡しながら“お客さんがひとりの時もあった”と、ここまでの道のりが決して平たんではなかったことを振り返り、続けてかわむらが“北海道の不良娘と三鷹の純朴少年”と自身を称し、その流れで「ヤンキーラブ」へ。そして、16ビート meetsエリック・サティな「初恋ラボ」をはじめ、恋を実感させる歌を連投。「救われ升」では前進するかのようなAメロBメロを抜けた開放的な場面でミラーボールが回り出し、会場から至福の手があがる。この光景に“救われます”とは、歌い終えたかめがい。さらに躍動感を有したブロックでは、「コトリズム」での時々現れるやるせなさを吹っ切るようなシャウトにも近いロングトーンが印象深く、対照的に「エレ樫」での《ま、いいか、大丈夫》というフレーズが自身に言い聞かせているかのように響いた。

中盤に入るとかわむらの“ワンマンならではで懐かしい曲でも”との言葉から、昭和歌謡的な雰囲気とかめがいの表情豊かな歌唱も聴きどころな「大正カゲキロマン」、途中から現れる8ビートに乗って恨みにも似た感情が告げられる「好きになったような気がしたんだ」が披露される。会場の雰囲気をパッと明るく変えるように“待ってました!”的な方も多かったと思しき「魔法使いのマキちゃん」では、キャッチーでポップなサウンド、キュートな歌、一緒に歌いたくなるフレーズが会場に一体感を育めば、かめがいの鍵盤ソロの間、かわむらが謎の徘徊。その行動が実は到来を指し示していたように、次曲「Life is walking」が披露され、前曲とは対照的にナイト感やウェットさ、不思議な浮遊感を場内いっぱいに漂わせた。また、巨大なミラーボールが回り、刹那さが会場に満ちる中、新作から「暗いね、ナハトムジーク」が歌われ、ダンサブルな「Creation」ではキックに合わせてライティングも明滅を繰り返す。

“ドラムとピアノと歌というシンプルなスタイルでやってきた。最悪な人生だからこそバンドをやっている。そんな曲”との紹介後、「おやすみシューゲイザー」が気持ちの良いサビのストレートさ伝えれば、かめがいが手拍子を促し、途中コール&レスポンスを成立させた「UFO Surf」では、その場内を引き連れて駆け抜けていくかのような音楽性とともに強固な一体感を作り上げる。

そして、ここからは初の試み。ギターの石井竜太、ベースのいけださきとの4人態勢にてラストスパートを迎えていく。再びプレイされた「言うとおり、神さまに」ではスモールクローン系の効いたノイジーなギターと躍動性のあるベースが、対照的に「ロケットダンサー」では躍動さやグルーブがフロアーを酔わせる。

“みんなが帰る時に少しでも前向きや上向きなってくれたら嬉しい。この暑かった夏を終わらせる曲”との言葉から本編の最後「2人のサマー」へ。“それでも私は恋をしているんだ”との実感とともに、この秋を受け入れ、また来年やって来る夏へと想いを馳せさせた。この曲はとにかくラストに向かっての怒涛さと生命力が宿ったプレイがすごかった。そんな各人の感情的な演奏が続く中、石井、いけだが順にステージを去り、間を空けかわむら、最後はかめがいのみが残り、そのかめがいも自身の役目を終えるが如く演奏後ステージを去った。

アンコールは“これからの自分たちを!”とでも言わんばかりに新作からの曲たちがふたりだけで贈られる。“少しでも明るい人生を歩めますように”と「ノストラ」が会場を引き連れるように走り出せば、刹那的な「丑三キャットウォーク」がミラーボールも回る中、このツアーを締め括った。とはいえ、ダブルアンコールにも応えてくれたメンバー。ここでは逆にあえて自分たちの出自やスタンスを改めて示すように、楽しげで弾んだ、それでいてひねくれた「早く帰りたい」を歌唱。“早く帰りたい”と歌ってはいるものの、心では会場ともども“この時間よどうか長く続いてくれ!”と願っていたに違いない。うーん、このひねくれもの。

...と、ポップしなないで単独としては最大規模にして最多曲数が演じられたライヴは大盛況のうちに終了した。個人的にはゲストプレイヤーを入れる段階としては時期尚早にして、まだまだふたりだけでやり通してもらいたかった思うところがあったし、ギターやベースを交えるのなら「ヤンキーラブ」や「おやすみシューゲイザー」のような曲のほうが映えたんじゃないかという想いも去来した。しかし、今は思う。自分たち以外の楽器の起用は、あえてメロデイー楽器というよりも躍動感を演出する類いのものであり、基本はやはりふたりだけの演奏と歌であったと。と同時に、逆に今後の伸びしろとさらなる可能性をうかがわせてくれた。

また、渋谷WWWの元シアターという段差があるフロアーの構造上、自分たちのお客さんが後方までいることが実感できた安心感に、これまで以上に“自分たちだけじゃない”との頼もしさを得たことだろう。我々側はこれまで以上に任されたり、委ねられている。そんな信頼感も終始感じられた。結果それがより良い相乗効果を生み、これまでスタンス的にあまり感じられなかった一丸性や連帯感へとつながっていったのは興味深い。“ポップしなないでがお前らを救いにきたぜ!”とはかめがいの本ライヴの第一声であったが、逆に終演後は“お前らに救われたぜ”といった気持ちになっていたのではないだろうか。

さらなる新しい武器やアイテムを手に入れた、ポップしなないで。彼らの夢は今後もぐんぐん膨らんでいく!

撮影:Kazuma Kobayashi/取材:池田スカオ和宏

ポップしなないで

ポップしなないで:2015年結成。かめがいの踊るようなラップでの心地良い2次元的声質と、ソウルフルなヴォーカルスタイルも駆使する癖の強い魅力的な声、加えてかわむらのソングライティングが相まって、ドラム、キーボード、ヴォーカルのミニマムな構成ながら完成された世界観の音楽性を持つ。

SET LIST 曲名をクリックすると歌詞が表示されます。試聴はライブ音源ではありません。

  1. 1

    1. 言うとおり、神さま

  2. 2

    2. フルーツサンドとポテサラ

  3. 3

    3. 砂漠の惑星

  4. 8

    8. 初恋ラボ

  5. 10

    10. コトリズム

  6. 12

    12. 大正カゲキロマン

  7. 19

    19. UFO Surf

  8. 20

    20. 言うとおり、神さま

  9. 21

    21. ロケットダンサー

  10. 23

    <ENCORE1>

  11. 26

    <ENCORE2>

  12. 27

    早く帰りたい

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