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Superfly ライヴレポート

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【Superfly ライヴレポート】 『Superfly Arena Tour 2019 “0”』2019年10月26日 at さいたまスーパーアリーナ

2019年10月26日@さいたまスーパーアリーナ

撮影:神藤 剛、カワベミサキ/取材:池田スカオ和宏

2019.12.10

17,046人、当ライヴの入場者数だ。この日Superflyの越智志帆は、まるで集まったひとりひとりに“よく来てくださいました”との感謝や喜びも込めるように、この人数を何度も口にした。それはきっと他ならぬ、ここで再び出会えたこと、そしてこんなにも大勢の前でまた歌うことができ、一緒にその時間を分かち合えた感謝のようにも響いた。

Superflyにとって最大規模の全国アリーナツアー『Superfly Arena Tour 2019 “0”』が12月8日の福岡・マリンメッセ福岡にて大盛況のうち幕を閉じた。アリーナツアーとしては実に3年半振り、全10都市15公演が行なわれた。そこではブランクを感じさせないどころか、その期間で吸収した新しい要素や発想、表現の仕方や更なるパワーアップなど、幾つもの“新しい彼女”と出会えた。以下はその中間点のさいたまスーパーアリーナ2デイズの前半日のドキュメントだ。

SEとともにコンテンポラリーダンサーがひとり、ステージ上段に現れる。SEに合わせて舞うように踊るそのさまを観終えると、ステージセンターにピンスポットが当たり、その先にいたのは虹色のロングドレス姿の志帆。まずは「Ambitious」での歌声が優雅なサウンドに乗り、場内にゆっくりと広がっていく。《明日に行かなくちゃ 憧れは手放さないまま 格好いい私になれ》のフレーズとともに、夢や憧れに向けてライヴが大らかに出航する。ノンストップでアーシーな「Wildflower」に入ると合わせて会場も走り出し、ここでは彼女のハイトーンが冴え、やはりこのようなアリーナでは特に映えることを実感した。続く「やさしい気持ちで」ではパッとした光が呼び込まれ、それはまるで歌われる《輝いて生きていこう もう一度、やさしい気持ちで》と同様な心持ちにさせてくれた。

“(会場を見回して)人が山肌のよう(笑)。今日は1月リリースのアルバムから先行して曲も披露するし、これまでの曲もやっていきます”とMCを入れたあと、「Gifts」ではバックのビジョンに日常を切り取ったかのような映像と手書きの手紙風に書かれた歌詞が映し出されていく中、歌と一緒に凛としたバイオリンの音色もその感動を拡散していけば、「Beautiful」では会場に生命力とバイタリティーが寄与され、そこはかとないエターナル感が味わえた。

続くMCでは会場とのレスポンスを経て、“球場で野球を観ているみたい”と久々の同会場でのリアクションの感触を伝え、加えて来年1月15日に発売されるニューアルバム『0』についても言及。“ゼロとは心の状態がプラスでもなくマイナスでもなく地平線のようにフラットに広がっている心持ちのこと”と語り、3年前の休養中に自身がゼロに戻っていく感覚を覚え、そこから逆に歌を歌いたい欲求やワクワクする気持ちが心の底から沸いてきた的なことを教えてくれた。そんな中、“ジャズに興味を持ち、レコーディングの時にもその要素が表れ出した”とのことで、ここからの「恋する瞳は美しい」「Fall」はゴージャスなビッグバンド風にリアレンジされた曲たちが届けられる。バーレスクな雰囲気だったり、スイングやラグタイムなムードに会場を浸し、志帆も歌い崩しを交え自由に伸びやかに歌を拡大していく。

中間部では哀しみを宿しながらも華麗に泳ぎ回るバイオリンとミニマルな鍵盤、そして幻想的な映像によるインスト曲が場面の転換の役を担った。終盤にはノースリーブに着替えた志帆がピアノ伴奏に合わせて「My Best Of My Life」をしっとりと歌い始め、クライマックスのアウトロではコンテンポラリーダンサーもランウェイで舞い、その先にはセンターステージが待っていた。続く「氷に閉じこめて」の際には、そのセンターステージにて4人のダンサーによるシアトリカルなダンスが。無数のワイヤーがLEDを操るメリーゴーランドを模した籠の中、歌世界を身体で表現してくれた。

そして、そのセンターステージに志帆も移動するとピンスポットの中、初期のナンバー「I Remember」をアカペラで披露。歌い終えた志帆は“アカペラで歌うって緊張しますね。ライヴで1曲フルでアカペラで歌うのは初めて。この曲は音楽をやりたいと決心した際にできた、その時のお守りのような曲。何も持たないゼロのような気持ちになれた今に相応しいと思い、今回歌った”と同曲を振り返る。さらにセンターステージよりニューアルバムからひと足早く、“推薦文を寄せた本を読み、沸いた気持ちを歌にしてみた”という「Lilyの祈り」を歌唱。歌がバンドサウンドと同期化し昇華を見せ、長いアウトロがダイナミズムを場内に寄与していく様子が印象深かった。

場は再びメインステージへ。バンドによる幻想的なセッションと、そこに乗せたコーラスが生命力たっぷりの歌声で魂を震わせ、場内をグイグイと惹き込んでいった。そして、それを経た後半戦が凄かった。妖艶さと幻想さ、神秘さがあふれる「覚醒」がビジョンとライティングの一体化で視覚に訴えれば、「タマシイレボリューション」がまるでミュージックモンスターのように会場を飲み込みにかかる。対して、会場を巨大なクラブに変え場内をディスコ化させた「Dancing On The Fire」、会場中に雄々しい呼応を生んだ「愛をからだに吹き込んで」に於いては場内に力強い無数の拳を天に突き上げさせると、「Good-bye」ではちょっとした安らぎのような安堵感を与え、志帆越智の広げたその両腕いっぱいに場内を包み込んでくれるような感触が味わえた。ラストはド派手なロックンロールナンバー「99」が観客を楽しそうに踊らせ、《ギリギリで 人は生まれ変われるの》《価値なんてゼロだっていい》など、来るべく次のアルバムへとしっかりとつながらせていく光景を観た。

アンコールは3曲。それらは各々歴史を辿るような歌たちであった。日曜の朝のきれいな空気や光に包まれていくような「サンディ」、たくさんの愛の込もった気持ちの花束が大合唱と化して、場内にそしてステージに向けて贈られた「愛をこめて花束を」、“今回、3年半振りになったけど、また遊びに来てくれますか? ドラマの主人公を応援するような気持ちで描きました。では、最後にこの曲を”と牧歌的な「フレア」が会場のクラップとともに弾んだ気持ちを与えてくれ、軽い気持ちにさせてくれた。同曲の終盤では天井からラブレターのような無数の赤い風船が舞い降り、まるで風船に包まれているかのよう感覚でもあった。

“さいたまスーパーアリーナで歌っている、あの感じを徐々に想い出してきたライヴだった”と途中のMCで語った志帆。私もそんな同様の感受を終始この日のライヴには抱いていた。序盤は手探りながらも感触を想い出し、感覚を取り戻し、あるタイミングにて、“そう、これだよ! これこれ!!”的なスイートスポットを見付け、最後はとてつもない大団円へと辿り着かせる。そんなストーリーがうかがえた。

すでに2020年1月15日にはニューアルバム『0』の発売も決定している彼女。この日のライヴを観る限り、期待を裏切らず、新しい要素も詰まった作品になっていることだろう。ニューアルバムのリリースからスタートする2020年の充実した活動が目に浮かぶ。それは募らせた待望の分、さらに伸びゆくものになること必至だ。早くも彼女の2020年の大活躍が楽しみで仕方ない。

撮影:神藤 剛、カワベミサキ/取材:池田スカオ和宏

Superfly

スーパーフライ:2004年結成。07年にシングル「ハロー・ハロー」でデビュー。08年に1stアルバム『Superfly』をリリースすると、2週連続1位を記録! その後も連続アルバムランキング1位と大ヒットを記録中。志帆の圧倒的なヴォーカル、ライヴパフォーマンス、そしてオリジナリティーあふれる独自の音楽性から、現在もっとも注目を集めているアーティストのひとりだと言えるだろう。

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