LIVE REPORT

嘘とカメレオン ライヴレポート

嘘とカメレオン ライヴレポート

【嘘とカメレオン ライヴレポート】『2MAN TOUR -へのへのもへじ-』 2020年2月16日 at 渋谷CLUB QUATTRO

2020年02月16日@渋谷CLUB QUATTRO

撮影:寒川大輔/取材:池田スカオ和宏

2020.02.19

嘘とカメレオンとPENGUIN RESEARCH、当日のライヴMC中に各々のバンドが何度か触れていた通り、実は2バンドはこの日が初共演にして初対面であった。とはいえ、観ている最中はそんなことは微塵にも感じず。ややをもすれば2バンドとも以前より仲が良く、よく共演し、お客さんも双方の理解者たちが集った...そんな錯覚すらおぼえたぐらいだ。それほどまでに双バンドは互いに昇華し合い、己を最大限に出しながらも、相手方のファンをも魅了。嘘とカメレオンの渡辺壮亮(Gu&Cho)がライヴ中のMCにて目指したところの“両方のバンドも両方のファンも全てがWINでハッピーになる全員優勝”となったと言える。

この日の渋谷CLUB QUATTROでの大成功をもって幕を閉じた『2MAN TOUR -へのへのもへじ-』。このツアーは東名阪にて2マンスタイルで行なわれたもので、大阪ではネクライトーキー、名古屋ではバンドごっこを迎え、共演3バンド中2バンドが対バンとして初共演だったと聞く。“2マン”となると、お客さんもガチにどちらか片方のファンだし、しかも初顔合わせ。そんな中、上手く一緒に素晴らしい空間を作れるのかとの不安も交え会場に赴くも、結果、そんな心配どこ吹く風。完全に双方で良い一夜を育んでいったのも印象深い。また、このツアーは各箇所そのような雰囲気であったとも後ほど聞いた。

まずはPENGUIN RESEARCHがステージに現れた。嘘とカメレオンの渋江アサヒ(Ba)がライヴ映像を観て気に入り、今回の共演が実現したという。彼らの魅力はエモーショナルな歌声と泥臭い歌世界。呼応面も多く会場を巻き込み一緒に育んでいける箇所が多いのもポイントだ。それを示すように、彼らへの初見者が多い中、きっちりと一緒に歌い、がっちりと一体感を生み出す様は頼もしいものがあった。

“嘘とカメレオンとは今日が初対面。なのに、自身の大事なレコ発ツアーのファイナルに呼んでくれた。嬉しいけど、すげぇ勇気だなと。俺たちがそれに報いるには精いっぱい自分たちのライヴをただ一生懸命やることだけ!”と生田鷹司(Vo)が満場に告げ、レイブ性とファンキーさを有した躍動感あふれる「嘘まみれの街で」にてライヴは口火を切った。のっけから会場全体をバウンスさせると、堀江晶太(Ba)と新保恵大(Dr)が作り出すグルーブが場内に一体感を育み、“お前らとなら何だってできそうだ”との歌に込めたメッセージが場内を吸心していく。また、ライヴをさらに駆け出させた「敗者復活戦自由形」ではハーモナイズドを活かした神田ジョン(Gu)のギターソロも印象的だった。

初顔合わせだったことに言及し、“同じステージに立ったのならもう仲間。これからも長く続いていく素敵な付き合い、この日が最初になってくれたら嬉しい”と生田。柴﨑洋輔(Key)による琴線に触れる鍵盤音も加わり、ちょっとした切なさとセンチメントを振り払うような疾走感に乗せて放った「ボタン」、エレガントさとナイト感を降り交えたシティポップな「ハートビートスナップ」、会場の雄々しいコーラスを助力にドライブ感を交えて再び会場を走り出させていった「スーパースター」も想い出深い。

“自分らはミュージシャンだから、この日の感謝を音楽に乗せて放つ。しっかりと受け止めてくれ!”と「boyhood」が会場の気持ちを乗せて駆け出し、情熱的に各々を自由に踊らせた「シニバショダンス」、歌謡さと激しさが同居した「近日公開第二章」が観客をさらに巻き込めば、“最後はどっちがうるさいか、熱苦しいか、勝負しようぜ”とラストの「決闘」では新保のツインペダルが地響きを立て、“一歩も引かない!”とばかりに会場も一緒に駆け抜け、ともに歌った。

続いては嘘とカメレオン。SEが轟き、青ステージに渡辺、菅野悠太(Gu)、渋江、青山拓心(Dr)が順に現れ、各位感謝の意をセンターのステップ上にて表す。最後に登場したチャム(.△)(Vo)が満場に向け深いお辞儀すると、ギターのフィードバック音に乗せ、“いっちょおっぱじめようか!”と渡辺。ガツンとしたバンド一丸となったデモンストレーション音がフロアーを強襲してくる。そのまま1曲目の最新配信曲「0」へダイブ。サビのストレートさともども会場をここから先へと連れて行かんとばかりにライヴが走り出す。ノンストップでニューシングル収録の「binary」に入ると、同曲独特の3拍子感に加え、運指の多い渋江のベースが場内に躍動感を寄与。電光石火で「フェイトンに告ぐ」に入ると、彼らの面目躍如とも言える幾何学面とポップさの同居といった独特の世界観が広がっていった。

最初のMC。まずは恒例の渡辺がステージドリンクのコーラ1.5リットルの口を開ける際の音にフロアー中が耳を集中させる。プシュッ!と今日もとてもいい音が聞けた(笑)。続けて渡辺が“今日はPENGUIN RESEARCHのお客さんにも俺たちのお客さんにも双方勝ってもらいたい。ならば、本日の目標は全員優勝だ!”と告げ、一体感ではPENGUIN RESEARCHに負けちゃいないとばかりに渡辺がリードシンガーを務める「JOHN DOE」を投下。同曲ではみんなで“アン・ドゥ・トロワ”と叫び、青山が駆使する4つ打ち&ハネるリズムが会場を踊らせた「鳴る鱗」では巨大ミラーボールも回り出し、刹那と不思議な至福感に浸らせてくれた。また、同曲は中盤からの一変も特色。作品同様まるで違う曲へとザッピングされたのかと疑うばかりの神秘的な楽曲のインサートも特筆すべきところ。そして、渋江の超絶ベースから「輝夜華ぐ夜」に入ると、彼らの激しさと多展開、変拍子さと変態性が炸裂! 再びライブが流転していくさまを目撃した。

中盤はミディアムな曲たちが配されていた。「テトラポットニューウラシマ」が幻想的な世界観を広げれば、グルービーな「Lapis」では横ノリが会場をたゆたわせ、「アルカナ」ではその隙間を活かした演奏とともにチャム(.△)も歌声にファルセットも交え、丁寧に歌われる歌物語に会場中がその身を委ねた。“今日はこんなに人が集まってくれた。まるでイカめしみたい(笑)。今日は“初めまして”の良さがあり、自分も初見だったけど、お客さん同様に楽しめた。バンド同士は良いライヴやったあとは仲良くなれる。今日は仲良くなれる自信がある。だからこそ、今日はこうしてレコ発の対バンを自信を持って任せた。私も嘘とカメレオンを信じている。みんなも信じて自分たちに付いて来てほしい!”と力強く誘因するチャム(.△)。そして、冒頭の公約通りに全員優勝を目指しラストスパートへと突入していく。まずは会場をひとつにして走り抜けるべく、彼らの特有の魑魅魍魎と奇譚的な歌世界が激しいくもポップなサウンドに乗せて「百鬼夜行」が贈られると、「されど奇術師は賽を振る」ではこの日最高のエネルギーが放射される。本編最後は「モノノケ・イン・ザ・フィクション」。まさに全員優勝に導くが如く会場を駆け抜けていった。

アンコールのステージ...とその前に、先日告知開始の全国ワンマンツアーが改めてメンバーから告げられ、ニューアルバム『JUGEM』を4月8日に発売することも発表。オーラスはここ数年のライヴのラストを飾ってきた盛り上がりナンバー「盤下の詩人」が務め、会場全体を引き連れて全員優勝へと導くのだった。

“いい2マンとはお客さんもどっちのファンだったかさえ関係なくなる”ーーこれは嘘とカメレオンの渡辺が、この日のお客さんのライヴ中の満足そうな顔を見て、成功を確信し満場に告げた言葉だ。それが体現され、お客さん同士をはじめ、メンバー同士や双方のファンも魅了し合ったように映った、この日。彼らのライヴに於けるジャンルやカテゴリーなしに吸心し、巻き込み、惹き込む姿勢には頼もしさすら感じた。また、4月8日にはニューアルバム『JUGEM』がリリースされ、同作を携えた全国ワンマンツアーも控えている。そこでは今度はどのような吸心や巻き込み、惹き込みが成されていくのだろうか。その辺りも興味は募るばかりだ。2マンツアーが終わって早々だが、早くも私の心はその作品やそれを携えたステージでの嘘とカメレオンの雄姿へと想いを馳せている。

撮影:寒川大輔/取材:池田スカオ和宏

嘘とカメレオン

ウソトカメレオン:2014年4月1日に結成。16年12月にYouTubeにアップロードした初制作のミュージックビデオ「されど奇術師は賽を振る」が公開から半年あまりで再生回数が180万回を突破し(2020年1月現在では600万回突破)、17年9月にリリースした全国流通CD『予想は嘘よ』がオリコンインディーズチャート週間5位を獲得するなど注目を高める中、18年9月にアルバム『ヲトシアナ』でメジャーデビューを果たす。