LIVE REPORT

コレサワ ライヴレポート

コレサワ ライヴレポート

【コレサワ ライヴレポート】 『コレサワ LIVE TOUR 2021 愛を着て、会いに来て。』 2021年7月23日 at 中野サンプラザ

2021年07月23日@中野サンプラザ

撮影:小坂茂雄/取材:キャベトンコ

2021.07.28

2021年3月にアルバム『純愛クローゼット』をリリースしたシンガーソングライター、コレサワ。このアルバムを引っ提げて、4月10日の大阪・茨木JACK LIONを皮切りに全国20会場を回るツアーがスタート! 途中、新型コロナウイルス感染拡大防止のため延期を余儀なくされた公演もあったが、7月23日の中野サンプラザで無事にツアーファイナルを迎えた。

今回のツアーは各地を弾き語りで回り、最終日の東京公演のみがバンド編成。そんな1曲目は最新作の中から、たとえ自分がいなくなっても相手を思いやりたいと願う「あたしが死んでも」。コレサワは最新アルバムを作るにあたって“愛情”をテーマとし、温かいロマンチックなアルバムを作ろうと決めていたという。歌の主人公が強気な女の子といったところは変わらないが、主人公の気持ちにもうひとつ踏み込んで、やさしい本音のところも歌詞の中に入っている。その部分に『純愛クローゼット』というアルバムが持つ温かさが詰まっている印象を受けた。また、“良かったら、手拍子ください!”とオーディエンスに呼びかけてスタートした2曲目の「最後の彼女になりたかった」は、前作となるミニアルバム『失恋スクラップ』の楽曲であり、“別れてもあたしは幸せになる”という強い気持ちが全面に出ていて、ここで『純愛クローゼット』と『失恋スクラップ』の対比が垣間見れる。

今ツアーでは新型コロナの影響でオーディエンスは声が出せないため、客席の反応が分かりやすいようペンライトが使われていた。コレサワは客席のペンライトがきれいすぎて泣きそうになったと今の気持ち語る場面も。そんな中、好きな人とのリラックスした時間を描いた「バスタイム」はクライマックスでバンドメンバーがコーラスで加わって、曲の広がりを感じさせ、また声を出せるようになった暁にはオーディエンスも参加して楽曲の魅力がより深まっていくことを想像させる。

“次は楽しい曲です”と紹介されたのはアップテンポな「ミッドナイトをかけぬけて」。この曲の途中でひぐちけい(Gu)、なかむらしょーこ(Ba)、U(Dr)、西野恵未(Key)とバンドメンバーを紹介し、メンバーが“そして、ヴォーカル! コレちゃん!”とコールすると、コレサワはギターをかき鳴らしながら伸びやかなフェイクを入れる。そして、ライヴの定番曲「君のバンド」ではオーディエンスを楽しませるために振り付けを考えてきたというコレサワ。“まずは私がお手本を見せます!”と告げると、サビの《ちっともちっとも売れない》のところでリズムに合わせた手の振りを披露する。“ゴリゴリにダサいよ”とギターのひぐちけいに指摘されつつも、実際に客席が演奏に合わせてその振りをすると、これまで以上の一体感が! これにはひぐちけいも“すごい良かった。可愛いかったね”と思わず感服していた。

中盤には食事がモチーフの「いただきます」。ツアーの各会場で自分の食べた昼食のメニューを発表していたそうで、この日は魚弁当だったそう。そして、“ペンライトを持っている人は食べ物の曲なので、自分の好きな食べ物の色にしてほしいです”と提案し、色とりどりのペンライトに見守られる中、《全部守ってあげる》と包み込むように歌う。そのまま飼っていたうさぎが亡くなったことをきっかけとして作られた「Moon」が歌い届けられると、しっとりと幻想的なメロディーに導かれて、会場の集中力が高まっていく。

バンドセッションを挟み、衣装チェンジしたコレサワが再びステージに登場すると、ポップな「スーパーでデート」から3曲立て続けに演奏! これまでの可愛いらしい雰囲気とは一線を画したロックで、大人っぽいパフォーマンスを展開する。ここで“愛を着て、会いに来て”というツアータイトルの意味を語ったコレサワ。みんな普段いろいろな人からもらっている愛をまとって生きている。そのありのままの自分の姿で遊びに来てほしい...という想いを込めたとのことだった。そして、“今回のピアノで作ったいくつかあるので、弾いてみたいと思います”と中央に置かれたグランドピアノの前へ。ツアーはずっと弾き語りだったが、今日はバンドメンバーがいるから心強いと言いながらNHK『みんなのうた』に書き下ろした楽曲「愛を着て」を歌唱。無償の愛の歌詞をおだやかに歌うコレサワの姿が印象的だった。

“もうラストスパートになってしまいました。ぜひみなさん、もう一回、立ってみませんか?”と客席を煽ると、「あたしを彼女にしたいなら」と「SSW」を連続投下した終盤戦。オーディエンスはリズムに合わせて楽しく体を揺らしていて、声を出さなくても心を開放している様子が手に取って分かった。そして、コレサワは今回のツアー期間は新型コロナウイルスのこともあり、自分が感染してステージに立てなくなったらどうしようと、いつものライヴとは違ってドキドキしたことを率直に告げ、不安を抱えながらも会場へ足を運んでくれたオーディエンスに“本当に今日は来てくれてありがとうございます! “行って良かった”と思ってもらえたら嬉しいです”と感謝の想いを語る。前述の「愛を着て」でもメンバーがいて心強いと話していたが、例年とは違う環境の中、孤独と戦ってツアーを続けていたことが伝わってくるMCだった。また、ひとりで向き合ってきたからこそ、奏でる音も力強く、オーディエンスの気持ちを丸ごと受け止めているような懐の広さもあった。

来年の2月にコレサワ初のバレンタイン公演『コレサワ LIVE TOUR 2022 バレンタイン チョコっとツアー』を大阪と東京にて開催することを告知し終えると、いよいよ最後の曲、恋をしてふわふわした気持ちを綴ったミディアムテンポの「オシロスコープ」に。歌詞の中にオムライスが出てくることからペンライトをオムライスカラーであり幸せな色ということで黄色にして、ところどころケチャップの赤も欲しいと客席にお願いし、会場を黄色と赤にきれいに染め上げる。その声なき声援を受けて、コレサワのクリアーな声が会場いっぱいに広がった。

全メニューを歌い終えたコレサワは“みなさん、気をつけて帰ってください”と名残惜しそうに手を振り、最後の最後まで客席を気遣う。『純愛クローゼット』が愛情たっぷりなアルバムであるがゆえに終始、やさしい空気が漂っていたライヴだった。また、加えてコロナの中、最終公演以外はひとりで駆け抜けて、コレサワの強さにも磨きがかかったように感じる。このツアーが次の作品にどのような影響を及ぼすのか、今後に注目したい。

撮影:小坂茂雄/取材:キャベトンコ

コレサワ

コレサワ:大阪府摂津市出身のシンガーソングライター。2017年8月に1stフルアルバム『コレカラー』でメジャーデビュー。18年には2ndアルバム『コレでしょ』、20年1月にミニアルバム『失恋スクラップ』をリリースし、8月に1stシングル「憂鬱も愛して」を発売。中毒性のある声、ポップなメロディー、日常の風景を独自の視点で切り取った歌詞で同世代の女性を中心に支持されている。メディアには顔出しはせず、素顔が見れるのはライヴのみで、“れ子ちゃん”と言われるクマのキャラクターがビジュアルを担当する。