LIVE REPORT

愛はズボーン ライヴレポート

愛はズボーン ライヴレポート

【愛はズボーン ライヴレポート】 『"TECHNO BLUES" TOUR FINAL ONEMAN SHOW』 2021年8月19日 at 新代田FEVER

2021年08月19日@新代田FEVER

撮影:石崎祥子/取材:山口智男

2021.08.26

シーケンスのシンセサイザーの音色がキラキラと鳴る中、他の3人よりもひと足先にステージに出てきたGIMA☆KENTA(Vo&Gu)が、《ぼくらのために 他の誰のためでもなく》と朗々と歌い始め、ライヴは最新アルバム『TECHNO BLUES』収録の「ぼくらためにpart2」でスタート。そして、セッティングを終えた金城昌秀(Gu&Vo)、白井達也(Ba)、富永遼右(Dr)の演奏が、フィードバックノイズから金城のジャカジャーンと鳴らすギターを合図にGIMAの歌にぴったりと重なる! そんな心憎いオープニングにいきなり気持ちを持っていかれた。

“ウィー・アー・愛はズボーン! よろしく!”GIMAのかけ声とともに4人の演奏は一気に白熱。間髪入れずに金城がヴォーカルをとる「どれじんてえぜ」につなげ、全員でサビをシンガロング。それに対して“声を出せないなら”と拳を振り上げる観客に応えるように“オーケー、FEVER! ちょっとでも踊って帰りましょう!”(金城)とバンドが繰り出したのが、愛はズボーン流のテクノナンバー「I was born 10 years ago.」だ《ボン! ボン! ズボボーン! 愛はズボーン! SHOCK!》と、マイクを掴んだGIMAと金城が繰り返しながらグイグイと盛り上げる、ある意味の力業に観客も両手を振り、早くも大きな熱気がフロアーに渦巻き始めた。

序盤の3曲で手応えを掴んだのか、“久しぶりに東京でワンマン、マジでできて良かった”と金城が胸を撫で下ろす。愛はズボーンにとってワンマンは2年振りであり、このご時世を思えば、無事にライヴが開催できた喜びもひとしおだったに違いない。今年でバンドが10周年を迎えたことを、改めてGIMAが観客に伝えると、金城も感じるものがあったのか、ライヴの前日に配信された雨上がり決死隊の解散会見に言及。“32年やってきた雨上がり決死隊が解散するんだから、10年やってきた俺たちだって、人間関係だからどうなるか分からない。今、ここにいる人たちがライヴを観てくれることに感謝しています”と語ったのは、“ライヴは一期一会だからこそ一本一本全力で臨みたい”と伝えたかったんじゃないだろうかと思う。

“俺たちだってどうなるか分からない”なんて言われると、ちょっとドキッとしてしまうファンもいるかもしれない。しかし、シーケンスとバンドの演奏が嚙み合わなくて、「SORA」をやり直したにもかかわらず、ピリピリとせずに金城が“間違っても笑っていられる”と言える余裕があるんだから、愛はズボーンは大丈夫。その「SORA」では即興で“わけの分からんスポーツの祭典”と金城が今の世の中の理不尽に噛みつき、そこからノンストップでつなげた「ドコココ」ではGIMAが“俺は常に迷子でいたい。俺は前を向いていたい”と前進を宣言してみせる。

そして、“秋にトリビュートアルバム『I was born 10 years ago.~TRIBUTE〜』を出すって発表したじゃないですか。でも、みんなにひとつ黙っていたことがあります”と、GIMAがトリビュートアルバムの参加アーティスト10組の曲を愛はズボーンがカバーするアルバム『I was born 10 years ago.~COVER〜』も10月13日に同時リリースすることを発表した。“俺たちだってどうなるか分からない”なんてよく言ったもんだ。それだけ楽しいことが目白押しなんだから、“どうなるか分からない”なんてことがあるわけがないだろう。10曲のカバーバージョンは録り終えており、なんとその中からDENIMSの「LAST DANCE」のカバーを披露! 原曲が持つメロウな味わいを生かしながら、オルタナロックにアレンジしつつ、GIMAと金城が鳴かせたツインリードギターも印象に残った。

その後、ソウルフルなバラードと思わせ、カントリー調になる「もねの絵のよう」で観客の身体を揺らすと、後半戦は「BEAUTIFUL LIE」「READY GO」「adult swim」「MAJIMEチャンネル」と、ダンスナンバーの数々を人力テクノよろしくノンストップでたたみかけ、フロアーにダンスグルーブを巻き起こす。ディスコビートに合わせて《意味なんてないぜ 意味なんてない》と呪文のように繰り返した「MAJIMEチャンネル」では観客が全員、手を振りながら飛び跳ね、この日一番の盛り上がりが生まれた...と思ったのも束の間、金城の“富ちゃん、魔法をかけてくれ!”という振りから、“行くぞ!”という富永の声を合図に、アンセミックなロックナンバー「ぼくらのために part 1」へと雪崩れ込む。それを助走にラストナンバーの「愛はズボーン」で再び観客が《ボン! ボン! ズボボーン! 愛はズボーン!》と拳を振りながら応え、メンバー全員でシンガロング。「MAJIMEチャンネル」をはるかに上回る盛り上がりとともに大きな一体感を作り上げたのだった。

“しゃべっている時よりも演奏しているほうが安心している自分に気づいた。演奏が好きになったのかな? 今日のワンマン、もう反省点を見つけた。MCいらんな(笑)”――「ぼくらのためにpart1」を披露する前に金城はそう語ったが、ここから愛はズボーンのライヴは、もっともっと熱量の高いものになっていきそうだ。2ndアルバム『TECHNO BLUES』は大胆にシーケンスを取り入れたサウンドがまさにそんなことを思わせたが、10周年を迎えるタイミングでバンドはさらにひと皮剥けそうな予感!

撮影:石崎祥子/取材:山口智男

愛はズボーン

アイハズボーン:2011年7月に結成、大阪・アメリカ村を中心に活動。高揚感を生み出すシーケンサーによるトランストラックと、ディストーションギターのロックサウンドによるアッパーなサウンドを奏でる。結成10周年を迎えた21年5月に2ndアルバム『TECHNO BLUES』をリリース。メンバーは音楽のみならず、アート、ファッション、ゲーム配信など多岐にわたる発信をしている。

SET LIST 曲名をクリックすると歌詞が表示されます。試聴はライブ音源ではありません。

  1. 1

    1.ぼくらのために part 2

  2. 3

    3.I was born 10 years ago.

  3. 4

    4.SORA

  4. 5

    5.ドコココ

  5. 6

    6.LAST DANCE

  6. 8

    8.BEAUTIFUL LIE

  7. 9

    9.READY GO

  8. 12

    12.ぼくらのために part 1

  9. 13

    13.愛はズボーン