LIVE REPORT

小柳ゆき ライヴレポート

小柳ゆき ライヴレポート

【小柳ゆき ライヴレポート】 『LOST ANNIVERSARY TOUR ~SPHERE 球宇宙 2021~』 2021年9月23日 at 行田市産業文化会館 ベルプラス

2021年09月23日@行田市産業文化会館 ベルプラス

取材:山本弘子

2021.10.07

コロナ禍で再延期となっていた小柳ゆきの20周年ツアー『LOST ANNIVERSARY TOUR ~SPHERE 球宇宙 2021~』がついに実現。9月23日に埼玉・行田市産業文化会館 ベルプラスにて、ツアー4本目となるコンサートを開催した。

感染対策を徹底した中、ライヴはバンドのメンバーによるジャジーなインストからスタート。約13年振りのオリジナルアルバム『SPHERE~球宇宙~』の世界観をイメージし、地球を模したオブジェを吊り下げたステージにロングドレス姿で登場。ミラーボールの光が反射する中、伸びやかでダイナミックなヴォーカルを響かせた。17歳でデビューし、“平成の歌姫”の名を欲しいままにした小柳だが、年月を重ねてさらに磨かれ、深みと艶やかさを増した歌、舞台に立つために生まれてきたような華やかな存在感は圧倒的だ。息を飲むステージングが繰り広げられた。アニバーサリーツアーということもあり、セットリストは『SPHERE~球宇宙~』を中心に大ヒット曲やカヴァー曲も盛り込まれたスペシャル仕様。2000年にオリコンチャート1位を獲得し、昨年新たにリモートレコーディングした「be alive」をフェイクも混じえて歌うと、場内に大きな拍手が鳴り響いた。

MCでは“大変な状況の中、それぞれが覚悟を持って、この場所を選んでくださったと思います。本日は足を運んでくださり、とても嬉しく思います”とファンに感謝の言葉を述べ、2020年に開催する予定だったツアーが2度の延期に見舞われ、“失くしてしまった周年”という意味を込めて“LOST ANNIVERSARY TOUR”というタイトルを掲げたこと、久しぶりに歌う曲も多いので“当時を思い出しながら聴いてほしい”とメッセージを送った。小柳ゆきワールドに吸い込まれていくようなステージ運びで、自身も大好きな曲だというバラードのカバーを熱唱したかと思うと、メドレー形式で披露されたドナ・サマーの「HOT STUFF」ではステージを動き回りながらパワフルなヴォーカルで熱量を上げていき、会場もハンドクラップで盛り上がる。ファンク、ジャズ、ロック、R&Bとジャンルや時代を縦横無尽に泳ぐしなやかな歌声、指先まで神経をはり巡らせている美しくもカッコ良いパフォーマンスは、小柳ゆきが逸材であることを物語っていた。

また、会場に集まったひとりひとりに話しかけるようなトーンで、“考えるだけでワクワクする”という宇宙をモチーフにしたアルバム『SPHERE~球宇宙~』について語り、思い出したかのように“そうだった! 私、ここが地元なんです”と笑顔を向け、湧き起こった拍手には“行田にお住まいの方、どれぐらいいます?”と問いかけるトークは地元ならでは。手を挙げた人に“もしかして私の同級生?”と話しかける気さくさも印象的だった。

後半はこれまでの小柳ゆきになかったタイプの斬新なナンバーや、デビュー曲をアップデートした「あなたのキスを数えましょう~You were mine~2020ver.」、デーモン閣下をフィーチャリングしてレコーディングされた「SPHERE」も披露され、音楽の持つ力に全身が包み込まれるような壮大な世界観に惜しみない拍手が送られた。しっとりしたナンバーから激しい曲まで、楽曲の温度感を絶妙に表現するバンドのメンバーと小柳の呼吸もぴったりで、初期の大ヒット曲「愛情」では場内を見渡しながら笑顔で歌い、ペンライトを振って応える観客とひとつになって溶け合う幸せな光景が広がった。

“情報がたくさんあふれすぎていて何を信じたらいいのか。私自身も未来が見えなくてモヤモヤとしてしまう気持ちがあります。ただ、今までは見すごしていたかもしれない、本当に小さなことに喜べて“幸せだな”と感じられることもあり、ちょっとずつの幸せを大切にしていきたいとも思っています。小さなことも大事にしていけたら、いつか晴れ間がのぞくことを信じていきたいです”

そうコロナ禍で感じている想いを伝え、また笑顔で再会できるよう約束をした小柳。デビューから20年以上にわたる月日の中、さまざまなターニングポイントがあったと思うが、どんなときも彼女の人生は歌とともにあったのだろう。背筋をピンと伸ばして呼吸するように歌い始める佇まいには、アーティストやシンガーというより“歌手”という言葉が似合っていた。念願の6年振りのツアーで再び新たなスタートを切った小柳ゆきの未来が楽しみでならない。

なお、本ツアーは10月31日の東京・国際フォーラムC公演でファイナルを迎える予定だ。

取材:山本弘子

小柳ゆき

コヤナギユキ:現役高校生のシンガーとして、シングル「あなたのキスを数えましょう〜You were mine〜」で1999年9月にデビュ−。00年5月発売のアルバム『Koyanagi the Covers PRODUCT 1』は、洋楽カバーアルバムとして初のオリコン1位を獲得。近年では『billboard classics festival』でオーケストラと共演、18年6月には初のフルオーケストラ単独公演も開催し、新たな魅力を開花させ、進化し続けている。