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D ライヴレポート

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【D ライヴレポート】 『“M.L.V. vol.3" 大谷稲荷山 無観客公演 「愚かしい竜の夢 2021」』 2021年10月16日 at 配信ライヴ

2021年10月16日@配信ライヴ

撮影:TAKUYA ORITA/取材:帆苅智之

2021.10.22

今回、Dの無観客公演『愚かしい竜の夢 2021』において演奏及び撮影が行なわれた大谷稲荷山とは、大正から昭和まで、大谷石を掘り出してきた採石場だった場所。現在は資料館として一般公開されているほか、コンサート会場や、アートイベントの場所としても利用されている。先日たまたまテレビを観ていたら、とあるシンガーがロケをここでやっていて“自分もライヴをやってみたい”としみじみと語っていたし、あるアーティストがここで撮影した際、その神秘な雰囲気を目の当たりにして相当テンションが上がったそうで、その撮影監督曰く“いつも以上にいい画が撮れた”と満足していた...なんてエピソードを聞いたことがある。それほどにロケーションとしては国内屈指の場所であろう。

本公演が“Music Live Video”と題された、かつてDのMV撮影場所を巡る無観客ライヴ企画の第三弾として、昨年末のロックハート城、今年4月のワープステーション江戸に続いての開催、配信であるのはご存知の方も多いはず。2017年に発表したミニアルバム『愚かしい竜の夢』、そのタイトルチューンのMVはこの大谷稲荷山で撮影されたものだ。パッと見にはセットと思えなくもないが、そう思うのも一瞬のことで、岩肌の荘厳なる質感は、そこが明らかに巨大な異空間であることは映像越しにも伝わってくる。やはりここで撮られた映像は独特の雰囲気を醸し出す。

定刻から始まった配信の映像は、「愚かしい竜の夢」のMV同様、Dのロゴマークに炎の映像が重なるシーンからスタート。ブルガリア語で歌われる民族音楽的SEが明らかにMVとは異なり、否応にもライヴが始まる時の高揚感、緊張感を高めていく。メンバーがアップで映されることで、ASAGI(Vo)を始めとするメンバーのコスチュームがMV通りであることが分かるのは当然としても、メイクもおおよそ2017年Ver.と変わらないことが分かる。ディテールにこだわるのはそれだけ彼らがその世界観(今回であれば“Zmei=竜”)を大切にしているから──というか、彼らにとってこの世界観はこれ以外にないという徹底したコンセプト構築の所以でもあろう。冒頭からそれが分かり、観ているこちらもどこか凛となる。

クローズアップされた画が観られるというのは配信ライヴの最大の利点ではあろうが、Dのような、楽曲だけでなく、衣装やメイクにも細部に渡って強い美学を貫くバンドにとって、彼ら自身もそうだし、オーディエンスにとっても、ある種、これもひとつの最適解と言えるかもしれない。そう思った。この日、5人のメンバーは比較的に満遍なく個別にシューティングされていたが、これが生のステージ(これまでの有観客ライヴ)ではそうもいかない。中央に居るASAGIはもちろん、Ruiza(Gu)、HIDE-ZOU(Gu)のギタリストふたりも間奏などでステージ前方に出てくることも少なくないけれど、リズム隊の演奏を間近で見られるのは稀と言っていい。いや、Tsunehito(Ba)は前列に出ることがなくもないが、HIROKI(Dr)と観客との物理的距離は──如何ともし難いことではあるけれど──遠い。だが、配信ライヴではその距離が埋まる。また、ASAGIにしても歌い終わったあと、カメラ目線を維持したままなのか、正面から視線を外しているのかがはっきりと分かるのも配信ならではのことだ。このライヴの少し前にインタビューした時、メンバーは“コロナ禍の状況だからこそできる自分たちらしさ”いったことを、それぞれ口にしていたことを思い出す。しっかりと前を向く姿勢を貫き、それを有言実行するバンド、Dが頼もしくも思えた。

さて、ライヴの内容は...と言うと、M1「愚かしい竜の夢」の物語に象徴される、善と悪、静と動が混在する物語性を、彼らならではのバンドサウンドでうまく表現していることを改めて知るような演奏であった。例えば、M2「竜哭の叙事詩」。ヘヴィなギターサウンドを基本にしながらも、バロック音楽的な風味を取り入れつつ、ところどころプログレ的なダイナミズムを導入している。しかも、歌やギターソロはメロディアスかつ大らかで、さまざまな要素が混在する、いい意味でカオスな状態だ。M3「花摘みの乙女 ~Rozova Dolina~」もそう。東欧の民族楽器のような音色から始まり、変則的なビートで彩られながらも、サビに向かってグイグイとバンドサウンドがドライブしていく。しかも、ギターソロはアコギでのスパニッシュな旋律である。ひと口で語れないアンサンブルが連なっていく。M1を始め、親しみやすいメロディーとスラッシュメタル的なデスヴォイスが共存する楽曲もいくつかあったが、これらは美と醜のコントラストととらえることもできるだろうか。思えば、こうした相反する要素を渾然一体とさせるのは、かつても感じられたDらしさではある。このようなサウンドを構築し、グルーブを発散するバンドなだけに、「愚かしい竜の夢」のようなテーマに辿り着いたのかもしれない。そんな蓋然性、必然性といったものを感じさせるセットリストでもあった。

予定された10曲の演奏が終わり、メンバー個別の撮影風景やオフショットをバックにエンドクレジットが流れたあと、“D New Full Album”である『Zmei』が2021年11月23日に、さらには先行デジタルシングルとして「Zmei ~不滅竜~」が2021年10月30日にリリースされることが発表された。つまり、この日の配信ライヴは“Music Live Video”の第三弾であると同時に、新たなD作品のプロローグでもあったのだ。ヴァンパイアや妖精など、これまでのコンセプトとは異なりながらも、それら過去作とのクロスオーバーもあり、Dワールドにさらなる深みを加える重要作となるのは確実だろう。地を割り、岩盤を砕いて再びこの世に現れた竜=Zmeiの物語をしっかりと確かめてほしい。

撮影:TAKUYA ORITA/取材:帆苅智之

D

ディー:2003年4月、ASAGIとRuizaを中心にバンドを結成。2005年に現メンバーとなる。世界観を重視した、ドラマ性を持った作品を次々に発表し、08年にメジャーデビュー。ASAGIの独特の世界観を重視した、ドラマ性を持った作品が特徴。そんなDの作り出す唯一無二の独特の世界観は、ティム・バートン監督にも愛されている。

SET LIST 曲名をクリックすると歌詞が表示されます。試聴はライブ音源ではありません。

  1. 1

    1.愚かしい竜の夢

  2. 2

    2.竜哭の叙事詩

  3. 4

    4.遥かな涯へ

  4. 5

    5.Draconids

  5. 6

    6.隷獣~開闢の炎~

  6. 9

    9.Draco animus

  7. 10

    10.Cannibal morph

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