LIVE REPORT

高野麻里佳 ライヴレポート

高野麻里佳 ライヴレポート

【高野麻里佳 ライヴレポート】 『高野麻里佳 1st LIVE ~夢みたい、でも夢じゃない~』 2022年1月10日 at 日本青年館

2022年01月10日@日本青年館

撮影:中原 幸/取材:一条皓太

2022.01.30

高野麻里佳が1月10日、東京・日本青年館にて『高野麻里佳 1st LIVE ~夢みたい、でも夢じゃない~』を開催した。

2021年2月24日に声優アーティストデビューを果たした高野。約1年の歳月を経て開催する初ライヴでは、言わずもがな全ての楽曲が“初披露”となる。その上で本編終了後には、観せたてほやほやのライヴを振り返るアフタートークや、“大好きな内田 彩さんと私のアクリルキーホルダーと並べて撮っていただいたりしても嬉しいな”と、自身の願望も交えてプロモーションするグッズ紹介コーナーも(笑)。こうしたコーナーもワンマンライヴでは珍しい試みだ。そんなアフタートークでのこぼれ話を交えながら、本稿では同ライヴより夜公演の模様を振り返りたい。

2ndシングル表題曲「New story」で幕開けると、続く「Oh my future」で高野は早くもこの日最初のハードルに臨む。今回の歌唱曲が全て初お披露目というのは前述の通りだが、実はそのうち半数以上は、2月23日に発売する1stアルバム『ひとつ』の収録曲。試聴音源こそ解禁済みだが、まだ発売前の楽曲なのだ。ファンを信頼する想いがないと挑戦できない勇気のあるセットリストである。また、自身や制作陣の熱意もあり、本番4日前に新たな振り付けを増やしたという裏話が明かされる場面も。それらの事情を踏まえるに、今回は一般的な初ライヴに比べて、本人のタフさを求める内容だったと言える。

そこから“日常系ロック”の「夜更かして、午前2時」で、深夜の鬱々とした想いを書き殴るように歌い捨てていく。感情のあまり、ほとんど呼吸を忘れたかのように息継ぎの少ない至難の楽曲だが、高野の歌声の芯の強さは健在。続く「I tie U」でも3拍子の難しいメロディーを奏でていくなど、彼女曰く“癖のある2曲”を見事に歌い切った。

さて、今回のライヴでもっとも驚かされたのが、高野の歌声が表現できるキャラクターのレンジの広さ。本編後半のMCにて“楽しんで演じて歌うことができた”と語られたとおり、ステージに立っているのが“同じ高野麻里佳なのか?”と疑ってしまうくらい、一曲ごとに聴こえる歌声が異なっていたのだ。彼女の“演じ分け”の技術に、ただ感服するばかり。

思うに、いわゆる“レコーディングアーティスト”のようにライヴでの再現度を考慮しない存在もいる中で、声量の圧などで誤魔化さず、キャラクターの輪郭までもを細かに表現しきるあたり、高野が声優として評価の高い理由も頷ける。今後、もっと多くの時間を掛けて楽曲を“自分のもの”に昇華させるのかと思うと、数年後の彼女を前に我々はきっと驚きを隠せないだろう。

6曲目「Flavored hug」は“リラックスしたい時に聴いてほしい”という一曲。駅の改札の“ピーン、ポーン”というチャイムなど、環境音を取り入れたチルなサウンドに、客席全体も静かに酔いしれる。そこから一転。“ホラーロック”の「Hide & Seek」では背筋が凍るような空気に。この楽曲にも「I tie U」と同様、三拍子のパートが待ち受けるあたり、高野は今後も“妖しい三拍子の使い手”として凄みを増していくのか。ここでは、間奏でかくれんぼをする子供の声が響き渡った際、ステージ左右の誰もいないはずの空間にスポットライトが当たるという演出が、楽曲の持ち味を引き上げる特筆すべき不気味さを備えていた。

“高野麻里佳のテーマソング”として制作された彼女の大好きなグッドミュージックであり、楽曲を聴いたマネージャーが涙したという“いい話”付きなのが、新アルバムで表題曲を飾る「ひとつ」だ。曲中のクラップで会場にますますの一体感を育むと、「Ready to Go!」の間奏ではファンと一緒にダンスをすることに。

だが、振り付けレクチャー時、高野はBGMに対して“ワン、ツー”と思うようにリズムに乗りきれない。いざリズムを掴んだかと思えば、今度は肝心の振り付けが飛んでしまい、“なんで自分ができないねん!”と、自身のぐだぐだぶりに思わず真顔になる場面も。そんな可愛いすぎるミスなんて...逆に“ボルテージを上げ”られてしまう。ちなみに、この楽曲の盛り上がりぶりに太鼓判を押したスタッフ陣。アフタートークにて今後のライヴでも“定番にしていきましょう”という話の流れで、客席に対して“振り付けを忘れないように”と促すと、“あっ...はい(笑)”と思わぬ人物にも流れ弾が。その人物の正体は...読者のご想像にお任せする。

本編を締め括ったのは、デビュー曲「夢みたい、でも夢じゃない」。このあと、“私のために集まってくれたみなさんとここでしか得られない経験を得られたことは、本当にアーティストデビューをして良かったと思える瞬間でした”と、今回のライヴの所感を振り返った高野。今後は声優アーティストとのコラボステージや、音楽フェス出演などの“夢”を叶えてみたいそうだ。

アフタートークを終えると早速、ひとつめの夢が実現する。それは、TVアニメ『精霊幻想記』のタイアップ楽曲である「New story」をアニメのオープニングムービーを背にして歌い上げるというもの。歌唱中には、自身をギュッと抱きしめるように笑顔で喜びを噛み締める。アニメに忠実に、フル尺ではなくワンコーラスだけ歌唱したところにも、作品へのリスペクトを感じさせられた部分だ。最後まで声優として音楽/アニメ作品に真摯に向き合う姿勢を示した高野麻里佳。「夢みたい、でも夢じゃない」の歌詞にもあるが、そんな彼女の《踏み出したこの軌跡》を祝福するように、温かで幸せに満ちあふれるひと時だった。

撮影:中原 幸/取材:一条皓太

高野麻里佳

コウノマリカ:2月22日生まれ、東京都出身の声優・アーティスト。2014年に声優デビューし、TVアニメ『それが声優!』でメインキャラクターを演じ、番組派生の声優ユニット・イヤホンズのメンバーとしてもCD デビューし、活動の幅を広げる。TVアニメ『デジモンアドベンチャー:』太刀川ミミ役、TVアニメ『ウマ娘 プリティーダービー』サイレンススズカ役など、数々のTVアニメにもメインキャストとして出演し人気を集めている。21年、自身の誕生日月である2 月にシングル「夢みたい、でも夢じゃない」でソロアーティストとしてデビュー。同年7月に2ndシングル「New Story」をリリースする。

SET LIST 曲名をクリックすると歌詞が表示されます。試聴はライブ音源ではありません。

  1. 11

    アフタートーク

  2. 12

    11. New story(ワンコーラス)

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