LIVE REPORT

ヒトリエ ライヴレポート

ヒトリエ ライヴレポート

【ヒトリエ ライヴレポート】 『HITORI-ESCAPE TOUR 2022』 2022年5月31日 at 恵比寿LIQUIDROOM

2022年05月31日@

撮影:西槇太一/取材:山口智男

2022.06.15

タイトな演奏にグッと熱を込めた「ポラリス」、ゆーまお(Dr)とイガラシ(Ba)が作り出す、うねるようなリズムにシノダ(Vo&Gu)が掻き鳴らす悲鳴にも聴こえるギターリフが絡みつく「ハイゲイン」。そして、ユニゾンという概念を無視したようなアンサンブルがヒトリエの真骨頂を印象づけた「curved edge」。東京・恵比寿LIQUIDROOM2デイズの2日目、しょっぱなからいきなり彼らが観客にぶつけたハイテンションかつハイエナジーな3曲に、早速大きく揺れ始めたスタンディングの客席を目の当たりにして、開口一番、“すげえな。めちゃめちゃ人、入ってんじゃん。やっべ。でも、こうじゃないとね。LIQUIDROOM!”とシノダは快哉を叫んだ。そして、“最高ですね。そんな最高なみなさんに俺達の新曲をお聴かせしたい”と言ってから演奏したのが、5月25日にシングルとしてリリースしたばかりのシンセオリエンテッドなダンスポップナンバー「風、花」だ。その「風、花」でバンドの新しい音像をアピールした3人は序盤の怒涛の勢いから一転、低音のグルーブをきかせる「RIVER FOG, CHOCOLATE BUTTERFLY」、トラックメイキングをバンドサウンドに落とし込んだようにも聴こえる「tat」とつなげ、巧みに同期の音も交えながら、観客の身体を揺らしていった。

“新旧織り交ぜた曲をバーンとやるツアーです。今日もいろいろな曲をやります。マジで、“この曲やるの!?”っていうのもあるんじゃないかな?”(シノダ)

その意味では、ダンスロックにエキセントリックでスリリングなアレンジを加えた「るらるら」、”垂直跳び運動の時間がやってきました!“(シノダ)と観客をその場でジャンプさせた「カラノワレモノ」――インディーズ時代の2曲を含む中盤が聴きどころだったんじゃないかと思うが、バンドの歴史を作ってきた新旧のレパートリーを織り交ぜながら、この日、ステージで見せつけたのは、3人編成になったヒトリエの自信に満ちた姿と、このライヴを観た誰もが期待せずにいられないヒトリエのこれからだった。そこにこそ大きな意味があると思う。

今回のツアーに臨む前のことだったのか、コロナ禍と地震の影響によって、東京、大阪、仙台公演の延期が余儀なくされた最中のことだったのか、実際のところは分からないのだが、ともあれ6月22日にリリースする『PHARAMACY』という会心のアルバムを作り上げたことも自信に繋がっているのだろう。

「カラノワレモノ」に対して全力のジャンプで応えた観客をねぎらいながら、“悪いけど、ギアを上げていくんでよろしく!”(シノダ)と攻撃的なロックナンバー「Marshall A」から雪崩れ込んだ後半戦、バンドは「踊るマネキン、唄う阿呆」「3分29秒」「アンノウン・マザーグース」とアッパーな曲を畳みかけるようにつなげ、気づけばラストスパートをかけている。さらに、“あなたたちに愛を込めて”とシノダがらしくないことを言って、《こんなん聴いてんのお前だけ》とファンに感謝を伝えるヒトリエの新しいアンセム「ステレオジュブナイル」を、観客と分かち合った直後にシノダが言ったのが次の言葉だった。

“3人なってからLIQUIDROOMのステージに立つのは3回目。1回目は3人になってすぐの時で、歌う予定のなかった俺が歌うなんてわけが分からなかった。2回目は配信ライヴだったから客が誰ひとりいなかった。その時も何が何だか分からなかった。今日で3回目。文句ある奴はいるか? 俺は最高だと思う。ちょっと時間がかかったけど、またLIQUIDROOMに似合うにバンドになりました!”

熱演に裏づけされたシノダの言葉に文句を言える人間は誰ひとりいなかっただろう。客席から大きな拍手が沸き起こった。誰もがこの言葉を聞きたかったに違いない。

“最後に僕たちのこれからを歌います”(シノダ)

ラストナンバーは3人になったヒトリエが初めて作ったアルバム『REAMP』収録のバラード「イメージ」。バンドのこれからを歌っているという意味でも、シノダの弾き語りにイガラシとゆーまおが気持ちを合わせるように演奏を重ねていったという意味でも、この日のラストナンバーとして、これほど相応しい曲はなかったと思う。もちろんバラードにもかかわらず、終盤、シノダ、イガラシ、ゆーまおがそれぞれの個性を主張するように熱度の高い演奏を繰り広げたという意味でも。

“こんなん観に来きてくれるんだ。嬉しいよ”(シノダ)

アンコールに応えた彼らはその感謝の気持ちを伝えるべく、「終着点」と「インパーエフェクション」という懐かしい2曲を演奏して、LIQUIDROOM 2デイズ公演を締め括った。そして、彼らはこの勢いのまま、7月16日からツアー『ヒトリエ Summer flight tour 2022』に突入する。

撮影:西槇太一/取材:山口智男

『ヒトリエ Summer flight tour 2022』

7/16(土) 広島・セカンド・クラッチ
7/17(日) 香川・高松DiME
7/30(土) 宮城・仙台 Rensa
7/31(日) 岩手・盛岡CLUBCHANGE WAVE
8/06(土) 大阪・梅田クラブクアトロ
8/07(日) 兵庫・神戸VARIT.
8/17(水) 鹿児島・鹿児島SR HALL
8/18(木) 福岡・DRUM Be-1
8/27(土) 北海道・札幌 cube garden
9/02(金) 新潟・新潟LOTS
9/03(土) 石川・金沢AZ
9/08(木) 愛知・名古屋クラブクアトロ
9/09(金) 京都・磔磔
9/22(木) 東京・Zepp Haneda (TOKYO)

ヒトリエ

ヒトリエ:wowaka(Vo&Gu)、シノダ(Gu&Cho)、イガラシ(Ba)、ゆーまお(Dr)の4人により結成。ボカロPとして高い評価を集めていたwowakaがネットシーンで交流のあったイガラシ、ゆーまおに声をかけ、シノダが加入し、2012年に活動をスタートさせた。同年12月にミニアルバム『ルームシック・ガールズエスケープ』、13年4月にはEP『non-fiction four e.p.』を立て続けに自主制作盤として発表し、初のワンマンライヴ実施。同年11月にソニー・ミュージックグループ傘下に自主レーベル『非日常レコーズ』を立ち上げることを宣言。14年1月にメジャーデビューシングル「センスレス・ワンダー」を発表し、その後も精力的なリリースとライヴ活動を展開するが、19年4月にwowakaが急逝。残るメンバーは3名体制で同年9月より全国ツアーを開催した。20年8月にベストアルバム『4』、21年2月に新体制初となるフルアルバム『REAMP』を発表し、同年6月にシングル「3分29秒」をリリースした。22年も入り、全国ツアーを実施しながら5月からはシングル「風、花」とアルバム『PHARMACY』を2カ月連続で発表。7月からはツアー『ヒトリエ Summer flight tour 2022』をスタートさせる。