LIVE REPORT

Morfonica ライヴレポート

Morfonica ライヴレポート

【Morfonica ライヴレポート】 『「BanG Dream! 10th☆LIVE」 DAY2 : Morfonica 「Reverberation」』 2022年9月23日 at 有明アリーナ

2022年09月23日@有明アリーナ

■ライヴ画像クレジット (c)BanG Dream! Project (c)Craft Egg Inc. (c)bushiroad All Rights Reserved.

2022.10.24

『BanG Dream! 10th☆LIVE』が東京・有明アリーナにて、9月22日から4日間にわたり開催! 2日目はMorfonicaが“Reverberation”と題したステージを届けた。

筆者は今年春に本媒体でメンバーの進藤あまね(Vo/倉田ましろ 役)とAyasa(Violin/八潮瑠唯 役)にインタビューをしたのだが、その際にMorfonicaのライヴの醍醐味は“朗読”にあると詳しく解説してもらった。その言葉どおり彼女たちの織りなすステージは少し特殊で、朗読パートを交えたストーリー仕立てになっていた。

また、Ayasaは当時“ステージ上の彼女たちがもっと生きた存在として映る”とも語っていたが、その内容とはメンバー演じるキャラクターたちが本人たちではないまた別の人物を演じるというもの。こうした二重構造とともに作り上げるライヴを、今回はユニット史上最大のキャパシティーで挑戦することに。彼女たちが築き上げてきた舞台システムはアリーナ規模でも通用するのか? 本稿を通して確かめてみてほしい。

ライヴ本編は次のようなモノローグから始まった。

“深い深い霧の中。時間が止まったかのような世界に、自分の足音だけが頼りなくこだまする。まるで覚めない夢の中にいるような、そんな感覚。自分は誰で、何ができるのか、何がしたいのか分からないまま。自分さえも自分の居場所を見つけられないまま。これは夢と現実の世界を、たったひとりで彷徨う少女の物語”

開幕を飾ったのは「Sonorous」。高らかに、それでも緩やかに物語の始まりを告げる。ここから詳細に語っていくが、そもそもが“朗読”というステージの物語性を重視したライヴをしていることからも分かるとおり、彼女たちはセットリストの流れや雰囲気作りにはかなり意識的なユニットである。続く「金色へのプレリュード」も含めて、いきなりではなく徐々に物語の世界へと導いてくれるような楽曲選びだった。

それにしても、Morfonicaのライヴはあらゆる面で音が情景になっていく印象がある。いや、むしろ彼女たちは音を情景に変えていけるのだと改めて気づかされた。この日の照明演出や会場全体に漂わせたフレッシュコットンのフレグランス。さらには純白×青の衣装、特に進藤の可愛いすぎるギブソンタック調のヘアセットまで、すべてのピースがうまく当てはまっていた。音楽を音楽としてはもちろん、それ以外のかたちでもアウトプットをするのが本当に巧みな集団と言える。

さて、3曲目のカバー曲「月光花」(Janne Da Arcのカバー曲)では進藤の成長が光る。ここまでの2曲と明らかに歌声の響かせ方を変えたヴォーカルは、楽曲と会場全体を引っ張っていける存在だと証明するようだった。

その他のメンバーについて、特に輝いていたのが直田姫奈(Gu/桐ヶ谷透子 役)。6曲目「One step at a time」では一部のヴォーカルを担当したほか、曲中の要所で可愛い身振り手振りを披露するなど、あの時間はまさに“スーパー直田姫奈タイム”と呼ばざるを得ないものだった。あまりに魅了されすぎて、詳細なレポートができないほど記憶が飛ばされており、読者に申し訳がない。

本編中盤の時点で、すでにMorfonicaの朗読×ライヴスタイルがアリーナ規模でも通用することは示されていたし、むしろライヴハウスよりも幅広いステージの空間が、ましろ演じる少女が抱える孤独感をますます助長するのにひと役を買っているとも思えた。とはいえ前述の「One step at a time」や、その直前に披露した「ブルームブルーム」などの曲調を思い浮かべてもらえれば分かるだろうが、明るい雰囲気の楽曲が続いたライヴ中盤。朗読のストーリーでは、ましろ演じる少女に時には自身を励まし、時には一緒に涙を流してくれる友達ができたのである。モノローグは次のように続いた。

“とはいえそれは、嵐の前の静寂のようなもの。一時はかけがえない友情を愛おしく感じていた少女だが、ふとあることに気づく。あの友達の名前は? どこから来たの? そもそもなぜ、私と友だちになってくれたの? 気づいてしまうのだ...彼女のことを何も知らない自分がいることに”

そうした疑心はインクの染みのように黒く広がっていく。ここで披露された「unravel」(TK from 凛として時雨のカバー曲)では、精神が壊れていくさますら美しいと感じさせられ、次曲「Nevereverland」(ナノのカバー曲)では火がついたかのようにバンド全体の熱量が上昇。と、ここでこの朗読の解がついに提示される。少女が友情を育んでいたのは、イマジナリーフレンド。つまり、自分自身の中に生み出した幻だったのだ。

このタイミングで思い出したのが直前に歌唱された「unravel」。曲中で何度も繰り返され、最後には誰かに問いかけるように、ボソッと歌った《僕の中に誰がいるの?》というフレーズ。あの曲の時点でイマジナリーフレンドという存在への布石がすでに置かれていた。こうした思考を巡らせているタイミングで、目の前のステージではちょうど名曲「fly with the night」が演奏中だったのだが、思考とステージの両方の波が押し寄せてきて、あの場面で感じたカタルシスは言い表せないものだった。

よく、ライヴ後に当時の模様を思い返して、“あのライヴにもう一度参加できたら...”と感慨に耽けることはあるが、まさかライヴ中に巻き戻し再生をしたくなるような仕掛けを忍ばせているとは。まだライヴが終わっていないにもかかわらず、今すぐにでも2回、3回と繰り返し観たくさせられてしまった。

このあとに「fly with the night」から「flame of hope」と、瑠唯をフィーチャーした楽曲を連続で披露し一気に音の炎を撒き散らしていたのだが、このあたりもファンが考える“理想的なセトリ”だったことだろう。ちなみにユニットのストーリーと同様、直田とAyasa、透子と瑠唯がお互いの想いをぶつけ合い、認め合う姿を見せて、その光景をステージ後方から眺めていた西尾夕香(Ba/広町七深 役)が、この日一番に暴れながらベースを弾き倒すという構図が完璧すぎる“解釈の一致”だった。

本編終盤に披露された「Daylight -デイライト- 」。同楽曲の《夜明けが(来るのを)ひたすら待つよ》という歌詞をもって、ましろ演じる少女は自身の心に決着をつける。彼女はイマジナリーフレンドに別れを告げて、自分の足で自分の道を歩み始めることを決めたのだ。ライヴタイトルに掲げられた“Reverberation=残響”とは、誰にも言えなかった少女の心の声を指したものだったのである。幕引きの語りでここまで説明しきってくれたあたり、なんとも丁寧な作品作りだ。

振り返ると、Morfonicaは本編の80分間をMCなしで走りきっていた。しかも、曲間に朗読を絶えずしながらである。本物の小説を読んだかのような“読後感”を感じたのは、こうしたストイックな構成があってこそだろう。この日のライヴはアンコールまで続いたのだが、メンバー全員とも最後までキャストとしての素顔を出さず、あくまで役に徹していたこともつけ加えておきたい。朗読×ライヴを柱として、こうした世界観の作り込みに弛まぬ一貫性を持たせてきた彼女たち。そんなMorfonicaが評価されずして、一体どんな音楽が評価されるというのだろうか? 本当に脱帽しかない一夜だった。

※記事中のモノローグなどは筆者による書き起こしのため、表記揺れの可能性あり

撮影:ハタサトシ、福岡諒祠(GEKKO)、池上夢貢(GEKKO)/取材:一条皓太

■ライヴ画像クレジット
(c)BanG Dream! Project (c)Craft Egg Inc. (c)bushiroad All Rights Reserved.

Morfonica

モルフォニカ:スマートフォンゲームアプリ『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』から誕生したガールズ・バンド。メンバーは倉田ましろ(Vo/CV:進藤あまね)、桐ヶ谷透子(Gu/CV:直田姫奈)、広町七深(Ba/CV:西尾夕香)、二葉つくし(Dr/CV:mika)、八潮瑠唯(Violin/CV:Ayasa)の名門お嬢様学校・月ノ森女子学園の学生たちによって構成。2020年3月に『BanG Dream!(バンドリ!)』プロジェクト第4のリアルバンドとして登場した。同年5月に1stシングル「Daylight -デイライト-」をリリース。10月には単独ライヴを大成功させる。21年に2枚のシングルを、22年3月に4thシングル「fly with the night」を発表し、4月にコンセプトライヴを開催予定。

SET LIST 曲名をクリックすると歌詞が表示されます。試聴はライブ音源ではありません。

  1. 3

    03.月光花

  2. 4

    04.深海少女

  3. 5

    05 ブルームブルーム

  4. 8

    08. unravel

  5. 9

    09. Nevereverland

  6. 14

    <ENCORE>

関連ライブレポート