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ポルノグラフィティ ライヴレポート

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【ポルノグラフィティ ライヴレポート】 『18th ライヴサーキット“暁”』 2023年1月24日 at 日本武道館

2023年01月24日@日本武道館

撮影:入日伸介/取材:村上孝之

2023.01.31

昨年8月に5年振りとなるオリジナルアルバム『暁』をリリースし、9月22日から全国ツアー『18th ライヴサーキット“暁”』へと旅立ったポルノグラフィティ。同ツアーは25カ所を廻る全29公演のツアーという大規模なものとなり、全ての公演が盛況だったことからは、多くのリスナーが彼らのライヴを待ち望んでいたことがうかがえる。

1月23日、24日にツアーファイナルとして行なわれた東京・日本武道館での公演チケットも瞬く間にソールドアウトとなり、さらに24日はオンライン配信とライヴビューイングを各地の映画館で実施。“日本武道館を2日間埋めるだけでもすごいことなのに、いったい何人の人が今日のライヴを観ることになるんだろう?”と筆者は思いつつ日本武道館へと足を運んだ。

アリーナはもとより2階スタンドの最後列、そして立ち見までオーディエンスでびっしりと埋まった日本武道館の情景は何度見ても壮観だし、性別や年齢などを問わず幅広い層のリスナーが集まっているのはポルノグラフィティのライヴならではと言える。開演時間が近づくにつれてオーディエンスの熱気が徐々に高まっていくことを感じていると、場内が暗転してゴシックホラーが香るオープニングSEが流れた。客席から手拍子が湧き起こり、ステージ下手に設置された古めかしいドアからふたりが登場。場内が騒然となる中、岡野昭仁(Vo)の繊細な歌声と新藤晴一(Gu)が奏でる煌びやかなギターのアルペジオが鳴り響き、ライヴは静から動へと展開する「悪霊少女」から始まった。

ステージ中央に立ち、エモーショナルな歌声を聴かせる岡野とナチュラルフィニッシュのテレキャスターを抱え、クールな表情でキレのいいギターワークを展開する新藤。強い存在感を放つふたりの姿と躍動感に溢れたサウンドにオーディエンスのテンションも上がり、オープニングからアツいリアクションを見せる。たった一曲で広大な会場の場内をひとつにするあたりはさすがのひと言で、ライヴが始まると同時に場内は彼らの世界と化した。

その後は「悪霊少女」で作り上げたいい空気感を保ったままにブラックミュージックに通じるグルービーなサウンドと岡野の力強いヴォーカルの取り合わせを活かした「バトロワ・ゲームズ」、スタイリッシュな世界観の中で新藤がサポートギタリストのtasukuとテイスティーなツインリードを聴かせる「カメレオン・レンズ」を続けてプレイ。アルバム『暁』の収録曲を最良と言えるかたちで披露したことからは、彼らが高い意識を持って今回のツアーに臨み、公演を重ねるごとに演奏にさらなる磨きをかけていったことが如実に感じられた。3曲聴かせたところで最初のMCが入る。

“みなさん、こんばんは。武道館2日目。みなさんの心はアツくなっていますか? ファイナルに見合った空気になっているね、今日はね。みなさんの気持ちが伝わってきております! ありがとうございます。ほんま、たくさん集まってもろうて。本当に泣いても笑ってもラストですので、わしの記憶の中にくっきり刻み込むような、そんな一日にして帰りたいと思います。最後まで楽しんでください、よろしく!”(岡野)

“俺らは18回目なんです、ツアーが。活動が24年ということで数は増えていきますけど、重要なのは新しいアルバムを持って、新しいツアーを廻る、新しいライヴを始める。新しいことをやるということが、数字なんかよりも自分たちにとって大切なことであって。全国で『暁』の曲を演奏してきて、俺たちが作った時よりも徐々にみんなの熱を込めてもらって。今日ここで俺達が作った時とはまた違う『暁』というアルバムになるんじゃないかと思いますし、それは君たちにかかっているから。今日で『暁』というアルバムがどんなアルバムになるか決まるので、最後までよろしくお願いします”(新藤)

等身大のMCで客席を湧かせたあとは、知的な歌中と心を駆り立てるサビを配した「プリズム」や、岡野の“みんなにとても大切にしてもらってきた曲です”という言葉とともに届けられたウォームなバラードの「愛が呼ぶほうへ」、ステージ後方に映し出されるアメリカの広大な景色や夜景などの映像にフィットする“乾いた哀愁”を纏った「ナンバー」、「クラウド」などを披露。音楽性の幅広さを見せつつ、そのどれもが上質なことはポルノグラフィティの大きな強みと言える。1曲ごとに空気感が変わる構成でいながら散漫な印象は微塵もなく、ライヴが進むにつれてどんどん世界観が深まっていくことが印象的だった。

中盤ではアコースティックスタイルで聴かせた「うたかた」や、抒情的な岡野の弾き語りから華やかな情景へと移行する「瞬く星の下で」、岡野がパワフルな歌声を聴かせ、新藤がフライングVを手にしてソリッドなプレイを展開するロックチューンの「Zombies are standing out」、鮮やかなラテンフレイバーが心地良い「アゲハ蝶」といったナンバーで、さらなる多彩さを披露。オーディエンスのさまざまな感情を喚起し、魂を揺さぶり、強く惹き込む彼らのライヴは本当に魅力的だ。今回のツアーが盛況だったのは“久しぶりだから”というような次元の結果ではなく、多数のリスナーが彼らのライヴを渇望していたことを実感させられた。

ダンサブルなアレンジがなされていた「ミュージック・アワー」から後半に入り、さわやかな「VS」、「テーマソング」などが相次いで演奏された。後半に入ってもまったくパワーダウンすることなく情熱的なヴォーカルを聴かせる岡野と、楽曲のテイストをブーストするギターソロを余裕の表情で決める新藤。ステージ両サイドに伸びたランエリアも使ったスケールの大きいステージングを展開しながらプレイするふたりの姿と爽快感にあふれたサウンドの応酬にオーディエンスの熱気は一層高まり、日本武道館の場内はツアーファイナルに相応しい盛大な盛り上がりを見せた。

そして、“暁はまだ明けない夜のこと。その暁の先にきっと今よりももっともっと強い光が差してくると願って、信じて、みなさんにあと1曲届けたいと思います。今日はどうもありがとう”という岡野の言葉に続けて本編のラストソングとして「暁」をプレイ。スリリング&ハードなサウンドと強く訴えかけるヴォーカルで場内を熱狂させて、本編を締め括った。

今回の『18th ライヴサーキット“暁”』で、ブランクなどを一切感じさせない上質なライヴを披露してみせたポルノグラフィティ。彼らの公演を待ち侘びていたリスナーは、オーディエンスの心を浄化する力を持った彼らのライヴが健在であることに胸を撫で下ろしたに違いない。また、多くのヒット曲を持っていることを活かして彼らはベストヒット的なライヴを行なうこともできたわけだが、新作の『暁』を押し出したセットリストでオーディエンスを熱狂させたこともさすが。

さらに、アンコールで新曲の「OLD VILLAGER」を聴かせたことも注目と言える。“日本武道館2デイズで、ひと区切り”ではなく、“ここからまた、さらに挑んでいくぜ!”という意気込みを感じさせただけに、今後のポルノグラフィティも本当に楽しみだ。

撮影:入日伸介/取材:村上孝之

ポルノグラフィティ

ポルノグラフィティ:広島県因島出身の岡野昭仁(Vo)と新藤晴一(Gu)によるロックバンド。99年にリリースされたデビューシングル「アポロ」のロングヒットにより、その名を全国に広め、その後も「ミュージック・アワー」「サウダージ」「アゲハ蝶」「メリッサ」などヒット曲を連発。その後も海外でのライヴを始め、近年もヒットソングを発表する中、19年には20周年記念の東京ドーム2Days公演を開催。そして22年8月に約5年振りとなるオリジナルアルバム『暁』を発売する。同年9月からは全国ツアー『18thライヴサーキット“暁”』も開催。