LIVE REPORT

irienchy ライヴレポート

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【irienchy ライヴレポート】 『DigitalSingle『ソルジャー』 リリース記念 僕らの闘いは続いていくツアー 東京編』 2023年4月16日 at 渋谷Spotify O-Crest

2023年04月16日@

2023.04.21

4人組ポップバンドのirienchyが、最新デジタルシングル「ソルジャー」のリリースを記念した東名阪福ツアーを開催。本稿でレポートするファイナル公演では、YENMAとワンダフル放送局を対バンに指名。それぞれに個性を持った、とびきりキャッチーな歌モノのロック&ポップスを聴かせる、なおかつライヴパフォーマンスが素晴らしい3組とあって、楽しいイベントになることは前もって予想できていたが、当日はどのバンドも期待以上のステージを届けてくれた。

■ ワンダフル放送局 ■

トップバッターは、2020年に大阪で結成されたロックバンドのワンダフル放送局。wan(Vo&Gu)が♪今日はirienchyの素敵な日 僕らで作る素敵な日〜といきなり即興で歌い始め、“僕らとYENMAとirienchy、みんながスーパーヒーローになると思います。楽しんでいきましょう!”と宣言したオープニングから、もうすでに間違いなくいい日になる予感しかない。

《面白いことが起きそうな予感 これを「生きてる」って言うんだよな?》と情熱のありかを確かめるように叫ぶサビに胸が高鳴った「interest」、ゆうだい(Ba)とみやじ(Dr)が踊れるディスコビートを刻む「スーパーガール」とアップナンバーが続く中、サポートの伊藤晴香(Gu)も爽快な音色でアンサンブルを彩るなど、息の合った演奏を繰り広げる4人。フロアーからは次々に拳が上がっていき、初見のオーディエンスを惹きつける力があるバンドなのだと序盤にして思い知らされる。

“irienchyとは去年の秋くらいに出会ったんですけど、仲良くしてくれて本当に嬉しいです。ツアーファイナルに呼んでいただいたからには、この40分間、一瞬たりとも退屈させない演奏をしていきます”と意気込むwan。その後はゆるやかなテンポで聴かせるポップなラブソング「クエスチョン」「ZIGOKU!」、日頃のストレスを吹き飛ばすパンキッシュな「Noisy Noisy」を通して、言葉がしっかりと届く歌や人懐っこさといった彼らの持ち味がますます際立つ展開に。「現実逃亡愛好歌」「今日も今日とて」のような、ライヴハウスに集まった人たちの生活と心情に寄り添う曲も魅力的に響く。

“頼りない浮世に嫌気が差してしまう時は、いつだって僕らの音楽を頼ってください!”とwanが力強く呼びかけ、リリース前の新曲「メロディー」も疾走感たっぷりに披露し、ラストはお待ちかねのキラーチューン「会いにゆくのだ」。思わず走り出したくなるような青春の輝きに満ちた曲調と4人が放つエネルギーで、場内に歓喜のハンドクラップが自然とあふれる素晴らしいムードを作り上げ、ワンダフル放送局はステージを降りた。

■ YENMA ■

続いては、この日が新体制になって初ライヴのYENMA。オーディエンスがワイパーで盛り上がったホットなダンスナンバー「ロン・ロン・ロマンス」、ハードロック感のあるギターが爆音で轟く「ENERGY」と、こちらも快調なスタートを切る。ありあまるほどの熱を込めてエモーショナルに歌う池田 光(Vo&Gu)をはじめ、楽しそうに身体を揺らしながら鍵盤とヴォーカルで曲を色づける深澤希実(Key&Vo)も、硬軟自在なノリでバンドを頼もしく支える山本武尊(Dr&Cho)も気迫十分。見た目のシックなイメージをガラッと覆す、泥臭くエネルギッシュな演奏に、思わずギャップ萌えしてしまう。

新体制でのライヴを待っていたファンが歓声を上げる中、“大切な日に呼んでくれたirienchy、どうもありがとう。大好きなバンドで、最高の友達、仲間であり、ライバルです。もちろん負けるつもりはないので、バチバチにいいライヴをしてやります!”と池田が表明。サポートの山根祐樹(Ba)を紹介しつつ、メンバーの脱退で感じた不安や一緒にいてくれる人のかけがえのなさについて山本が想いを曝け出したシーンも、人間味にあふれたYENMAらしくて好印象だ。

人気曲「Cavalry」を経て、さらにヒートアップする場内。ドライブに合いそうな開放的な新曲「オープンカー」を持ってきてくれたのも嬉しかった。一転して青い照明のもと、池田と深澤のツインヴォーカルで男女のすれ違いを切なく表現した「Blue Monday」まで、カラフルなステージングで魅了していく。

“僕らの夢は何も変わってないから心配しないでください。本気で知ってもらう努力も最近はしてます。SNSを頑張るとバカにしてくる人がいるけど、そういう奴はYENMAを指をくわえて見ることになると思う。いつか必ずワンマンで武道館を埋めてみせるので!”と、改めて再出発の強い意志を示した池田。「走れ」では《見ていてくれよ 今日が始まりさ》と歌い替え、メンバーの笑顔も清々しい超絶ポップな「シャンデリア」で鮮やかにフィニッシュ。この日できるベストを出し切った胸がすくライヴだった。

■ irienchy ■

そして、いよいよ主役のirienchyがステージへ。“ワンダフル放送局とYENMAに最高のパスをもらいました!”と笑顔の宮原 颯(Vo&Gu)が朗らかに歌い始めた「ずっと」から、会場全体が早くもじんわりと温かい空気に包まれる。ツアーを重ねてさらに磨きがかかったバンドサウンドを堂々と聴かせる中、“ここ誰ん家!?”“イリエンチー!!”のコール&レスポンスが決まった「ライライライ」でホーム感を増幅させ、本多響平(Dr&Cho)のラップパートが映える「藁人形の館」も果敢に放出。持ち前のポジティブなパワーで瞬く間にペースを掴む。

“大阪・福岡・名古屋と回ってきて、メンバーみんな思い出とかあるんじゃないと?”と宮原がいつものように博多弁でしゃべるなど、中盤のMCは和気あいあいとした時間に。ツアーファイナル当日に井口裕馬(Ba&Cho)が自宅の鍵を失くしてしまった話だったり、某ラーメン屋での食事後に諒孟(Gu&Cho)が熱烈な引き止めを受けた話だったり、着飾った感じがほとんどないナチュラルな姿もこのバンドらしい。

夏の星空を彷彿させる照明やシーケンスを使って「ヒトミシリ流星群」を煌びやかに届け、「ドリームキラー」以降は“今を大切に生きたい”という想いが詰まったアップチューンを連発。ここまでもタッピング奏法などで存在感を示していた諒孟のギターが色気と歪みを強烈に深めたりと、クライマックスへ向けて尻上がりにグルーブが巨大化していくようなライヴ運びは圧巻で、思わず放心状態になってしまうほどの衝撃を覚えた。

“今みたいな楽しい時間の反面、生きとったらしんどい時間も多いやん? そのたびに頑張らなきゃとか、強くならなきゃとか考えがちだけど、最近は“弱くていいよ”って思うようになって。弱いほうが人の痛みだって分かるし、誰かにやさしくできるんよ。もし自分が嫌になっちゃったりしたら、またライヴハウスに会いに来て。もっと弱っちい俺たちが全力で抱きしめるけん!”

そんな宮原の言葉からなだれ込んだ「スーパーヒーロー」も、リリース当初よりひと回りもふた回りもタフに進化していて驚かされる。粒立ちのいいベースを奏でる井口、活気のあるドラムを叩く本多、背面弾きならぬ腰面弾きでギターソロを掻き鳴らす諒孟と、個々のプレイが存分に輝き、本編ラストは満を持しての「ソルジャー」。ライヴへ足を運んでくれるひとりひとりに向けたこの曲が、どんどん高まるパフォーマンスの熱量と相まって、オーディエンスを鼓舞したのはもちろんのこと、ともに闘っているかのような、まさに弱さを知る者ゆえの強さが美しく伝わってきた点が、irienchyならではの包容力にあふれていてとても感動的だった。

“めちゃくちゃ楽しかったです。今日は本当にありがとう! 最後にちゃんと言っておかなきゃいけない曲を歌って帰ります”と宮原が告げ、アンコールは悔いを残さないように全力で「バイバイ」を演奏。ワンダフル放送局の「会いにゆくのだ」とYENMAの「シャンデリア」のカバーもメドレー的に挟んで会場を沸かせ、大切な仲間たちとのハートフルなイベントをすこぶるハッピーに締め括ってみせた。願わくば、この3組の対バンはまた観てみたい。

撮影:伊東実咲/取材:田山雄士

irienchy

イリエンチー:2020年1月、元MOSHIMOの宮原 颯(Vo&Gu)と本多響平(Dr&Cho)が新たに結成。恥ずかしいほど正直な心の声や日常に潜んだセンシティブな感覚を紡いだ詩と、どこかほっとするメロディー。ポップにまとまりながら攻撃的な一面のあるテクニカルな演奏など、4人それぞれの感性が絡み合い、先が読めない非凡な可能性と美学を秘めた4ピースバンド。結成同年4月に1stミニアルバム『START』、21年10月に2ndミニアルバム『〇〇者(読み:ナニモノ)』を発表。22年4月には初の全国流通盤としてミニアルバム『AMPLITUDE』をリリースした。

YENMA

エンマ:2013年に“Charles”を結成。14年に出演した『閃光ライオット』ファイナルで入場制限がかかるなど結成当初からその高い音楽性が注目を集めたが一度解散し、18年に再結成。4か月連続で自主企画ライヴを立て続けにソールドアウトさせる。20年8月にバンド名を“YENMA”に改名し、同年10月に初の全国流通盤アルバム『Piñata』をリリース。また、20年12月に渋谷WWWにて『Piñata』リリース記念ライヴを、21年4月には同会場で『YENMA 1st ONE MAN SHOW』を開催。22年3月、5月、7月と3カ月の自主企画『春の大三角形』を開催し、同年7月に「ロン・ロン・ロマンス」、11月に「走れ」、12月に「踊ラnight」配信リリースした。

ワンダフル放送局

ワンダフルホウソウキョク:大阪発の3ピースバンドで、キャッチコピーは“ドキドキとワクワクをテーマにPOPでROCKな音楽を届けるバンド”。
ソリッドなバンドサウンドと聴く者を揺さぶるwan(Vo&Gu)の歌声で人気を集めている。また、熱量の高さが音に変わって届いていくような、余韻の残るライヴパフォーマンスも魅力のひとつ。

SET LIST 曲名をクリックすると歌詞が表示されます。試聴はライブ音源ではありません。

  1. 1

    01.即興弾き語り

  2. 2

    02.interest

  3. 3

    03.スーパーガール

  4. 4

    04.クエスチョン

  5. 5

    05.ZIGOKU!

  6. 6

    06.Noisy Noisy

  7. 7

    07.現実逃亡愛好歌

  8. 8

    08.今日も今日とて

  9. 9

    09.メロディー

  10. 10

    10.会いにゆくのだ

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