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チョーキューメイ ライヴレポート

チョーキューメイ ライヴレポート

【チョーキューメイ ライヴレポート】 『LOVEの飽和水蒸気量TOUR』 2023年4月15日 at Shibuya eggman

2023年04月15日@

2023.04.23

パッと聴きはめちゃくちゃキャッチー。作品のアートワークもアーティスト写真もカタカナ表記のバンド名も、パッと見だけで強烈なインパクトを残す、明らかにただものではない存在感。コロナ禍の真っ只中に突如産声を上げるや、その無二のオリジナリティーでもってみるみるうちにシーンに頭角を現し、今やブレイク必至の最有力候補として注目を集めるバンド、チョーキューメイが4月15日に東京・Shibuya eggmanにて『LOVEの飽和水蒸気量TOUR』ファイナル公演を開催した。

1月にリリースした3rd EP『LOVEの飽和水蒸気量』を携えて東名阪を回った今ツアー。ファイナルとなる東京公演は当初、2月に開催予定だったが、メンバーの体調不良により延期されており、本公演はその振替公演だ。約2カ月のインターバルを経ていよいよゴールを迎えたそのステージは、この日を待ち侘びたファンとメンバーの、互いにフルチャージされたパワーをガチンコでぶつけ合っては“LOVE”を確かめ合うような、恐ろしく高い熱量で終始満たされていた。

生憎の雨模様となったものの、ソールドアウトを果たした場内は待望のライヴを目前にしてむしろウキウキと晴れやか。スタート時刻を少し回って客電が落ちるとフロアーは割れんばかりの拍手と歓声に沸く。微かな緊張か、それとも逸る気持ちを必死で抑えているのか、シリアスな表情でステージに登場した4人。だが、麗(Vo&Gu&Vn)のエモーショナルでドラマ性を孕んだ歌声とそれを盤石に支えて、かつ増幅させるハイスキルなバンドアンサンブルで、「孵卵」「眠れる姫」というオープニングにも相応しき1stシングル「教えて」収録の2曲を立て続けに披露するなり、あっと言う間に観る者を独自の世界観に惹き込んでしまうのだから、その求心力には目をみはるしかない。

“改めましてチョーキューメイです。振替公演となりましたが、ツアーファイナルにこんなにいっぱいのみんなが来てくれて本当に嬉しい。最後まで爆走します!”

序盤を一気に駆け抜けた直後、MCに入るや、そう挨拶した麗。彼女を筆頭にメンバー全員、心からこの日を待っていたことがその満面の笑顔からもはっきりと伝わってくる。続けて“ここに来る途中、雨が降っていて、ちょっとつらいなって思ったかもしれないんですけど、今から演奏する曲で明日から晴れにするので一緒に歌いましょう!”と呼びかけると、『LOVEの飽和水蒸気量』収録曲にしてドラマ『イケメン共よ メシを喰え』のエンディングテーマとしても一躍、話題を呼んだ「心を照らせ!」へと突入。藤井ごん(Ba)の太いリズムが牽引するグルービーな演奏にオーディエンスもハンドクラップで応戦、強力な一体感でShibuya eggmanを包み込んでいく。

そのまま麗と空閑興一郎(Dr)のツインヴォーカルが耳に心地良い「溶けた魔法」になだれ込み、8ビートを基調にしたストレートなロックチューン「燃え尽きろ君の命」、さわやかな疾駆感が未来への希望を奮い立たせる「最終列車で君に会いにゆく」と最新EPの楽曲たちを鮮やかなグラデーションとともに畳みかけたかと思えば、れんぴ(E.Pf)と麗のふたりだけで演奏した「ユウ(するどいささくれ)」ではピアノの旋律に乗せた儚げながらも強い意志を宿した歌、ピアノ&バイオリンによる清冽な二重奏でオーディエンスを圧倒。さらには、演奏の乾いた浮遊感とおとぎ話特有のそこはかとない残酷さを彷彿させる歌詞とが絶妙にマッチした「Cold Sleep」や、たっぷりと尺をとったインストでミュージシャンとしての力量とバンドのダイナミズムを見せつけつつ歌パートに入るなりアグレッシブにオーディエンスを鼓舞する「おやすみパパママ」など、チョーキューメイならではの枠にとらわれない自由で豊かな音楽的アプローチがライヴとなればいっそう光る。

“暑い! みなさんからの熱気とハートがすごい伝わってきて、タイトルどおり“LOVE”の溢れるツアーになっている気がします”

ライヴも後半に差しかかったMCでそう声をはずませていた麗だが、ひっきりなしに湯気の立ちのぼるフロアーはもちろん、汗にまみれながら渾身の歌と演奏を届けるバンドの在りようは確かに“LOVEの飽和水蒸気量”の体現そのものだったと思う。パッと聴きのキャッチーさやパッと見のただものじゃなさは単にチョーキューメイというバンドを知る取っかかりに過ぎないこと、その実、泥臭いほどに全力で自分たちの音楽を追求し、遮二無二なまでの情熱でもって一曲一曲を鳴らしてはひとりひとりに手渡そうとする実直な4人の姿こそが魅力の本質であることを、この時に改めて知らされた想いがした。

『LOVEの飽和水蒸気量』の1曲目にしてチョーキューメイの楽曲の中でもっともポップに振り切れた革命的1曲「故のLOVE」からの終盤戦はもはやバンドもオーディエンスも一丸となって駆け抜けた。そうして本編を締め括ったのは「十三月の銀河」だ。EPでもラストを飾るチョーキューメイの決意表明とも呼びたいこの楽曲で全てを出し切らんとばかり音に全身全霊を懸けるメンバーと、その一音一音に想いを託して声を張り上げる麗。銀河の星々を彷彿させるようにミラーボールが光の欠片をフロアーいっぱいに散らす中、“ここが始まりだ”と叫ぶように歌われた最後のフレーズにどうしようもなく胸が震えた。

2曲のアンコールでは「白い坂道をくぐったら」のみオーディエンスによる動画撮影およびSNSでの拡散も解禁された。さらには来たる12月24日、麗の誕生日でもあるクリスマスイブに東京・渋谷WWWにてワンマンライヴ『超新星は教えてくれる』の開催が決定したことも本人の口から発表され、オーディエンスを歓喜させた。1stシングル「教えて」のリリースから3周年となることを踏まえてのライヴタイトル、意味も含めた全ての答えはこのライヴで明かされるのだそう。となれば足を運ばないわけにいかないだろう。バンドのさらなる成長を誓って幕を閉じたツアーファイナル、ここから始まる4人の新たな展開を期待とともに待っていたい。

撮影:スエヨシリョウタ/取材:本間夕子

チョーキューメイ

チョーキューメイ:2020年に結成し、9月に下北沢Daisy Barにて初ライヴと同時に1stシングル「教えて」をリリース。21年5月には1stEP『約束に守られない』を限定発売、同年11月には2nd EP『いたくないイヤリング』を発表した。22年2月に「3月の花嫁」がMBSドラマ特区『あせとせっけん』のオープニング主題歌に抜擢され、同曲も収録した1stアルバム『するどいささくれ』を同年6月にリリース。23年1月には3rd EP『LOVEの飽和水蒸気量』を発表。

SET LIST 曲名をクリックすると歌詞が表示されます。試聴はライブ音源ではありません。

  1. 1

    01.孵卵

  2. 2

    02.眠れる姫

  3. 5

    05.心を照らせ!

  4. 10

    10.Cold Sleep

  5. 17

    <ENCORE>

  6. 18

    01.白い坂道をくぐったら

  7. 19

    02.涙と羽根のピアス

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