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鉄風東京 ライヴレポート

鉄風東京 ライヴレポート

【鉄風東京 ライヴレポート】 『鉄風東京 presents 「From 2MAN TOUR 2023」』 2023年10月27日 at 渋谷QUATTRO

2023年10月27日@渋谷QUATTRO

撮影:日々季/取材:フジジュン

2023.11.13

東京の夜に鉄風、乱吹く! 9月に1stミニアルバム『From』をリリースした鉄風東京が、最新作を掲げて全国7ヵ所を廻った全国ツアー『From 2MAN TOUR 2023』のファイナル公演が、東京・渋谷クラブクアトロにて行われた。kobore、忘れらんねえよ、KOTORIなど、大黒崚吾(Vo/Gt)が“中学、高校の頃に聴いていた大好きなバンド”と語る、豪華ラインナップとのガチンコライヴを展開してきたこのツアー。東京公演のゲストは、やはり高校時代にライヴを見て影響を受けたという、北海道の3ピースバンド・KALMA。『From』のリリースインタビューでは、「今回は分かりやすく成長する機会というか、打ちのめされて強くなる機会が欲しくて対バンをお願いした」とツアーの意気込みを語っていた大黒。ツアーファイナルではリスペクトする先輩バンドたちに各地で打ちのめされて、たくましさを増したバンドの姿をしっかり見せてくれた。

■ KALMA ■

SEもなしに3人がステージに登場すると、リリースされたばかりの最新ミニアルバム『ムソウ』のタイトル曲「ムソウ」で勇ましく始まったKALMAのステージ。《今が一番最高だって》と夢を追う無双の夢想家たちを歌う、激しくエモーショナルな歌と演奏に観客がステージ前へとグッと押し寄せ、フロアーが一気に熱を帯びていく。続いて、畑山悠月(Vo&Gu)が“大好きな後輩、大好きなクアトロに”と捧げた曲は「くだらん夢」。愛と夢に生きる、真っ直ぐで純粋な少年心を歌うこの曲を気持ちいっぱい届けると、曲中に“仙台のカッコ良い後輩がさ、わざわざツアーファイナルに呼んでくれたんだ。KALMAも負けないくらいカッコ良いライヴしたいじゃん!?”とあふれる想いを語り、さらにギアを1段上げたエネルギッシュな歌と演奏で魅せる。

金田竜也(Dr&Cho)のパワフルなビートと斉藤陸斗(Ba&Cho)の重厚なサウンドで始まった「隣」、最新ミニアルバム収録の新曲「ABCDガール」とアッパーな曲が続くと、「モーソー」をハイテンションにぶっ放し、フロアーをぶっ掻き回した前半戦。満足そうな表情でその様子を眺めた畑山はMCで、“鉄風東京はすごいツアーを回っててさ。こういうストーリーを作れるバンドだと思うし、ただ夢見てるストーリーじゃなくて、ちゃんとそれを叶えていくっていうのが本当にカッコ良いと思う”と後輩へのリスペクトを語り、2年前に大黒がライヴを観に来た時に話した“いつか一緒にやろう”の約束が叶った喜びを明かすと、“可愛かった仙台の後輩はいつの間にか全国へ飛び立っていったけど、そういうのもすごく嬉しいし。仙台と札幌って近いようで遠いけど、同じ匂いを感じてて。気持ち的には地元の後輩みたいに思ってるので、こうやって誘ってもらえて嬉しいです”と想いを届ける。

さらに、自身のアルバム『TEEN TEEN TEEN』(2020年発表)の企画で、お客さんから動画や写真を送ってもらう企画をやった際、大黒が応募して不採用にしていたことを話し、笑いを誘った畑山。ギターを鳴らし、“音楽は白黒ハッキリつける勝負じゃない。だけど、可愛い大好きな後輩だから負けたくないこともあります”と勢い良く始まった曲は、「ねぇミスター」。《ねぇ友よ 僕はどうしたらお前の自慢になれるんだい》と問いかけ、《僕らの未来はきっと大丈夫》と断言し、突き上げるビートでフロアーをブチ上げると、畑山がステージを転げ回る全力のパフォーマンスで魅せる。彼らの渾身のステージは観客ひとりひとりに想いを届けるとともに、可愛い後輩へのアツすぎる愛情表現にも見えた。先輩後輩ながら相思相愛で、互いに競い合い高め合う両組の関係性が実に微笑ましく、羨ましくさえ思えた。

1分間に熱烈な愛を詰め込んだ「1分間の君が好き」、フロアーに美しい合唱が起きたミディアムチューン「SORA」、アツく激しく壮大に届けた「ふたりの海」と続くと、ライヴは後半戦へ。《いつまでも青いまま》と、あの頃と変わらないイノセントな気持ちを歌った「blue!!」を披露すると、“好きってものが自分にとってどんなに大切なものか? どんだけ自分の心を突き動かして、どんだけ自分の原動力になってるか? 大丈夫、こうして好きなバンドがいて、好きなライヴハウスに来れてるだけで、幸せだと思います”と伝えた畑山がギターをかき鳴らし、《君が思うより 君は強いよ》と真っ直ぐにメッセージを届ける「少年から」がクライマックスを生む。

ラストは“2年前、初めて仙台に行って仙台FLYING SONでライヴして。終わったあとに、大黒が“めちゃ良い”って言ってくれて。自分の街、札幌を歌ってるんだけど、大黒も仙台を背負ってやってるバンドとして、感じてくれるものが会ったのかなと思って、すごく嬉しかったです”と畑山が思い出を語り、たっぷり気持ちを込めた歌とギターで始まった「マイシティ」。斉藤と金田の演奏も感情や風景を丁寧に描き、切なくも前向きで希望にあふれたこの曲が美しいエンディングを生み、“これからも自分の大事な街を背負って、カッコ良いバンドをやっていきます。KALMAでした、ありがとうございました!”と挨拶すると、会場は大きな拍手に包まれた。そして、そんなKALMAのライヴを大黒がずっとステージ脇から観戦し、踊ったり拳を上げたり、誰より楽しんでる姿がフロアーから見えていたのも、両組の相思相愛ぶりがよく見えて、実に微笑ましかった。

■ 鉄風東京 ■

そして、KALMAの愛に溢れたバトンを受け取り、いよいよツアーファイナルのステージに立った鉄風東京。大黒の《時代は僕たちのもの》の咆哮で始まった1曲目「BORN」から、激しく魂のこもった歌とサウンドを聴かせ、フロアーは大熱狂。確かな演奏力が裏づける激情的なサウンドと、あふれる感情をぶつける歌声は、愛情をたっぷり込めたステージを見せてくれたKALMAへのアンサーであり、このツアーの成果。畳み込むように始まった「咆哮を定め」で《やりたいようにやるんだ》と宣言すると、KALMAが大黒に送った「マイシティ」に応えるように、鉄風東京のマイシティ・仙台は、ホームグラウンドとしているライヴハウスの仙台FLIYING SONことを歌った「FLYING SON」を披露。《ここが全て 僕らの全て》と歌う同小屋から生まれた物語を彼らが大切に紡ぎ、このツーマンツアーがあり、この瞬間があると思うと実に感慨深い。

ミニアルバム『From』収録の「いらない」と続き、嘘のない言葉とサウンドで真っ直ぐな想いを届けると、MCでは“『From』ツーマンツアーファイナル、この対バンとこの会場と日程と、何よりあなたたちがいないと意味がなかった日です。本当に来てくれてありがとうございます!”と感謝を告げた大黒。“KALMAは良いんですよ! 採用はされなかったけど”という畑山のMCを受けて『TEEN TEEN TEEN』の企画の話題に触れると、“すげぇ狙って、青春感ある写真を撮ったけど、ハマらなかったみたいです”と苦笑い。さらに、“全然無名のただの高校生の俺を“ライヴ観に来ていいよ”って誘ってくれて、“頑張って”なんて言ってくれて。だから、今日は一緒にやりたかったんです、それで今日があるんです。KALMA好きな人の前で、鉄風東京好きな人の前でできて、これ以上の幸せはないです”とKALMAへの想いを話し、“高校の昼休みにYouTube観てて、オススメで出てきたのを聴いて。誰にも教えない俺だけの宝物にしようと思ってたら、KALMAはすごい勢いでどんどん進んでいって。そんだけカッコ良いんですよ、ヒーローなんですよ! だからこそ、後輩も先輩も関係ない。今日は俺らもヤバいんだぜって見せたい”とKALMAとの出会いとこの日に賭ける意気込みをしみじみと語る。

さらに“寒い土地で育って、その歌がみんなに届いて、そういう空気感が音楽になって、みんなKALMAのことを好きになって、鉄風のことを好きになってくれたと思います。だから、それを好きなみんなが俺にとって故郷なんですよね、安心するんです。みんな、どことなくダメそうだし(笑)。情けないまま、フラれたまま、悲しい歌を歌ってやりますわ”と語り、轟音と絶叫で始まった曲は「外灯とアパート」。切なく温かみあるギターイントロから、大黒の歌声が丁寧に風景を描き、カオティックな間奏から観客の大合唱へ。会場中の心をつなぐ本当の意味での一体感を生んだこの曲に、大黒が話す“みんなが俺にとっての故郷”の意味が分かった気がした。楽曲を歌い終え、“ありがとう”と幸せそうな笑顔を浮かべた大黒。自分を信じてくれる人、誇れる仲間、帰れる場所がある人間は強く逞しい。

ひとりひとりに語りかけるように歌った「HOW IS LIFE」に続いて、“みんなにとって誰かを置いてきた場所であり、誰かに置いていかれた場所でもある”と“この街=東京”についての持論を語った大黒が“たまには応援しないと”と届けたい相手を想い、始まった曲は「東京」。大黒の感傷的な歌とギターだけでなく、力強く正確にビートを刻むふわふわのカニ(Dr)、丁寧なベースラインが楽曲に奥行きを与えるmuku(Ba)、激しく切ないギターソロで言葉にならない感情を表現するシマヌキ(Gu)と、4人が一体となって作り上げる壮大な楽曲世界が会場を包み込み、激しいだけでないバンドの魅力をしっかり見せつけたこの曲に、本当に良いバンドだなとしみじみ思った。

“バンドが好きでバンドを始めて、それが楽しすぎて。すごいんすよ、ライヴハウスって。あと、今日ここを選んで来てくれてるみんなって、本当にすごいんスよ。褒め言葉ですけどイカれてます、マジで。でも、同じくらい僕らもイカれてますから。どっちがイカれてるか? 最後までとことんやりましょう!”と勢い良く始まった終盤戦は「TEARS」「SECRET」と『From』収録の新曲が続き、再び会場の熱気が上がる。ハンデを抱えてたことをわざわざ伝える必要がないので書かなかったが、実はこの日、左腕を骨折した状態でライヴに挑んでいた大黒。ツアーで鍛え上げた新曲たちが続き、ヒートアップする場内に気持ちを抑えきれなかったのか、「SECRET」の間奏部分では後先考えずにフロアーへダイブ! わはは、本当にイカれてる!

さらに「遥か鳥は大空を征く」「21km」とライヴ定番曲が続き会場を大爆発させて、この日のクライマックスを生んだ彼ら。残る力を出し切るように、全身全霊の歌と演奏で魅せた「21km」ではフロアーの大合唱が起き、“歌え歌え!”と煽る大黒が興奮して、再びフロアーにダイブ! 鳴り止まない歓声にステージに登場したアンコールでは“2年前、KALMAのライヴに行って、ただの高校生の俺にいろいろ話しかけてくれて。ライヴ映像を観た時、“カッコ良いです”ってわざわざDMもくれて、心の底から嬉しくて。その時に悠月くんが“カッコ良い”って言ってくれた曲をやります”と「Numb」を披露。さらに、“まっ、こんなんで終わるはずもなく”と「Yellow Youth」「歩幅」を爆音で鳴らし、最高潮の盛り上がりでフィニッシュ。ツアーではこんな熱狂を全国で巻き起こしてきたのかと思ったらすごく嬉しかったし、再び熱気を取り戻している令和のライヴハウスシーンをこういうバカ...おっと、ロックバカにけん引してほしいと心底思ったし。夢見るストーリーを次々と叶えていくであろう鉄風東京の快進撃を、ここからもしっかり見届けていきたいと思った。

撮影:日々季/取材:フジジュン

鉄風東京

テップウトウキョウ:仙台を拠点に活動する、平均年齢 20 歳の 4 ピースオルタナティブロックバンド。2018年11月に結成し、20年には『RO JACK 2020』に入賞を果たし、高校3年生の時に公開した「外灯とアパート」のMVは50万回再生を突破。結成から現在に至るまで、ライヴを大事にするスタイルで活動している。21年11月にリリースした1st EP『Nokosu』はタワクル展開店の全5店舗(仙台、渋谷、福岡、 名古屋、梅田)で1位を獲得し、初の全国ツアー『Nokosu Tour 2021』も各地盛況に終える。2023年9月に全国タワーレコード&ライヴ会場限定で1stミニアルバム『From』をリリースし、全国2マンツアー『鉄風東京 presents 「From 2MAN TOUR 2023」』を開催!

KALMA

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