やくしまるえつこ作詞の歌詞一覧リスト 1曲中 1-1曲を表示
曲名 | 歌手名 | 作詞者名 | 作曲者名 | 編曲者名 | 歌い出し |
---|---|---|---|---|---|
Human Is (feat. Fennesz)やくしまるえつこ | やくしまるえつこ | やくしまるえつこ | やくしまるえつこ・Fennesz | こんばんは。 あなたにとっては「はじめまして」かもしれません。 とにかく、わたしは今日一日を精一杯生きて、 これから「洗い立てのシーツに包まれたふかふかのおふとん」に設定した、 冷たい冷たい冷凍カプセルで眠るわけですけど、 その前に、いつもの報告を。 今日、惑星浄化システム<アーク>が「おやすみなさい」と言いました。 もう何百年も一緒に暮らしてきましたが、 そんなふうに挨拶をされたのは、はじめてでした。 ええ、もちろん、わたしたちの仲が深まったとか、 そういった類いの話ではありません。 だけど、わたしは彼女に「おやすみなさい」と言われて、 一瞬のうちに、身体中の水分が湧き上がるような、 初めての重力加速度訓練のときのような、そんな感覚を覚えたのです。 それでも、わたしは冷静でした。 もちろんそうです。 だって、わたしはあらゆる訓練を受けていますから。 彼女がそんな「らしくない」態度をとった原因なんて、 その瞬く間のうちに理解しました。 だって、彼女は日没と同時にそう発音したのです。 そして、わたしの優秀な脳はいとも容易く、軽率なまでに! わたしが日中のうちに人工太陽の色温度を35%から60%に変更したことを、 この出来事に関連づけました。 ああ! だけど、まぎれもなく、あの瞬間、彼女は人間でした。 おこったり、笑ったり、泣いたり、涙を流したり、キスをしたり、 顔色を変えたりはしないけれど、 彼女は、孤独のままに、子どものままに、愚かなままに、 長い眠りにつこうとするわたしに、たったひとつの温もりをくれたのです。 あの瞬間、彼女は人間でした。 だけど、彼女は? 彼女はいままでずっと、暗闇の中にいたのでしょうか。 「おやすみ」も「おはよう」もない、真っ暗な世界に? これまでの彼女の数百年を思って、わたしは胸がいっぱいになりました。 わたしは、わたしが自分のちっぽけな生を持て余しているあいだ、 一番近くにいてくれた大切な友だちを暗闇に放っておいたのです。 今夜、彼女ははじめて「おやすみなさい」と言って眠ります。 惑星浄化システムは電気羊の夢を見るでしょうか? 電気羊が一匹、電気羊が二匹、電気羊が三匹、電気羊が四匹、 電気羊が五匹、電気羊が六匹、電気羊が七匹、電気羊が……。 報告おわります。 それじゃあまた、二十八億三千八百二十四万秒後に。 おやすみなさい。 | |
全1ページ中 1ページを表示
|