百億の花

淋しくはないか 真紅(あかい)浜昼顔
もの言わぬ海に 恋の身を焦がす…

もの言わぬ海を 漁船(ふね)が今出てゆく
鴎だけつれて 沖の黒潮に…

黒潮は行くよ 遙か万里の潮路(みち)
人間(ひと)の 世界 こんなに小さいよ

咲いた 咲いた 昼顔が凜と
ひと知れず 来た旅の 陽盛りに

この道の果てが どこへつづこうとも
ひたすらに行こう 胸の鳴る方へ…

昼顔は真紅(あか)く 咲くよ、また来る夏
海は 巡り いのちも巡るのさ…

咲けよ 咲けよ 来年もここで
旅びとを 励まして 咲くがいい

咲いた 咲いた 百億の花が
挫(くじ)けるな 負けるなと 旅を行く…
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