旧市街

朝食に毒を密かに盛れ
ながい土曜日を終わらせる為に
軌道を外れた人工衛星の物憂い視線 緩んだ口元
塔の門をくぐってからどのくらいの時間が経っただろうか
1時間? 1日? 1年? 100年?
この階段はあまりに長くて
昇りながら下っているような感覚に陥った
多分そのふたつに大きな違いはない

ほとんどは忘れてしまった 雨に溶けていった
どこかの大地の養分に僕の記憶はなる
誰かが今頃 遠くで雨季を待つ
雨季は遠い
突然階段は終わる 風が沈黙する
静寂が辺りを包む 時が満ちたようだ
最上階の扉 開け放ち
僕は言った
僕は言った

「時間だよ
僕から生まれた僕自身に告ぐ
メメント モリ」
青空 少しだけおかしくなったよ
君の首に触れて引きずり込んだ

かくして僕は塔に君臨した
さあ角砂糖を献上せよ
遠い眼下をのぞき込んだ そこに元の君の姿はない
印刷機が作った未来の歴史
退屈な病に血清はない 革命に血は流されないからだ
生きながら死んでいるような感覚に陥った
多分そのふたつに大きな違いはない

足音が秒針のように近づいてくると
僕はそれを知っていたこと 思い出したのさ
足音止んで 開け放つ
君は言った

君は言った
「時間だよ
僕から生まれた僕自身に告ぐ
メメント モリ」
青空 少しだけおかしくなったよ
僕の首に触れて引きずり込んだ

青空 少しだけおかしくなったよ
僕の首に触れて引きずり込んだ
青空 塔を抱いて眠りにつくのさ
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