螢駅

富士川(ふじがわ)沿いに 身延(みのぶ)線
螢の駅は むかしそのままに
久しぶりです
あなたの肩に寄り添えば
川の瀬音も なつかしく
あの日が駆け足 想い出つれてくる

木立の風も 闇にとけ
飛び交う螢が 水面(みなも)をそめる
すきといわれて
抱かれた夜も螢火が
雪見障子にゆれていた
おぼえてますか 二人のあの夜を

星降る風の 駅灯り
湯もやに霞む 下部(しもべ)の宿よ
あなた注(つ)ぎたす
しあわせ酒に しみじみと
酔ってあまえる 湯の町は
卯(う)の花月夜(はなづきよ)に 静かに晩(ふけ)てゆく
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