銀のライター

お前が大きくなったなら
恋人同士になろうねと
冗談みたいにあのひとが
私にこっそりいったのは
五年も前の秋のこと
私が十五になった頃

お前と十五も違うけど
それでもいいかと笑ってた
ふとした言葉のいたずらが
それから心をはなれずに
恋する年令(とし)になったのに
私はなぜだかひとりきり

五年も恋したひとなのに
今ではうわさも消えたまま
私があの日を想うのは
さびしい日ぐれにあのひとの
小さな銀のライターで
かすかな炎をつける時
かすかな炎をつける時
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