初秋

あなたの娘であるうちに
もっと甘えていたかった
父の胡坐(あぐら)の膝の上
組んだ両手に陽が揺れる
あれは十五 そして十九
ポツリポツリと 想い出を
嫁ぐ朝(あした)に語らいながら
涙ぐませる秋を見る

秋桜(こすもす)かすめる赤とんぼ
あれと指さし見ていたら
思いがけない淋しさが
ふいに心にこみ上げる
ここにお茶を そこに煙草
慣れぬ手つきで世話をやき
嫁ぐ朝(あした)を見送りながら
父と娘で秋を見る

あれは十五 そして十九
ポツリポツリと 想い出を
嫁ぐ朝(あした)に語らいながら
涙ぐませる秋を見る
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