パンの耳

ジングルベルが 鳴る頃は 売れない歌手も 稼ぎ時
あの夜は日野から 八王子 スナックまわり歌ったわ

お呼びがかかる それまでは お店の裏が控室
冷たい風に 肩を抱き ビールケースに埋もれてた

寒い夜 あといくつ 越えれば 夢が叶うやら…

「お疲れさん」とマスターが 放って投げた パンの耳
サンドウィッチの 切れはしを 油で揚げた パンの耳
あ~くやしいね みじめだね マスター悪気ないけれど
いつかは売れてやるんだと 心に誓った夜だった

ドレスに上着ひっかけて お店をあとにする夜更け
千円札のご祝儀は 三軒分で片手だけ

買う人もない カセットを 鞄にうんと 詰め込んで
今日こそ気前のいい人に 会えるか、なんて 甘かった

ため息は やめにしよ 幸せ逃げてしまうから…

だぁれもいない公園の ベンチに座り あおぐ空
ひとくち食べた パンの耳 砂糖のついた パンの耳
あ~シャクなのに 懐かしい 子供の頃が よみがえる
給食のこして帰るたび 母さん作ってくれたっけ

「お疲れさん」とマスターが 放って投げた パンの耳
サンドウィッチの 切れはしを 油で揚げた パンの耳
あ~くやしいね みじめだね マスター悪気ないけれど
いつかは売れてやるんだと 心に誓った夜だった
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