無人駅

駅舎はとうに
かもめのねぐら
つぎはぎだらけの
陽が洩れる

ペンキの剥げた
待合ベンチ
誰かが残した
傘ひとつ

切符を一枚くださいな
行きたい町があるんです
各駅停車でかまわない
忘れたものがあるんです

無人のホーム
枯草(かるも)が揺れる
ここにはなんにも
来やしないと

錆びた線路に
耳をあてれば
母の呼ぶ声が
響くのに

切符を一枚くださいな
逢いたいひとがいるんです
幾日待ってもかまわない
大事なひとがいるんです

切符を一枚くださいな
帰るところがあるんです
各駅停車でかまわない
失くせぬものがあるんです
失くせぬものがあるんです
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