矢切の渡し

つれて逃げてよ……
ついて おいでよ……
夕ぐれの雨が降る 矢切の渡し
親のこころに そむいてまでも
恋に生きたい 二人です

見すてないでね……
捨てはしないよ……
北風が泣いて吹く 矢切の渡し
噂かなしい 柴又すてて
舟にまかせる さだめです

どこへ行くのよ……
知らぬ土地だよ……
揺れながら艪(ろ)が咽(むせ)ぶ 矢切の渡し
息を殺して 身を寄せながら
明日へ漕ぎだす 別れです
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