筑波の鴉

たかがひとりの 身軽な旅も
故郷(くに)の近くじゃ 気が重い
はぐれついでの 筑波の鴉
寄ろか寄ろか過ぎよか 諸川宿は
生まれ在所へ ひとっ飛び

一宿一飯軒下三尺借りうけましてと、あれから三年経った。
手前勝手と、わかっちゃいるが一目逢いてえ、
逢いてえなア、お袋さんにヨー

なまじやくざに 惚れさせまいと
心ならずも 袖にした
あの娘恋しい 境の渡し
利根の利根の河原に 風立つ頃は
夢にまで見た 夜がある

おちょぼ口のやさしい娘だったお千世坊、
今頃はお歯黒染めて堅気のいいおかみさんになっているかもしれねえ、
フン、俺らァ阿呆鴉だぜ

逢えば逢(お)うたで 不孝がつのる
どうせ俺らは 親泣かせ
莫迦が莫迦なり 思案を決めりゃ
月の月のお山の 男体女体
片手拝みの 眼に痛い
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