サイレン

高く伸びたふたつの影たち
寄せて返す波のようにじゃれて

ふいに触れた指先 チョコレートみたく 甘く苦いよ
遠く…海鳴りの音 私の奥にあるサイレン

青空、吸い込まれたら
こんな想いごと 連れ去ってよ どうか
足もと、絡まる言葉
自由がきかなくて ただ黙って笑う
まだ言えないよ でも放せない 繋いだこの手

助走距離をうまく取れずに
跳べないまま ためらう毎日

聞いて 声にならない もどかしい喉を 掻きむしっても
ひびく胸の鼓動は ふり向いた瞳に何を求める?

どしゃ降り、濡れる黒髪
いっそ脱ぎ捨てて シャツも靴も愛も
「好きだよ。」まっすぐな火が 試すように灯る
踏み込んだら 最後
でも知ってるんだ 始まってたこと 戻れないこと…

「私も。」震える声が
袖をつかんで 踏み込んだ刹那
どしゃ降り、姿隠して
こんな二人ごと 連れ去ってよ どうか
ねぇ知ってたんだ 始まってたこと アイシテルこと…
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