遠い昔の春の日の

遠い昔の春の日の
れんげ咲く 田んぼのあぜに
やわらかに 陽はふりそそぐ
女たちは笑っていた
男たちも笑っていた
草も木も石っころも
カエルも笑っていた
腹を抱えて ころげまわって
涙流して 生きることの
喜びを笑っていた
遠い昔の春の日の
あれは かげろう

遠い昔の春の日に
もう帰れない ぼくは
もう帰れない ぼくは
あいつが笑っていた
あいつも笑っていた
あいつはどこへ行った
あいつはどこへ消えた
大き過ぎる街の 暗すぎる夜の
夜の空に向って 笑って笑って笑って
せいいっぱい笑ってみるのですが
遠い昔の春の日の
音は聞こえない
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