鯉名の銀平

雪の伊豆路を 下田へ三里
なにを急ぎの 三度笠
脇差で斬れない 情けの糸に
がんじがらめの はぐれ鳥
あれは 鯉名の銀平の
後姿だよう

義理の掟と 男のいのち
はかりゃ重さは 九分一分
どうせ一天 地六の運命
死ぬを覚悟の 渡り鳥
あれは 鯉名の銀平の
破れ合羽だよう

死んだ心算が また逆戻り
廻り灯籠の 影芝居
雪は消えても 晴れ間は見えぬ
仲間外れの片羽鳥
あれは 鯉名の銀平の
男涙だよう
×