密室書庫

あり居り侍りいまそかり 主身罷(みまかり)り筆を取り
羽織橙 猿芝居 呪いか代々三姉妹
いっそ逆さの紙芝居 きっと「顔のない死体」
親族雁首(がんくび)揃えてぴりぴり 遺産はどうなるきりきり舞い

『嗚呼 雛 雛』
鳴いた尾長鳥の剥製
『桃 ひら ひら』
その眼だけが犯行を見た
『むせかえる古書屋敷 ほら』
白い手袋睡眠薬 ぎりぎりぎりぎり荒縄絞る

栞紐をきつく 手首に巻きつけた

鳥居くぐれば狐の嫁入り
いけない遊び教えてね
カナカナ 遠くの蝉しぐれ
木霊する

開いた古文書さながら蝶 気どった弁護士ですます調
数多の書物を所望 「あ、そうそう先生の新作読もう読もう」
羨望 書架まで案内しようか 胸元はだける初夏
謎めいた脅迫状 集まる刑事 給仕 セドリ 親族

『実(見) 取(蕩)れ 取(蕩)れ』
犯行時刻を謀った
『手のひら ひら』
指切り幻魔幻々魔
『裏返る古書屋敷 あら』
玄関先には作家とおさげ やれやれようやく探偵登場

見目麗しい装丁 守り抜いた貞操

さあ誰が悪い? 狢(むじな)の婿取り
見えないモノを見させてね
罠罠 震える細君に
猿轡(さるぐつわ)

一度だけ恋をした
燃えてしまえ罪もわたしも
茜空 洗い髪
燃えてしまえ罪もわたしも
春の庭 夏の書庫
燃えてしまえ罪もわたしも

『ゆーな ゆーな ゆーな ゆーな
ゆーな ゆーな ゆーな ゆーな
みなまで云うな』
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