花になった少年の神話

それはそれは遠い昔の物語
遥かな国のお話
眩しい空の下で太陽の神(僕)と少年(君)は出逢った
二人は幸せだった…

「もう一度巡り逢えたら…
もう一度声が聞けたら…
君だけを失くしたままで
何処へゆけばいい?」

鮮やかに緩やかに陽光を貪りながら
運命は残酷の楽園へと崩れ落ちた

愛し合う者は周囲の嫉妬を呼び起こすもの
彼らの仲を 雲の女神は許さなかった

「SAY!SAY! 愛して SAY!SAY!
見つめて SAY!SAY!私に跪きなさい
SAY!SAY! 誰より SAY!SAY! 私こそ一番美しい…!」

奪われた躯に 女神の爪痕が
狂気に侵された 喜劇の蜃気宴(ミラージュ)
少年は変わらず彼を待ち続けた
愛しき者が捕らえられたと知らずに…

「ようこそお待ちしていたわ ここは媚薬の森
全てを忘れてここでさぁ愉しみましょう

お休みなさい 可哀想な太陽の神よ
お休みなさい 女神が戻って来るまで」

ほの暗い森のなか太陽の神は目を醒ました
風の精が囁いた
「大変よ 女神は少年のもとへ行ってしまったわ」

轟く雷は 情熱の矢なの
私は雲の女神(ミューズ)
手に入らぬものなどこの手で消してくれるわ…!

「許せない! 許せない! 私じゃないなんて!
この心邪魔するならいっそお前を…」

その時投げられた毒矢は貫いた
少年は美しい瞳を閉じて
眠りに落ちていった 言葉も無いままに
太陽の神に愛を告げられずに…

僕のなか蘇る眩しい最初の出逢い
どこまでも君は自由に空を巡り輝いてた

「なんて眩しいひとだろう…
なんて眩しいひとだろう…」
もっと仲良くなりたいのに
いざとなるとうまくできない

「明日こそはもっと
あのひとに話しかけよう」
少年は憧れた
無限の翼広げて

「SAY!SAY! 愛して SAY!SAY!
見つめて SAY!SAY!私に跪きなさい
SAY!SAY! 誰より SAY!SAY!
私こそ一番美しい…!」

駆けつけた太陽の神は目を見張った
夢だと願っても 悲劇の幻想(イマージュ)
目覚めぬ少年に頬寄せ口づけた
女神は消え去った
溢れ出す涙も構わずに
嗚呼

ランララララン ララララン ララン…
やがて雲の隙間から
ランララララン ララララン ララン…
黄金の光 差してゆく…

「微笑って…微笑って…
もう一度その笑顔を
僕に見せて
共に過ごした
僅かな季節
浮かぶよ

悲しみを知るために出逢った訳じゃない
せめて陽光浴びて微笑む
花に変えてみせよう」

それはそれは遠い昔の物語
遥かな国のお話

「カレンデュラ
僕は君を
カレンデュラ
照らしつづける
カレンデュラ
君が咲く限り
カレンデュラ
僕は

カレンデュラ
僕は君の
カレンデュラ
太陽になる
カレンデュラ
カレンデュラ
カレンデュラ
ずっと…」
×