筑紫の明月

罪なき罪を 身にうけて
心ならずも 筑紫野に
配所の月を 仰ぐとも
いかで君を 忘るべき

思い出多き 名月を
今宵異郷の 空に見て
聖寿を祈る 忠誠の
きこえんをりは いつの日ぞ

去年ノ今夜清涼ニ侍ス
秋思ノ詩篇独リ断腸
恩賜ノ御衣今此ニ在リ
棒持シテ毎日余香ヲ拝ス

君恩慕う 断腸の
詩(うた)を吟じて 袖濡らす
夜更けの窓に 雁啼けば
そぞろに恋し 去年(こぞ)の秋
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