十九の春はゆく

空をはるばる流れゆく
雲にもにたる恋悲し
のせしちかいもあの夢も
風はいづこに消えるやら
哀れ十九の春はゆく

香る野の花つみながら
たどる小路は愛の道
幹にきざみし文字あとの
残る嘆きを君知るや
哀れ十九の春はゆく

去りて帰らぬ若き日の
清き乙女の思い出よ
胸をぬらしてふる霧(きり)の
晴れる明日(あした)のあるものを
哀れ十九の春はゆく
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